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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.185「失敗したらアカン」がゴルフを難しくする

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Blue Sky Photos

前回のお話はこちら

女子の五輪代表はメジャーの結果によって大きく状況が動きました。全米女子オープンで笹生優花さんが優勝してまず代表の座を確実にし、続く全米女子プロで2位タイに入った山下美夢有さんが2番手に滑り込んだ。

笹生さんは優勝で約3億7000万円、山下さんは2位タイで約1億1230万円が加算されたわけやから、代表レースは最後までわからんと言われた通りの結果になりました。

それにしても、日本の女子の海外のメジャーでの活躍は素晴らしいですね。

全米女子オープンの最終日の16番で、笹生さんがスプーンで1オンさせたショットが話題になりました。


重圧のなかでよく1オンさせたとか言われとりますが、彼女はスプーンを持ってしっかり振ったらボール止められると確信を持って自信満々で打ってます。だからメジャーでも、銀行のコンペでも一緒。極端な話、5億かかったショットも200円かかったショットも、やること打つことは一緒ですから。

ただね、「これ失敗したら2000万罰金や」いうたらなぜか突然震えます。要するに、失敗したらアカンと思うたらゴルフは難しくなるいうことです。そこはハッキリしておる。逆に、開き直ったら強なるいうんもそういうとこでね。

全米女子オープンで2位になった渋野(日向子)さんは、以前に比べてテークバックでちょっとゆとりができてよかった。そら優勝逃したんは悔しかったやろうけど、なんせ笹生さんの振りは別格でしたから、今回は2位の賞金が2億円もあってよかったと思うとけばいいんと違いますかね。

この試合前に渋野さんは、ちょっと追い込まれていた感じでしたからね。予選落ちが続くと、賞金は入らんし、メディアや周りからは何やかやと言われるし、さっきの話やないけれど、罰金払わないけないような状況になって、「失敗したらアカン」というゴルフに陥りがちです。

彼女は、悪かったときはかなりトップを低くしてたけど、やっぱりあまり打ち方を考えてゴルフをしたらアカンのやろね。

僕なんかの感覚では、「この振りやったらピャーンとよい音鳴りよんなあ」くらいに、シンプルにやったほうがええと思います。

今後の渋野さんは楽しみやね。

「テークバックでゆとりができて、いい感じやないですか」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年7月16日号より