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全米OP開催「パインハーストNo.2」を深堀り!<後編>おわん型のグリーンが選手たちを苦しめる

6月13日から「パインハーストNo.2」で全米オープンが開幕する。超難関コースと謳われる所以について、米ゴルフダイジェスト誌のパネリストも務める川田太三氏と武居振一氏に聞いた。

TEXT/Takeo Yoshikawa Reference/The Golden Age of Golf Design、The World Atlas of Golf PHOTO/GD写真部、USGA/Chris Keane、Getty Images

「パインハーストは
米国ゴルフの
故郷的な存在です」

川田太三 コース設計家、日本ゴルフコース設計者協会特別顧問理事、R&A会員、米国ゴルフダイジェスト誌パネリスト

初めてパインハーストをプレーしたのは1970年代で、90年代、05年、そして改造後にもプレーしています。99、05、14年には全米オープンのレフェリーとして参加しました。

10年の改造はフェアウェイやウェイストエリアの整備などがメインで、見た目にも劇的な変化はありませんでした。どちらかといえば「改造」ではなく、「リファイン」したと言えます。つまりパインハーストの特徴をそのまま生かして、一見して変化が分からないようにされたわけです。もちろん、フェアウェイやウェイストエリアの整備もされたので形状はより明確にされました。

グリーンの特徴といえば、お椀型の形状が多く、ピンを攻めるにはボールをどこに落とすかが難しくなります。パー3ではオーバーもショートも良い結果を得ることができず2、3打目勝負ということになります。また、フェアウェイとグリーン、バンカーなどの境界が明確ではないホールもあり、選手を悩ませることにもなります。このようなケースでは、レフェリーが「グリーン」といえばグリーンになるわけです。

ドナルド・ロスは「卓越したロングゲームとショートゲームが求められる」と言っていましたが、その通りで、コースの特徴を上手くつかめた選手が勝てるのではないでしょうか。

9th・184・Par3

ホールのうち最も短いパー3だが油断はできない。グリーンは2段で左のバンカーや奥に打ち込んでしまうと狭いためスコアを崩すことになる

5th・576Y・Par5

フェアウェイは右から左へと傾斜がありティーショットは右狙いが正解となる。14年全米オープン優勝のマーティン・カイマーはこのホールをイーグルとした

8th・492Y・Par4

フェアウェイは右から左へかなり傾斜があるためティーショットは右を狙う。グリーン左側は高低差があることから2打目は右側から攻めるのが正解になる

17th・207Y・Par3

1999年全米オープン最終日、ペイン・スチュワートはこのホールをバーディにして1打リードし、18番での劇的な勝利へと結びつけた。ホールの右側に打ってしまうとかなり難しくなってしまう

「風景は違えども
リンクスそのもの」

武居振一 JGAミュージアム参与、R&A会員、米国ゴルフダイジェスト誌パネリスト

パインハーストは、改造後の全米オープン前の2014年春にプレーしました。コースが完成した当初は、まだ大きな木はなく、まさにリンクスであり、改造は当時により近い、「オリジナルへの回帰」と聞きました。ウェイストエリアはより自然で、かつて訪れた“世界一”と評されるパインバレーGCを彷彿とさせるものがありました。両コースとも、サンドベルト地帯に造られています。つまり大地そのものが砂地ですから、スコットランドのドーノック出身のドナルド・ロスにとってリンクスを造るのと同じではなかったのではないでしょうか。

高低差の少ない砂地に造られたコースは変化に乏しくなる恐れがありますが、ロスの設計にはメリハリがあり、優れたルーティングには感心したほどで、とても印象深いものがありました。

4th・528Y・Par4

通常434ヤードのパー4が試合では528ヤードと94ヤードも延ばされるが、パー4のままで使われる。最もタフなホールでHC1だ

16th・536Y・Par4

通常は478~513ヤードのパー5だが、試合ではパー4になる(写真左)。フェアウェイ左にあるバンカーを避けてティーショットを打つことが求められる。右は17番パー3

改造は「オリジナルへの回帰」だった

2010年に14年全米オープン開催のためベン・クレンショー(左)、ビル・クーア(右)が改造。その内容は密集したラフとフェアウェイ幅の調整、戦略ルートを阻害している木の伐採など、オリジナルへの回帰だった

全米ゴルフ協会(USGA)の施設が
パインハーストに誕生

パインハーストのメインクラブハウスに隣接した場所に、全米オープンを主催する全米ゴルフ協会の「ゴルフ・ハウス・パインハースト」がオープンした。ゴルフの偉人や歴史が学べる世界ゴルフ殿堂、ゴルフに関する貴重なコレクションの展示をするミュージアム、ボールやクラブなどがルールに適合しているかをテストする施設、在来植物や花粉媒介生物の生息地などを持続可能なものにするための取り組み、ノースカロライナ州地域原産のロングリーフ松の復元など、施設の内容は多岐にわたる。世界ゴルフ殿堂など一般公開されている場所は10~17時(水曜、金曜~日曜)、木曜は20時まで

週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号より