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【インタビュー】星野陸也<後編>「夢だったエジプトにも!」世界の歴史や文化も堪能

欧州ツアー2シーズン目にして優勝を飾った星野陸也。欧州での慣れない食事やリラックス法、これからの“挑戦”について語ってもらった。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara

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パスタも歴史もゴルフも
楽しんでいます

さて、自他ともに認める“ギアオタク”の星野。海外用にスウィングとともにクラブセッティングも何パターンか作ってきた。

「スリクソンの担当者とは毎日のように連絡を取り合っています。海外でも鉛を自分で付けて調整もしますよ。作業員が持っているくらいのロールの鉛を持って移動しています(笑)。パターも、芝質が変わると替えたくなる気持ちはありますけど、感覚は変えたくないので、同じヘッドで重さ、ロフト、重心違いのものを数本作った。これで打ち方も変えながら今のところは調整できているんです」


英語が話せる薬丸龍一キャディとは、海外参戦を見越してタッグを組んできた。鉛が剥がれるのが嫌でアイアンカバーを1本おきくらいに付けているが、「欧州ツアーでは有名になっていて、コースで落としても『君のでしょ』って、皆が拾ってきてくれるんですよ(笑)」

今後、ツアー中盤戦になると欧州本土が舞台となる。昨年はここから、疲れや慣れない食事にじわじわとダメージを受けたという。

「今まで日本でパスタを食べても週に3回くらい。それが毎日お昼も夜も食べるんです(笑)」

味はカルボナーラとトマトパスタとボロネーゼの3パターン。

「僕、ベルギーで初めてカルボナーラに塩と胡椒を入れました(笑)。最初は日本食がなくてヤバイ感じでしたけど、秋になると粗食に慣れてきたのか気にならなくなった。そういう成長もありました」

もう一つ、リラックス法を見つけた。実は“歴史大好き”な星野。「昔から世界史だけは得意で、クラスでもだいたい5位以内だった(笑)。どの国もナショナルオープンという感じで開催されるので、コースもよい場所にあり、少し歩けばヨーロッパの歴史や文化がすぐそこにある。街並みやお城、美術館などを見ながら歩くのも楽しいです。チェコでは世界遺産を見に、フランスはルーブル美術館に行きましたし、ベルギーでは人気のベルギーワッフル屋さんが美味しかったですよ。マドリードではレアルマドリードのスタジアムでお土産をいろいろ買いました」

小さい頃からの夢、エジプトにも初めて行った。「ケニアの試合から一旦帰国するのにエジプト経由のほうが安くて。半日エジプトにいられるので、すぐにガイドさんをお願いして、ピラミッドまで馬に乗っていった。砂漠だから馬のほうが楽だって、いきなり操作させられて(笑)。帰りにカイロの博物館でツタンカーメンを見ました。夢が1つ叶いましたね」

周りに感謝し、挑戦し続ける

欧州ツアーの先輩、川村昌弘が「楽しめるものがある選手は戦える」と言っていたが、星野はまさにそうだ。

「コースも難しいし上手くいかないことも多くてすごくストレスがかかる。でも予選落ちしてもこうしてリラックスができればいい」

今後も欧州ツアー中心にアメリカでのメジャーにも挑戦していく。

「予定は詰まっています。PGAツアー参戦が直近の目標なので、もっとポイントを取るために、まずはもう1勝したい。知っているコースも増えましたし、しっかりチャンスをつかみたいです」

前回の東京五輪では松山英樹とともに日本代表となり、始球式も務めた星野。今年のパリ五輪に向けても気合いが入る。

「オリンピックにも出場したい。ここから1カ月は勝負です」

今改めて、周りの応援に力をもらっていることに感謝したい。

「メーカーやスポンサーの方、ケアや治療、いろいろな部分で人には恵まれているなあと。僕の周り、結構オタク気質の人が多いんですよ。帰国したときも、そういう人たちと話すのが好きなんです」

5月12日が誕生日の星野。昨年は“ツアー”が祝ってくれたという。スーダルオープン(ベルギー)2日目のホールアウト後、アナウンサーとスタッフが「ちょっと待っていて」と言ってきた。

「スタンドで囲われているグリーン周りで、『ハッピーバースデー、りくや』と歌ってくれた。試合中ですよ。後ろの組、川村(昌弘)さんたちで、フェアウェイのど真ん中で待っているんです(笑)。でも一番の嬉しい思い出です」

挑戦し続けるから結果も思い出も積み重なる。これからも“オタク”に楽しく世界を飛び回る星野陸也の姿に注目したい。

週刊ゴルフダイジェスト2024年5月21日号より