【イザワの法則】Vol.41 教え子の初優勝、期待しています!
プレーヤーとしての顔だけでなく、指導者としての顔も持つ伊澤プロ。今シーズンは、教え子のひとりである天本ハルカプロが、初めてツアーのシード権を手にした。伊澤プロの心境とは?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Takanori Miki THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
マネジメントにこだわりすぎると
チャンスを失うことも
今シーズン、高校生の頃からスウィングを見ている、(天本)ハルカちゃんが、初めて女子ツアーのシード権を獲得しました。昨シーズンは終盤まで割とギリギリのところにいたので、JLPGAツアーのホームページで何度ランキングを確認したかわからないくらいですが、最終的に決めてくれて、自分のことよりうれしかったですね。1年を通してツアーに出るのはおととしが初めてで、そのときは連戦のペースがつかめなくて息切れしましたが、昨年はその辺も少し慣れてきて、落ち着いてプレーできたのがよかったみたいです。
スウィングに関しては、もう教えるべきことはほとんど教えていて、本人もかなり理解しているようなので、あまり心配していません。このオフに一緒に回って何かアドバイスするとしても、たとえば、春先のペタッとした芝からどう寄せるかとか、少し特殊な状況についてということになると思います。昨年から抱える課題として、短い番手でグリーンを狙ったときに、思ったほどバーディチャンスにつかないということがあって、それは本人に伝えてあります。
たとえば、「上りの真っすぐ」につけるのが理想というのはもちろんなんですが、マネジメントとしてそれを実行しようとしすぎて、8番アイアンでぴったりなところを、9番アイアンで打ったりすることが時々あるんですね。そうすると、確かに「上りの真っすぐ」だけど、距離は10メートル近くになったりするので、そこはもう少し大胆にピンを狙っていこうと。
女子ツアーのテレビ中継を見ていると、グリーンまで少し長めの距離が残ったときに、解説の人が「グリーンのセンターでいい」みたいに言うことがあるんですが、その考えには反対です。だって、しっかり狙って「OKバーディ」のほうがいいに決まってるじゃないですか(笑)。無謀な攻めはよくないですが、状況を見極めつつ、できるだけピンを狙っていかないと、さらに上には行けないのかなと思います。
いかに自分を信じて
「普段通り」に振り切れるか
もうひとつ気になっているのは、シーズンの途中で、アイアンの弾道がやや低くなってしまう点です。これは男子プロでも起こりますが、ツアーを戦っていると「ミスの幅を小さくしたい」という心理が働いて、振り幅を抑えて球を“置きに”いってしまうことがあるんです。そうすると弾道は低くなりがちです。低く抑えたショットは確かに大ミスにはなりにくいですが、だからといってミスがゼロにはならないですし、それで必ずスコアが出るとも限りません。なので、ハルカちゃんには自分を信じて、いつでも、「普段通りのスウィングをしてほしい」ということは伝えてあります。
できれば、今シーズン「初優勝」ということになれば最高ですが、そこはドキドキしつつ、期待を込めて見守ろうと思います。そういう私自身も2シーズンほど優勝から遠ざかっているので、今年は頑張ってまずは1勝しないといけないとは思っています。そうでないと、「師匠」のメンツが立たないですからね(笑)。
「方向性がよくなることでもっと振れる。
ハルカちゃんにはそういう好循環が生まれつつある」
緊張の場面でも“いつも通り”できるかが大事
天本プロから携帯で送られた動画を見て、アドバイスすることもあるという伊澤プロ。その際は必ず、狙っている方向と足元のラインにシャフトなどを置いて撮影するように指示するという。この2本のラインがないと、軌道のずれを見極められないからだ
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2024年4月号より