【江連忠のPROJECT E】Vol.239 セベ・バレステロス「優れた想像力とそれを具現化する技術を併せ持っていた」
片山晋呉や上田桃子など、数多くのトッププロを世に送り出してきた江連忠が、自身の経験をもとに、レジェンドのスウィングに宿った“本質”を語る!
TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、小社写真部 THANKS/オーシャンリンクス宮古島
●今月のレジェンド●
セベ・バレステロス
1957年スペイン生まれ。欧州ツアー50勝(歴代1位)、世界通算91勝。全英オープンでの“駐車場ショット”などゴルフ史に残る劇的プレーが多い
人間の潜在能力の高さを
感じさせるプレーヤー
セベは初めてアメリカ以外から出たスーパースターでヨーロッパツアーの地位を押し上げた立役者です。僕は彼以上のフィール(感覚派)プレーヤーを見たことがありません。
同年代に活躍したニック・ファルドやニック・プライスはメカニカルで強かったけど、セベは感情と感覚で攻めるから奇跡的なプレーをやってのけ、記録はもちろんですが、記憶にも残るエンターテイナーでした。
感覚派だからといってスウィングが変則的だったわけではありません。全身を思い切り使っていましたが、そこに力みはなく、柔らかさと優雅なリズムを持っていました。
彼は「1万通りの技を持っている」と言われるほど多種多彩なショットを繰り出しましたが、それは幼少期に3番アイアン1本でゴルフを覚えたからだと思われます。3番アイアンで高い球やバンカーショットを打つにはどうすればいいか遊びながら覚えたから、優れた想像力とそれをショットに変える能力が身についたのでしょう。現代人には失われた人間の無限な潜在能力を感じさせてくれます。
下半身は鋭く、上体は粘るように
下半身が使えないアマチュアは強く叩こうとすると上体から打ちにいってしまいがち。下半身から切り返しながら上体は粘るように使えたら、パワーを出し切って打てるようになる
セベの系譜を継ぐのはこの選手
ジャスティン・トーマス
全身は強く使っているが力みはない
全身を使って強く打つ人は同時に力みがちだが、セベもジャスティンも強く振っているのにまったく力みは感じさせない
江連忠
1968年生まれ。東京都出身。高校を卒業して渡米し、ミニツアーを転戦しながらジム・マクリーンに師事したのち帰国。日本のプロコーチ第一人者となり、片山晋呉や上田桃子を賞金王に育て上げた
月刊ゴルフダイジェスト2023年9月号より