Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.137「頑張れ」「上手いなぁ」と言われると複雑な気持ちです

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa

前回のお話はこちら

プロゴルファーは試合やプロアマで、よくお客さんから声をかけてもらいます。

一番多いのが「ナイスショット!」です。このナイスショットのかけ声に対して僕らは、軽く手を上げたり帽子のつばに手を添えたりして「サンキュー」、「ありがとう」の気持ちを表します。

ほかに多いのが「頑張れ!」ですが、これはプロによってはタイミング次第でカチンとくることもあるようです。スコア落としてボロボロになっとるときに「頑張れよ!」言われると、ついつい「言われんでも頑張ってんねん」と思うことがあるとか……。


まあでも、「頑張れ」以外にピタリとくるかけ声がないわけだし、僕なんかは「頑張れ」いうのは「応援してまっせ」という意味にとらえるようにしているので、特に悪い気はせんですけれどね。

台湾や中国でも選手への応援は「加油(ジャーヨー)」で、意味は「頑張れ」ですから、世界的にも一番ハマるかけ声なんでしょう。ほかの競技での応援なんかを見ていると、中国人のファンは「加油!」「ジャーヨー!」と熱列応援しとりますが、平常心を保つのがプレーの基本にあるゴルフでは、アレはちょっとそぐわない応援の仕方かもわかりませんね。

プロアマなんかで一緒に回るお客さんからかかる声で多いのが、「上手いなぁ」です。もちろん、言われて嫌な気持ちにはなりませんが、まあ僕らも一応プロで、これで食わせてもらっておる。ゴルフが上手くて当たり前みたいなところがあるので、まあちょっと複雑な感じはあります。

お客さんは、賛辞の意味を込めて「上手い」言うておられるわけでしょうから、これも先ほどの「頑張れ=応援してまっせ」と同様、「上手い=すごい」言うてもらっているんやなと解釈しております。

ゴルフ場以外でも時々、声をかけていただきます。随分前のことですが、大阪の某デパートで歩いていたら「あ~、知ってる、知ってる。名前何やったかな、井戸木……、ちゃうわ」となかなか名前が出てこんようなので、「尾崎です」と言うときました。

名前が出てこんでも、まあ、ありがたいことです。

「なんやかんや、声をかけてもらえたら、嬉しいもんですよ」

奥田靖己

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2023年7月18日号より