【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.769「男子とか女子とかではなくツアー全体が繁栄することが私の願いです」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
先日行われた男子ツアーのミズノオープンは地上波の放送がなく、同じ日程の女子と比べて優勝賞金も少ないのには驚きました。いまの男子ツアーについて、岡本さんはどう思いますか?(匿名希望・58歳・HC12)
ミズノオープンは、わたしがプロデビューした1975年に初めて優勝することのできた思い出深いトーナメントです。
当時は千葉県にある姉ヶ崎CCで開催され、石川県の朱鷺の台CCに移して男女同時開催の大会として長く親しまれてきました。
そして男子は主にJFE瀬戸内海GCで開催され、93年からは全英オープンの日本予選会を兼ねることになり、一昨年には大会創設50周年を迎えました。
わたしもセレモニーに出席させていただき感慨もひとしおでした。
その伝統あるミズノオープンで、今年は22歳の平田憲聖選手がプロ初勝利しました。
大阪学院大在学中の昨年プロ入りした若手で、ミズノプロスタッフのひとりです。
主催大会を勝った所属プロを全英の舞台へ送り出すのは、スポンサーとしても誇らしく思いますし、わたしもミズノの身内としてとてもうれしく思いました。
平田選手の指導をしている川西直樹コーチのこともよく知っている間柄ですのでなおさらです。
一方、同じ週に開催された女子ツアーのリゾートトラストレディスは、昨年の賞金女王で平田選手と同郷で同学年の山下美夢有選手が2週連続でツアー優勝を果たしました。
しかし、優勝賞金は山下選手のほうが高かったという現実もありました。
男子ゴルフが面白くない、男子ツアーが振るわない。
正直そのような声があることを受け止めなければならない現実もあるでしょう。
かつて、年間40試合近いフルスケジュールで、新規開催リクエストの対応に苦慮していた男子ツアーは今や年間26試合。
3月第1週に開幕して毎週切れ目なく開催の続く女子ツアーとの格段の差が、嫌でも目についてしまいます。
この違いはどこからきたのか……。
若くて魅力ある選手を続々と輩出してきた女子ツアーと比べ、人材不足の問題が俎上に上がることもありますが、男子ツアーが現在直面している諸問題の根源はそれだけではないと思います。
たとえば、2018年の日本ゴルフツアー選手権のプロアマ戦での騒動も要因のひとつだといえるかもしれません。
ある選手が、同伴者のゲストアマチュアの方への振る舞いと言動によって不愉快な思いにさせ、そのゲストが競技をやめてクラブハウスへ引き返してしまう事態が起こりました。
事態を重く見た日本ゴルフツアー機構はゲストアマチュアに対して陳謝し、対象選手には30万円の罰金と厳重注意という処分を下しました。
プロアマ競技は、大会を主催するスポンサー企業がPRや販促活動の一環として行う顧客サービスのイベントであり、選手や協会がともに協力するものです。
スポンサーなしにはトーナメントやプロゴルフ自体が成り立ちません。
プロアマに出場するトップ選手はそれを理解していたとしても、あるべきでない行動によりないがしろにしてしまったという事実。
そのような体質が透けて見えれば、サポートしたいという絶対数は必ず減少します。
スポンサー企業は、トーナメントを広告媒体としても見ています。
ですから、媒体としての商品価値があるかないかは重要なファクターです。
男子ツアー、JGTOの体質改善が叫ばれ、さまざまな取り組みが試みられてきたといわれますが、もっと改善できるのではないかと思う面もあります。
手厳しいことを言うようですが、危機感が見えてこないのは問題です。
また、ゴルフ界の発展に男女の別はありませんが、愛想がよく礼儀も正しく人気も高い女子ツアーのほうがいいと考える企業が増えるのも無理もないということです。
協会もマスコミも、そして選手の一人一人も、ゴルフ界がどうあるべきか足元を見直す時期にきているのだと思います。
試合数や賞金額の男女逆転を考えれば、かつて存在したトーナメントの男女同時開催を視野に入れてみるのは、ひとつのアイデアかもしれませんね。
「男子ツアーも盛り上がってほしいと心の底から願っています」(photo by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年6月20日号より
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