【江連忠のPROJECT E】Vol.237 樋口久子「ねん転なんて必要ない、これが究極の脱力スウィング」
片山晋呉や上田桃子など、数多くのトッププロを世に送り出してきた江連忠が、自身の経験をもとに、レジェンドのスウィングに宿った“本質”を語る!
TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa、小社写真部
●今月のレジェンド●
樋口久子
日本の女子プロ1期生でツアー通算69勝。アジア初のメジャー優勝(77年全米女子プロ)と世界ゴルフ殿堂入りを果たしている。1945年生まれ
いつも同じタイミングで
打てるから強かった
僕の師匠の棚網良平先生はその昔「樋口久子は日本の首相になるべきだ」と言っていました。「あんなにターゲットに背中を向けるくらい体を回せるのは日本一勇気がある」というのです。現代よりも個性的なスウィングの人が多かったなかでも樋口さんのトップは個性的だったわけですが、それが最大の強みでもありました。
腰と肩に捻転差を作ってパワーを溜めるとか全く考えずに、どこも力まないまま全身を回せるところまで回すため、切り返しのタイミングがいつも同じになります。どんなプレッシャーのなかでも同じことができるというのがこういう個性的なスウィングの強さ。切り返し以降もクラブが下りてくるのを待ちながら最後まで力まずに振り抜けるから、体に負担がかからず、好不調の波も生まれず、長く戦えるスウィングなのです。
現代のプロのように体を鍛えてコンパクトスウィングで飛ばすことが難しいアマチュアは、筋力ではなく重力や遠心力を生かして飛ばすことが大切で、そのお手本となる究極の脱力スウィングです。
樋口’s Swing
体をねじらないドアスウィングは再現性が高い
頭を動かさないとか体をねじることを意識して小さなトップになるよりも、全身を回せるだけ回してドアのように開閉させるほうが体に負担がかからず再現性も高くなる
樋口の系譜を継ぐのはこの選手
不動裕理
タイミングが狂わないことが最大の武器
オーバースウィングだが、クラブが下りてくるのを待てるだけでなく、筋力に頼らずに打っていた。師匠の清元登子さんが樋口さんに憧れて教え込んだと感じる類似点だ
江連忠
1968年生まれ。東京都出身。高校を卒業して渡米し、ミニツアーを転戦しながらジム・マクリーンに師事したのち帰国。日本のプロコーチ第一人者となり、片山晋呉や上田桃子を賞金王に育て上げた
月刊ゴルフダイジェスト2023年7月号より