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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.121「“ゴロ”はよい球でっせ」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Yoshikazu Watabe

前回のお話はこちら

3月15日から鹿児島の「いぶすきゴルフクラブ」で今季のシニアツアーの最終予選会に出ます。

「いぶすき」では、95年にレギュラーツアーのカシオワールドで優勝をしていますが、フェアウェイが広くて飛距離が要るから実は、僕としたらあまり向いていないコースなんですわ。

ただ、3月の半ばなので風があってグリーンが硬くなったら面白くなるなとは思うとります。

よくプロは、予選会のゴルフと普段の試合のゴルフは違うと言いますが、そら「違うこと」ができれば一番いいんですよ

でも僕らプロにとっては、予選会は大事、本チャンの試合も大事、ジャパンオープンも大事なんです。

だから、普段はドライバーで打つのに予選会はアイアンで打つ、そういうことが自然にできるかいうことなんです。


予選会のように切羽詰まったときは計算通りにいきません。そういうときに出るんは「普段のゴルフ」です。

去年の12月、高坂CCの1次予選会では、ティーショットを5番アイアンで打つ選手が多かったけど、僕は全部ドライバーで打ちました。

春先からずっとショットイップスで調子も悪く、この予選会は首の皮一枚でつながったようなもんや思うて、飛んでも飛ばんでもいいから低い球でイッチョいったろういう思いで臨んだわけです。

そうしたら僕はギリギリ予選通過して、アイアンで刻んだやつらは通りませんでした。

この「低い球」には布石があって、5年くらい前に黒潮CCでシニアの最終予選会をやったときのことです。

オフに入って低い球を練習して予選会に臨んだんですが、たまたま同組になった友利(勝良)さんに「奥くん、球低くなったなぁ。もうちょっと球上げたほうが飛ぶんじゃない」と言われてね。「なに言ってんですか先輩。友利さんのマネして練習してきたんですよ」言うて食ってかかった(笑)。

その予選会の結果はよかったです。最近は、打ち出し角11度が飛ぶとか言うて高い球が好まれますが、ゴロはよい球なんですよ。曲がるわけがない、引っかけても高い球と違って、2車線の幅に収まりますからケガは少ない。

来週の最終予選会もゴロでいきまっせ。

「低い球は、飛んでも飛ばんでも…何より曲がらんのです」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2023年3月21日号より