【渋野日向子・畑岡奈紗・鈴木愛】オリンピック出場とメダルを目指すスリートップ。彼女たちの強さを再分析
東京五輪出場を目指して始動し始めている女子プロのスリートップ。彼女たちの強さの秘密について、多くの女子プロを指導する辻村明志コーチが解説。
【渋野日向子】現在世界ランク11位
全英女子OP優勝後に日本勢二番手に浮上。2020年は米ツアーにスポット参戦し、上位を目指す
【畑岡奈紗】現在世界ランク5位
最有力候補。米女子ツアー4年目となる2020年はメジャー優勝にも期待。初戦はいきなりプレーオフで2位
【鈴木愛】現在世界ランク15位
現在日本勢の三番手。19年は7勝を挙げ、賞金女王に輝く。いまいちばん波に乗っている
(2020年1月24日時点)
【解説】辻村明志プロコーチ
1975年生まれ福岡県出身。上田桃子をはじめ、小祝さくらや永井花奈のコーチを務める。理論を押しつけず、それぞれに合った指導に定評がある
三者三様だがトップオブスウィングが素晴らしい
左右への大きな体重移動が特徴の鈴木選手は、左ひざでスウィングをリードしつつ、テークバックを“右のカベ”が受け止めることで、スウェイすることなく、しっかり体重が乗ったトップの形を作っ
ています。
低い重心から一気にパワーを放出する渋野選手のトップを見てみると沈み込むように頭が下がり、その形をフィニッシュまでキープしています。これはインパクトで“ビハインド・ザ・ボール”の形を作るための準備とも言えますね。
ジャンプするように飛ばす畑岡選手は、プロになりたての頃は、タイミング次第で球が散りがちでしたが、地面をグッと押すようになってから、安定感が増したように見受けられます。その肝は、トップで地面をしっかりつかまえるようにドッシリと構えた下半身です。
それぞれ異なるタイプですが、共通点は“トップで叩ける形が作られていること”。強い選手ほど、トップでパワーをしっかり溜めるのです。(辻村)
渋野日向子は上下動を抑えてパワーをためる
体を浮かせない低重心のトップ
アドレスから低い重心を保ったままトップを作ることで、右股関節が深く入り、パワーがたまるんです(辻村)
平均飛距離 248Y
FWキープ率 67.9%
平均パット数 29.1
畑岡奈紗は強靭な下半身でねん転を作る
どっしりした下半身で軸がブレない
地面をつかむようどっしり構えることで、右股関節に体重を乗せてもトップで軸がブレないんです(辻村)
平均飛距離 262Y
FWキープ率 73.2%
平均パット数 29.5
鈴木愛は右のカベで体重を受け止める
左ひざを内側に入れることで大きく体重移動
トップで左ひざがボール位置よりも内側に入るほど大きく体重移動してパワーをためています(辻村)
平均飛距離 242Y
FWキープ率 68.6%
平均パット数 28.7
3人以外に可能性は?
最終決定は6月30日。世界ランキングで15位以内に入れば出場権は最大4人まで与えられるため、3人がともに出場できる可能性が高い。
【現在のランキング】
畑岡奈紗 世界ランク5位
渋野日向子 世界ランク11位
鈴木愛 世界ランク15位
稲見萌寧 世界ランク53位
上田桃子 世界ランク59位
河本結 世界ランク64位
比嘉真美子 世界ランク65位
五輪代表の出場枠
①世界ランク15位までの各国最大4名
②16位以下は1カ国2名
畑岡奈紗がオリンピックに向け取り組んでいること
GD 代表選考決定まで、あと半年ですが、意気込みは。
畑岡 まずは4月のメジャー初戦のANAに照準を合わせ調整していきたいですね。
GD オリンピックで印象に残るシーンはありますか。
畑岡 リオのゴルフの表彰式で、朴インビ選手が表彰台の一番高い所に上がった時に、凄くドキドキしました。
GD ドキドキしたとは?
畑岡 国を代表しプレッシャーがある中で、金メダルを獲ったシーンを見て、感動もしたし、次の東京大会では自分が代表としてあの場所に出て、あの立場になりたいと思ったときにドキドキしました。
Q、オリンピック候補に3人の名が挙がってると思いますが
A、今は世界のトップに立つことしか考えていません
GD 選ばれた場合は、目指すは金メダルですか?
畑岡 はい。そうですね。
GD 有力候補の渋野日向子、鈴木愛にライバル心は?
畑岡 あまりないですね。今年の目標は、「世界で1位になる」ことなので、世界ランキングで自分より上にいる4人の順位の方が気になります。
GD メジャー優勝は渋野プロに先を越されました。
畑岡 始めは口惜しさが凄くあって素直に「おめでとう」が言えなかったんですが、日本人はメジャーでは勝てないと言われてきた中で、勝ってくれたので、自分も出来るんだという気持ちにさせてくれましたね。
GD 自国開催の有利さは?
畑岡 母国語での応援は凄く力になります。あと、あれだけの暑さは他国の選手はなかなか経験をしていないと思うので、少しは有利かなと思います。
ひじを曲げるアドレスにした
Q、現在取り組んでいることはなんですか?
A、19年はスウィングが安定しなかったのでアドレスから変えています
GD 世界1位になるために、取り組んでいることは。
畑岡 ショットに関しては19年の終盤から少しひじを曲げるアドレスに取り組んでいます。
GD どうしてですか。
畑岡 アドレスで腕を伸ばしていたときは、バックスウィングですぐにコックを使い、トップでオーバースウィングになることが多かったんです。トップがオーバーになると、切り返しからはコックが早く解けやすく、それがショットのブレに繋がるんです。でもアドレスでひじを曲げて腕にゆとりを持たせておくと、バックスウィングで手首を使う動きが抑えられて、緩みのないトップになり、ダウンスウィングも安定し、再現性が高くなるためショットのブレも抑えられます。
GD 今、スウィングに『キレ』を出すことにも取り組んでいるということですが。
畑岡 はい。ローリー・マキロイ選手のような体幹や下半身でスウィングをしたいです。
Q、地面を蹴るイメージは変わらない?
A、変わりませんが、使いすぎるとブレるのでそこを考えています
GD 畑岡プロは地面の蹴りが強く、下半身は使えているのかなと思っていましたが。
畑岡 でも蹴りすぎは体の伸び上がりのような悪い面も出るので、その加減が大事です。
GD 今、取り組んでいる下半身の使い方を教えて下さい。
畑岡 意識しているのはインパクトでの両足を踏ん張りで、特に右足は我慢をして『べた足』のイメージでやっています。右足を我慢すると、体が左サイドに流れなくなるのでキレが出てくると思っています。蹴る動きはインパクト後にって感じですね。
GD 体幹はどの曲面で必要なのですか。
畑岡 体幹(お腹)でクラブを上げていくことで、先ほど言ったコックの入りを抑え締まったトップが作れるので、飛距離に通じるキレとショットの安定を実現できると思っています。
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