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【浦ゼミナール】Vol.32 真似してほしいのは松山。タイガーは実は危険!?

身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。第32回は、前回に引き続きアマチュアがトッププロのスウィングを真似していいのかという疑問にお答え!

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

前回のお話はこちら

松山選手のスウィングは「真っすぐ」の究極系

――先月に引き続き、今月もトッププロのスウィングについてお聞きしたいのですが……。

浦 気になる選手は誰ですか?

――松山英樹選手はどうでしょう?

浦 どうでしょうって、マスターズチャンピオンですよ。最高ですよ!

――僕らアマチュアが真似してもいいんですか?

浦 うーん、松山選手はああ見えてものすごく体が柔らかいので、スウィング自体はちょっと常人には真似できませんが……でも、彼の徹底的に「真っすぐ」にこだわる感覚はぜひ真似してほしいですね ある意味スウィングの基本中の基本ですし、僕の生徒さんにこの話をしたら、みんな続々ベストスコアを更新しました。松山選手のスウィングにはそのくらい大事な動きが詰まっています。

――「真っすぐ」ですか?


浦 端的に言えば、彼は「フェース面を打ちたい方向に向け続ける」ことしか考えていないんじゃないかと思いますね。体をどう動かすとか軌道とか、極論すればそんなことはどうでもよくて、とにかくヘッドもフェースも目標に真っすぐな状態をできるだけキープすることがすべて。これって、ボール前後の20~30cmなら誰でもできるんですが、松山選手はそれをどこまで拡大できるか徹底的に追求している感じがします。でも実際はスウィング中、全部を真っすぐ動かし続けることはできないので、どこかで必ずインサイドには入ってくるし、最低限のフェースローテーションも生じる。でもそれを必要最低限にとどめて、どこまで「真っすぐ」が可能かを突き詰めているようなスウィングだと思います。あのフォロースルーや、右足がめくれちゃうフィニッシュなんかは、とにかくボールを目標方向に「押そう」としているように見えます。

――でも「真っすぐ」ではパワーが出しにくいように思います。

浦 そうですね。スピードは出しにくいかもしれません。松山選手のスウィングは、サッカーでいえばインサイドキック。でも彼は全部のキックをインサイドキックで、メチャクチャ強い真っすぐな球を蹴ることを目指している。ボールを真後ろから強く押す動きなので、みなさんが思っているほどエネルギー効率は悪くないはずです。

――なるほど! 確かにワールドクラスのサッカー選手のなかには、インサイドキックで強く長いパスを蹴れる選手がいます。松山選手もそういうタイプってことですね。

浦 なんだか合点がいったみたいですね(笑)。

松山選手は究極的に“真っすぐ”振りたがっている

松山選手のスウィングからは、ヘッドとフェースを目標方向に向け続けておきたいという意志が強烈ににじみ出ている。インパクト後も真っすぐ押して押して押していくので右足がめくれても関係ない。「真っすぐ」を愚直に追求してきた結果のスウィングだろうと浦さんは分析する

ボール前後の「真っすぐ」をどこまでも拡大した動き

松山選手を真似ればスコアアップできる

――ほかに真似してもいい選手はいませんか? タイガー・ウッズとか。

浦 タイガーですか! どこをどう勘違いしたらあのスウィングを真似できると思えるんですか(笑)。タイガーは、確かに理想的に美しいスウィングです。でもその美しさは、彼のスウィングが超ニュートラルなことを意味します。ニュートラルな分どの方向にも調節が利くので自由自在に何でもできる代わりに、どの方向にもズレる可能性を秘めている。だから超天才じゃないとコントロールできない超ピーキーなスウィングなんです。

――やっぱり、天才じゃないとダメですか。

【ちなみにタイガーは?】
天才にしかできない「超ニュートラル」

タイガー・ウッズのすごさは「ニュートラルさ」にあると浦さん。どんな方向にも自在に応用が利くが、その分どちら側にもズレるリスクがあり、パフォーマンスを維持するのは至難。タイガーの天才的な感性があってのものだ

浦 PGA選手なんてみんな天才ですから、その上をいく超天才じゃないとダメ。ジャスティン・トーマスなんかはニュートラル型で結構うまくいっていますが、ジェイソン・デイやトミー・フリートウッドなどは、いいときはいいけれど波があるし、勝ち切れない印象が残りますよね。反対にワンサイドに偏っているスウィングは、ズレるとしたら片方向だけなので、コントロールもしやすいし保険もかけられる。「ドローしか打たない」「フェード一本槍」みたいなスウィングの強みってそこなんです。

――ジョン・ラームやブルックス・ケプカなんかは……?

浦 あの2人のスウィングは、とにかく体がデカくて筋力があるからできるスウィング。ラームのケツとかケプカの腕とか、丸太みたいでしょう? 僕ら身長170cmそこそこの日本人には真似できません。

【このへんは“真似るな危険”】
ラームやケプカは体格と体幹の強さが必要なスウィング

ジョン・ラームは手首のコックを遅らせ横長のアークで振るのが特徴だが、「最新型エルス」みたいだと浦さん。ブルックス・ケプカは腰椎の柔らかさが特徴。インパクトで右足が上がるがそれを強靭な体幹で抑え込んで打っている。いずれも、185cm前後の体格と強い筋力が必須なスウィングだ

――そうかあ。世知辛いですね。

浦 身長171㎝の僕でも400ヤード以上飛ばせるんですから、無理して彼らのスウィングを真似なくたっていいんです。でもスコアを出したいなら松山選手の動きは取り入れたほうがいいですよ。まずは腕を伸ばしたまま、手元が腰から腰くらいの幅でヘッドを真っすぐ動かしてみる。それをどこまで拡大できるか、いろいろ試してみてください。方向性は絶対によくなるし、ミスヒットしても球が散らなくなります。何ならボールを「押す」感覚が芽生えて当たりも厚くなるから、飛距離アップの可能性もありますよ。

“真っすぐ”の動きを最大限拡大する練習をしてみよう

三角形を維持して「真っすぐ」振る

松山選手の動きのベースを理解するためには、まずは腕を伸ばしたままヘッドもフェースもスクエアを保って動かす。小さなスウィングから、これを拡大していく過程に、「真っすぐ飛ばす」ための基本の動きが詰まっている

シャットフェース気味に下ろしてきてハンドファーストに長いゾーンで押し込み、そのまま目標方向に「真っすぐ」のエネルギーを加えていく。右サイドは極限まで押し込まれ、ボールを「押す」感覚がわかる

月刊ゴルフダイジェスト2022年10月号より