Myゴルフダイジェスト

【ゴルフ野性塾】Vol.1748「粘るラフには振り抜きがいる」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日9月1日、木曜日。

福岡けやき通り15階から眺める空一面、鉛色の雲。
台風11号から流れて来た浮はぐれ浪雲である。
この先、気紛れな台風はどこへ向うやら。
現在時、午前11時35分。
また雨がパラついてきた。
遠くが霞む。
これよりファックス送稿。
我が身に変りなしである。

力頼りで打つな。アドレスの型で打て。

先日、洋芝コースでラウンドしましたが、ラフからのショットがまったく飛びませんでした。右に弱々しい球が飛んだり、左に引っかかったり、アイアンがまともに当たらない状態です。次もまたそのコースに行く予定で、なんとかリベンジを果たしたいと思います。塾長、洋芝の粘るラフからナイスショットする方法を教えてください。(茨城県 野村真人・37歳・ゴルフ歴3年・平均スコア102)

ゴルフには力で打って行ける状況とインパクトの型で打って行かねばならぬ状況がある。
特に腰の強い芝の時に打ち方の選択が必要となって行くものだ。
貴兄の経験は選択を間違えたか、知らなかったかのいずれかが招いた結果である。
粘りきつい時、インパクトの型で打つ選択は必要だ。
力打ちしても芝の粘りでクラブヘッドの一気の減速が生じ、ヘッドがボールに届いただけの結果は生じよう。
振り抜かねば球は左へ飛ぶ。
勿論、飛距離不充分、方向予期せぬの球が飛び出す。
そして、貴兄の経験と相成る。
振り抜けたとしてもクラブヘッドは粘りに負けて開きの状態となり、ヘッドスピードも落ちて、またもや貴兄が経験した通りの右行きの球が飛んで行く。
それでもラフから抜け出せただけ救われる。
下手すりゃチャチャッとの音を残し、数ヤード先のもっと深いラフに飛び込む事もある。
そうなると悲惨、脱出するだけでサンドウェッジ3回4回使う状況が顔を出す。
OBもウォーターハザードにも打ち込まず、トリプルボギー打つのは納得出来ぬ。
納得出来ぬまま、信じる事出来ぬまま、あとは崩れのゴルフ、待つだけとなろう。
それが貴兄の経験であった筈。

力頼りで打ってはならぬのです。
力で打てばスウィングのどこか一瞬の時、体の動き止まる。
当然、クラブヘッドの動き性急となり、ヘッドのロフトかぶさってのインパクトとなるか、開いてのインパクトとなるかだ。
一瞬の止まりを阻止しなければいけない。
故にアドレスの型に戻すが粘り芝への最善の対応となる。
バックスウィングする。
意識は球へ向けるのではなく、インパクトをアドレスの型へと戻す、その意識でスウィングして行けばいいのです。
多くの方が力に頼った。
そして力負けした。
アドレスの型をインパクトの型に重ね合せる意識を持ち、その振りすればクラブヘッドは球に届きます。
勿論、フェアウェイから100ヤード打てるクラブで100ヤード打てる事はない。
打って70ヤード迄だ。
粘り強ければ50ヤードが精一杯の時もあろう。
でも方向、大きく狂いはしない。
前へ飛んで行ってくれる。
一打でラフから脱出出来る。
それで充分。

反省したけりゃ打ち込んだ己の体・技・心を嘆きゃいい。
しかし、私なら嘆かない。
反省もしない。悔いもしない。
アドレスの型で打って行くだけ、と己に言い聞かせる。
反省や悔いは複雑を生む。
ゴルフが難しく、厄介にもなる。
ミス球打った時は単純がいい。
ミスの尾を次のショットに引きずるのはマズい。
断ち切れ、ミスの尾をだ。
貴兄はミスの尾を引きずった。
そして最後はこんな筈ではなかったの想い、強めるばかりの18ホール終了である。

リベンジを求める根性は素晴らしい。
回復力抜群の方と思う。
練習場で確認すればいい。
サンドウェッジ持ってこの距離を打つ。
気楽に打つも良し、腕力で打つも良し、日頃と同じスウィングで打つも良し、勘頼りで打つも良しだが、10球の球全部、同じ地点に打ちたいと願う時、それ等の打ち方で方向と飛距離の一致必要とする一カ所集めが上手く行くとは思えぬのです。
距離か方向がズレる。
だが、アドレスの型をインパクトの型とする打ち方すれば一致出来ると思う。
スウィング軸がズレない、体の上下の沈みが生じない、ヘッドアップが招く左肩と右腰と首筋と顎の位置のズレが生じない。
ドライバーで型の重ね合せするのは飛距離落ちるのでお勧めは出来ない。
なれど100ヤード以内の距離なら飛距離落ちても100ヤードの5%、5ヤード迄だ。
ならば95ヤードを己の距離と思えばいい。
スウィング軸、ズレないので振り抜ける。
粘りの草であっても振り抜きの力とスウィングの型は残せる。
貴兄は力に頼った。
そして力負けした。
クラブヘッドは貴兄の意図とは異なる動きをした。
アドレスの型をインパクトに戻して、その型で打てばいい。
粘り草での打ち方は型で打つが最善。

型で打ったプロは全米オープンで勝っている。
ジーン・リトラーだ。
ゆっくりとしたスウィングでありながら粘り草への対応、名人芸と言われたプロである。
型で打っていた。
彼のスウィング写真が残っている。
足首迄が埋まるラフからのショット、アドレスとインパクトの型が見事な迄に一緒であった。
プロに出来る事はアマの方にも出来る、アマの方がやってる事、プロには出来ないとゆうショットは多い。
型で打つ事、アマの方にも出来る事である。
貴兄はアドレスの型で打て。
力は日頃の打ち方と同じでいい。
当らなかった時、空振りした時は、と考えるな。
戻せば当る。
球は前へ飛ぶ。
練習場でアドレス型戻しの練習して戴きたい。
50球も打てば要領はつかめよう。

私の師、橘田規プロは日本オープンに行く前、サンドウェッジの型戻しの練習ばかりやっていた。
ドライバー曲げなきゃいいと考え、ドライバーの練習するのが普通なれど、ドライバーの練習はせず、サンドウェッジの練習ばかりやっていた。
「曲げまいと思えば曲るもんや。曲るもんと思ってもやっぱり球は曲る。厄介と思わなきゃええんや。ゴルフのボールは今、可愛い姐チャンの反抗期と思えば腹立ちも苛立ちも出て来る事はありまへんがな。自分に惚れてくれてる姐チャンの可愛い反抗や。我慢しなはれ。忙しくっても黙って話を聞きなはれ。その我慢がゴルフやさかい」と宮本留吉プロは教えてくれた。
耐えよ、野村真人。
打ち込んでもイヤな顔はするな。アドレスに戻せ、インパクトの型を。
結果を怖れるな。
平然と打って行け。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月20日号より