Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • レッスン
  • 【ゴルフ野性塾】Vol.1746「高きフィニッシュがツアー寿命を長くする」

【ゴルフ野性塾】Vol.1746「高きフィニッシュがツアー寿命を長くする」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

晴れています。
雲は白銀色と

灰色の雲、混じり合う気温34~5度の空模様。
空の青は濃い。
今日8月18日、木曜日。
現在時午後1時25分。
けやき通りの蝉の鳴く声、強まって来た。
何等変らぬ日々。
部屋に籠るだけの日々。
雅樹が言った。
「親父、ゴルフに行こうぜ。ゴルフ場でコロナ貰う事はないだろうからさ」
「暑い。そして飛距離落ちてるの分ってるからゴルフやっても面白くない。お前に70ヤードも100ヤードも置いて行かれたんじゃ不愉快なだけだ」
「まだ、飛距離へのプライドあるんだ?」
「負けるのがイヤなだけだ。お前が75歳になったら分る。勝とうとは思わんが負けるのはイヤだ」
「30年先か。長いな」
「30年が早く過ぎる事はないだろう。しかし、確実に訪れる30年だ。それ迄、焦らずに生きて行きゃいいさ」
ゴルフコース行くのは9月下旬と決めています。
今は暑い。
然り気なく過す日々。
体調良好です。

摸倣すべきは、女子プロのスピード。

塾長は先週号で、男子プロのトップの左手首の角度をお手本にすればいいと言っていました。では、ヘッドスピードが我々のような一般アマに近い女子プロのスウィングでは、どこを参考にすればいいでしょうか。(兵庫県・田中駿太郎・35歳・ゴルフ歴5年・ベストスコア92)


読者諸兄の質問、疑問を受けた時、私であればどうするかと考える。
貴兄の質問にも私であればどうするか、と考えた。
私は今より50年前の24歳の時、ゴルフを始めたが、参考にしたのはサム・スニードとジーン・リトラーのスウィング連続写真だった。現在の様な動画を見られる時代ではなく、プロのスウィングを参考としたければゴルフ雑誌から切り抜いたスウィング写真を参考とするだけの時代だった。
今、情報を得るに於て不自由のない時代と思う。
だからと言って向上力強まった訳ではあるまい。向上力、闘争心、好奇心は人それぞれの能力であると思う。
総てが人それぞれであり、人それぞれの順応力、対応力で人は生きて行くと考える。

女子プロのスウィングで模倣すべきは、スウィングスピードである。
ただ、女子プロのフィニッシュ位置は低い。
体が柔軟である為か、左腕と左肘と左肩の位置が低い。
そして、落ち過ぎだと感じる。
あと10センチ、高い位置のフィニッシュ取れれば20ヤードの飛距離増望めるのに何故、と思う。
体の軟らかさが邪魔しているのか、幼い頃の癖が取り除けていないのか、いずれにしてもスウィングの単純さと加速性を生む位置ではない。
アドレスからフォロー迄は満点に近いのにフィニッシュでスウィングの単純さとスウィングスピードの加速性を損なっている。
グリップの修正は危険を伴うが、フィニッシュ位置の高さの修正に振り切れなくなったりとか、スウィングバランスを崩してしまうといった危険はないと考える。

低い位置で振って来た者のツアーからの撤退は早い。
坂田ジュニア塾出身者95名、塾生以外に指導した者15名、合せて110名がプロテストに通っているが、塾生時代から高いフィニッシュ位置で振っていたのは上田桃子と笠りつ子だった。
二人は塾生時代も今も変らぬフィニッシュの高さを維持して来ている。
途中、ツアーから離れた者はフィニッシュ位置を低くしていた。
低い方が楽だからだ。
男子プロ然り。
高いフィニッシュ位置持つ者のツアー寿命は長い。
低き者の寿命は短い。

貴兄は女子プロのスウィングを模倣せよ。
アドレスからトップ、インパクト、フィニッシュ迄のスウィングスピードを己のスウィングの手本とせよ。
ただ、フィニッシュ型だけは模倣せぬ方がいい。
そこは男子プロの模倣を勧める。
50年前は大きく振れるスウィングを理想とした。
倉本昌弘がその理想を変えた。
小さなトップで大きく振るスウィングを作った。
日本プロゴルフ界、スウィングの理想を変えて来たのは中村寅吉翁と倉本昌弘と岡本綾子の3人と思う。
ゴルフの概念を変えたのは尾崎将司ただ一人と思う。
貴兄は女子プロのスウィングスピードを模倣せよ。

ラスト3ホール、バーディを取りに行け。

50歳を過ぎてから、最後の3~4ホールでスコアを崩すことが多くなりました。当たりが悪くなり、球が曲がり出します。そのため、いいペースで回ってきても、いつも最後にドタバタです。足腰が弱ってきたせいでしょうか。最後まで崩れずにラウンドする秘訣はありませんか。(愛知県・橋本剛一・57歳・ゴルフ歴31年・HC12)

57歳で足腰のヘタリはないと思う。
気持ちと推察する。
一度のミスは時間と成功が忘れさせてくれる。
二度連続のミスもその後の一度の成功あれば忘れる事も出来よう。
だが三度のミスとなれば一度や二度の成功で過去のものと為るは難しかろう。
ミスは過去と現在、そして近未来を繋ぐ力を持つと思う。
だから厄介なのです。

ミスを忘れよ、と識者は教える。
だが私の経験で申すが、ミスを犯さぬ気持ちある程に己のゴルフ、窮屈となるは確かだった。
何事も体・技・心と思う。
私は高校時代から哲学に興味を持ち、大学も哲学に進んだが、心・技・体と考える事はなかった。
プロゴルファーを目指したのは22歳の時だったが、研修生にはならなかった。
まずは研修生の筋力と体力が必要と思い、陸上自衛隊に入った。
そして2年任期満了後の24歳で栃木の鹿沼CCに入社した。
変り者が来た、と周りは噂した。
ゴルフ未経験の24歳である。
1年持つか、と言う人もいた。
私は思った。
こっちも変り者だ。1年我慢する為に鹿沼に入ったんじゃない。第一、我慢なんて気持ちは一つも持っちゃあいない。我慢、辛抱なんて気持ち持った時点でその生活は終わりだ。好きだったら何でも出来る。ゴルフを好きになりゃいいだけだ。焦る事はない。時間は充分にあるんだからッ。
24歳の開き直りだった。
無理と言われて、ハイ、その通りですと返す可愛げのない人間だった。
反発はしなかった。
そしてゴルフ始めて3年と11カ月でプロテストに通った。

貴兄はミスの習慣を引きずっている。
ラスト3ホール、バーディを取りに行け。
ハンディ12であれば出来る筈だ。
それで変る。
気持ちの180度の変換。
今、貴兄に必要なのはそこだと思う。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月6日号より