【右手と左手、どっちが大事?】佐久間馨「左手と右手の入れ換えでヘッドが走る」
ゴルフのスウィングでは、左手のリードが大事と言う人もいれば、右手の感覚が大事と言う人もいる。いったいどっちが正しいのか? 独自のメソッドで数多くのゴルファーを開眼に導く佐久間馨コーチに話を聞いた。
解説/佐久間馨
1955年生まれ。「“振り方”“当て方”“メンタル”の三方面からマネジメントを説く当代No.1の戦術師。10年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
「左手リードか? 右手主体か?」という問いは、「腕を振るには、どっち中心がいいの」という発想からスタートしています。私のSメソッドは、「腕を振る」ではなく「クラブヘッドを振る」ことを主体に、その「動力」は「左手と右手の入れ換え」によって生まれる、と考えています。
クラブを普通にグリップして構えると、右手は左手より下にあり、そこから手首を親指側にコックしてヘッドを持ち上げると、今度は右手が左手の上にきます。その状態からヘッドを真下に振り下ろすと、ヘッドの重みでヘッドは勢いよく地面に衝突します。この上から下に振り下ろす動きで、上にあった右手は左手の下にいく。これがクラブを振る動力になるのです。
実際にスウィングしてみましょう。テークバックの始動では、左手側のグリップエンドを左手小指丘で下に押してヘッドを持ち上げます。俗にいう「コック」をすることで左手の下にあった右手は上にきます。トップからダウンスウイングに入り、インパクトの手前で、X点(右手と左手の重なる部分)を支点に、今度は上にあった右手を左手の下に入れる動きをします。いわゆるコックのリリースを行います。クラブを握った状態でヘッドを親指側に持ち上げる「とう屈」をすると最大で60度の角度がつきますが、その60度をインパクトの手前で一瞬にして解き放ち、手首を伸ばす。これがヘッドに加速度をつけ、シャフトのしなり戻りを作って、ヘッドを走らせます。この左手と右手の入れ換えこそ、クラブを動かす動力であり、クラブヘッドに加速度をつける一番のエネルギー源なのです。
この右手と左手の入れ換えの際に、“左手を引く感じ”を持つ指導者は「左手リード」と言い、“右手で押す感じ”を持つ指導者は「右手主体」と言う。だから両方とも間違いではない。ただし、腕を振るだけではヘッドを速く走らせるのに限界があるので、付随して「左腰を切れ」「地面反力を使え」といったことを言います。これがスウィングを難しくし、わかりにくくしているとは言えるでしょう。Sメソッドは左手、右手、両方を使って「テコの原理」を念頭に、X点を支点にヘッドを速く走らせようと考えたもの。非力な女性やシニアでも安定してラクに飛ばすことが可能。また、X点の位置を意図的にコントロールできればフック、スライス、高い球、低い球を簡単に打ち分けられ、ミスショットを防ぐこともできるのです。
「X点」を支点にテコの原理でヘッドを走らせる
クラブを振るための支点として「X点」を意識するという佐久間氏。「X点とは、グリップの際の右手と左手の重なる部分です。ゴルフではオーバーラッピングなどで左手人差し指と右手小指を重ねて握りますが、ここが『X点』で、X点を支点にしてテコの原理を働かせ、左手と右手の入れ換えをする。それによってクラブヘッドは最大50m/s超のスピードを出すことができるのです」
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号より