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渋野日向子に池村寛世…プロが時折見せる“直ドラ”はアベレージゴルファーにも武器になる?

今季から米国を主戦場とする渋野日向子や、ツアー2勝目を挙げ好調の池村寛世が得意としている「直ドラ」。ティーアップせずに地面から直接ドライバーで打つのは我々一般ゴルファーにはレベルの高いテクニックに思えるが、「アマチュアにも直ドラは大きな武器になる」と小林大介プロは言う。その真意を深堀りしてみよう。

PHOTO/Yasuo Masuda、Shinji Osawa、Takahiro Masuda THANKS/葉山国際CC

解説/小林大介

日夜、世界のトッププロのスウィングを研究し、アマチュアへの指導経験も豊富。湘南衣笠ゴルフ所属

直ドラは球が上がらない
それが武器になる

4月にハワイで開催された米女子ツアー「ロッテ選手権」で、渋野日向子は積極的に「直ドラ」で攻めて、今季ここまで最高の2位という結果を残した。

国内男子ツアーでは、昨季に続きツアー2勝目を挙げた池村寛世が直ドラの使い手として知られている。最終日に最終組でプレーした昨年の最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」では、「ティーを使ったのはパー3とUTで刻んだホールくらい。ドライバーは全部、直ドラでした」と本人は語っている。“ティーショット”でも直ドラというのは驚きだが、プロにとっては、ときに直ドラが武器になるのだ。では、アマチュアの場合はどうだろうか。

神奈川県を中心にレッスンを行っている小林大介プロに直ドラについて聞いてみた。

「多くのアマチュアの方には、直ドラは球が上がらず、つかまりにくいので難しいというイメージがあると思いますが、それはプロにとっても同じで、球は上がりにくく、つかまえにくいです。でもプロはヘッドスピードもありますし、ミート率も高いので技術で打ちこなせます。アマチュアが直ドラで“ナイスショット”するのは、かなり難度が高く、確率も低いというのが現実です」とのこと。

やはりアマチュアが直ドラを武器にするのは無謀なことなのだろうか……。

「そんなことはありません。私が言ったのは、『ナイスショットするのが難しい』ということです。アマチュアが直ドラを武器にする場合は、ナイスショットする必要はありません」

んっ? ナイスショットしなくてもいいとは、どういうことだろうか。

「先ほど、直ドラは球が上がりにくく、つかまえにくいと言いましたが、このデメリットが武器になるのです。球が上がりにくいということは、低い弾道が打ちやすいということです。つかまえにくいということは、左へのミスが出にくいということです。つまり、ラウンド中に弾道の高さを抑えたい、あるいは左へ引っかけるのを防ぎたいという状況のときに、直ドラが武器になるということです。もちろんドライバーというクラブはティーアップをして打つことを前提に作られているので、芝の上にあるボールを打つには一定の条件があります。でも、3Wよりもはるかにヘッドが大きく、ソールも広いので、これを上手く利用することで武器にもなります。ナイスショットするのは至難の業ですが、ナイスショットしなくてもいいと思えれば、ラウンド中に直ドラが武器になるシチュエーションは、意外と多いのです。とはいえ、ドライバーは一番、長いクラブですし、パターを除けば一番ロフトが少ないクラブなので、そもそもドライバーが苦手という人は無理に直ドラを使う必要はないので、注意しましょう」


低い球で攻めたい状況では
直ドラが武器になる

アマチュアにも直ドラが武器になるという小林プロ。どんな状況なのだろうか。

「まずは打ち下ろしのホールです。打ち下ろしでボールを上げてしまうと、滞空時間が長くなるので、ちょっと曲げただけでも林やOBゾーンに行ってしまうことがあります。そんなときに直ドラを使えば、曲がりを抑えることができます。アゲンストのときも有効ですね。弾道が低いほうが風の影響を抑えることができるので、飛距離をロスしにくくなります。さらにこれからの季節、ラフが伸びるのでボールが浮いていることがあります。フェアウェイウッドやUTではフェースが薄くてダルマ落としのミスになることがありますが、フェースが厚いドライバーであれば、そういったミスを防ぐことができます」

なるほど、ラウンド中にアマチュアにも直ドラが武器になる状況は意外と多いのだ。

では小林プロが言っていた直ドラを使う条件について聞いてみよう。

「それはボールのライです。そもそもティーアップして打つ前提のドライバーを芝の上から打つわけですから、いくらフェアウェイとはいってもボールが沈んでいる場合はチョロする可能性も高いので、直ドラはおすすめできません。むしろセミラフなど少しボールが浮いている状況のほうが直ドラを使いやすいと思います。ライが悪いときは、直ドラは避けましょう」

直ドラが武器になるのはこんな状況

Case 1
打ち下ろし

打ち下ろしのホールでボールを上げてしまうと、曲がったときに滞空時間が長いだけに大きなミスになりやすい。低い弾道ならその危険性が少ない

Case 2
前方の木の枝が邪魔になる

距離を稼ぎたいけれど前方の枝がスタイミーになるという場合も、直ドラであれば枝を気にせずに打てることがある

Case 3
極端な左足上がり

左足上がりがきつい場合、ロフト以上にボールが上がってしまい飛距離をロスすることがある。こんなときも直ドラがいい

Case 4
左サイドにハザードがある

左サイドに池やクリーク、深いバンカー、浅めのOBゾーンがあるときはつかまりにくい直ドラが引っかけを防いでくれる

Case 5
アゲンストの風

向かい風のときは弾道が高いほど影響を受けやすく飛距離をロスする。風の影響を最小限に抑えるには直ドラが有効だ

ケース6
ラフでボールが浮いている

これからの時季、ラフが伸びるとボールが浮いてしまうことがある。フェースが厚いドライバーならダルマ落としを防げる

最後に直ドラをする際の打ち方のポイントを聞いてみた。

「大事なのはレベルに横から払うように振ることです。ただ、レベルに振るというと、ややあおり打ち気味になるアマチュアは多いので、上手く打てないのであれば、ほんの少し上からダウンブロー気味に打ってみてください。また、直ドラはコースでいきなり打っても上手くいかないことが多いので、必ず普段から練習しておいてください。直ドラは入射角を整える最高の練習法なので、スウィング作りにも役立ちます。ぜひ、試してみてください」

【打ち方のポイント1】
短く握る

ドライバーは一番、長いクラブ。芝の上から打つには少しでもミート率を上げたいのでグリップを短く握るのが正解

【打ち方のポイント2】
ボールは左かかと前

ボール位置を右足寄りにするとボールをクリーンに打てるがロフトが減ってしまう。左かかと前くらいがちょうどいい

【打ち方のポイント3】
レベルに横から払う

直ドラはあおり打ちだとダフりやすく、入射角が鋭角すぎると球が上がらない。レベルに横から払うイメージで振ろう

【打ち方のポイント4】
コンパクトに振り切る

直ドラはナイスショットの必要はないが、確実にボールはとらえたい。軸ブレが起きないようにコンパクトに振り切ろう

直ドラは入射角を整える最高の練習法

直ドラはコースでも武器になるが、入射角を整える練習法にもなる。レベルに振るには両肩を前傾角に垂直に回す練習(写真)をしてからトライしよう

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月5日号より