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【イザワの法則】Vol.17「飛ばしたいならまず方向性を高めるべし」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第17回。飛ばし屋のプロほど、沈み込む動作を使っているように見えるが、この「沈み込み」はアマチュアにも必要な動きなのだろうか

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

曲げないスウィングで自信を持って
振ることが飛距離を伸ばす近道

飛距離を出す方法にもいろいろありますが、最近だと、アメリカの某有名コーチが提唱するような、切り返しでグッと沈み込みながら下半身を回転させるスウィングが流行っていますね。沈み込むときに、足を「ガニ股」に開く、例のアレです(笑)。うまくタイミングが合えば、回転力と地面からの反力でヘッドスピードが上がる、という理屈はわかります。でも、平均スコアが90~100くらいの人がやるとどうなるか。タイミングを合わせるのが難しくて、1ラウンドに1回か2回、いい当たりが出たら「ラッキー」みたいな感じになっちゃうんじゃないでしょうか。


平均スコアが100前後の人であれば、飛距離を追求するよりもまず、ある程度の方向性を身につけるほうが先決だと思います。ゴルフというのは、打数をいかに少なくするかという競技です。飛ばしにこだわりすぎて曲げる人より、そこそこの飛距離しか出ないけれど曲がらない人のほうが有利です。中には、そんな安全策ばかりのゴルフじゃ「つまらない」と思う人もいるかもしれません。ですが、曲がらないスウィングを身につけると、ショットに自信がついてくるので、だんだん振れるようになるというメリットがあります。そうすると飛距離も伸びるので、コースを攻めるのが楽になって、スコアもよくなるという、いい循環が生まれるんです。

女子プロがいい例ですが、彼女たちは男性アマチュアと同じか、それより遅いヘッドスピードしか出ませんが、「曲がる」という不安がないからのびのび振れて、結果、飛距離が出ます。反対に、アマチュアのほうは、曲がる不安でスウィングが縮こまってしまい、飛距離も出なければ、ますます曲がってしまうというわけですね。

沈み込み動作が必ずしも飛距離に
つながるわけではない

ダウンスウィングでの「沈み込み動作=飛ばしの秘訣」かどうかといわれると、個人的にはあまり関係がないと思います。飛距離というより、球筋の問題ではないでしょうか。たとえば、私自身は沈み込むタイプですが、それは私が「フェード打ち」だからです。同じフェード打ちのダスティン・ジョンソンも、アドレスとインパクトでは頭がかなり下がっています。タイガー(ウッズ)も下がる方ですね。ドロー打ちの(ローリー)マキロイの場合は、それと比べると頭の下がり方が少ないです。ドローとフェードを打ち分けるタイプの、ジャスティン・ローズは、頭の位置はあまり変わらない……といった具合に、フェード打ちは頭が下がる(沈み込みが強い)傾向が強く、ドロー打ちはその傾向が弱いということが言えると思います。トミー・フリートウッドみたいに、ドロー打ちなのに頭がめちゃめちゃ下がるという、「例外」もたまにいますが(笑)。

アマチュアの場合は、頭が下がる人は少なくて、どちらかというと伸び上がってしまう人が多い。それは、ダウンスウィングで上体の前傾角度が起きてしまうからで、これは、右へのすっぽ抜けとか、ダフリの原因になります。起き上がり傾向の強い人は、スウィング中に、「ボールと目の距離を変えない」ことを意識してみてください。頭が前後にぶれなくなると、ミート率が上がるのを実感できると思います。

「飛ばすことも大事だけど、飛距離のメリットは
ある程度の方向性があってこそ」

インから入れすぎに注意

上体の前傾角度を一定に保って打てば、頭の高さがスウィング中ずっと変わらない(写真左)。プロがインパクトで沈み込むのは、下半身の強い回転に引っ張られるから。アマチュアは、前傾角度が起きてしまうので、頭の位置も上がってしまう(写真右)

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2022年4月号より