【マネジメント】2打先を見据える。“ダボを消す先読み術”を佐久間薫プロに聞いた
ゴルファーにとっての目標の1つ「90切り」。達成するにはダブルボギーは禁物だが……気づけば出てしまう憎き“ダボ”‼ これを撲滅するため今回は「2打・先読み力」に注目した。
どうすればダボに
なるかを知っておく
17歳11カ月という史上最年少で初戴冠した藤井聡太棋聖。いったい何手先を読んでいるのだろう、
と思ってしまうのだが――。
「将棋は相手あっての話。ゴルフはカップが移動することはないので、2打先が読めればダボを叩く
ことはありません」とは、滅多にダボを打たないという佐久間プロ。
「パー4における2打先は『3打目』。だからティショットを打つ前に、3打目を自分はどこから打
っているかを想像するといいんです」
また、コースは“手”を変えたりしないのだから、なぜダボになるか知っていれば怖くないという。
佐久間プロが指摘するパー4でダボになるパターンは次の3通り。
これが“素ダボ”の原因だ
①2オン4パット
②3オン「3パット」
③「4オン」以上
このうち③の4オン以上のケースを細かく分析すると、1打目のOB・2打目の池ポチャと1ペナ。2打目を打って木の裏・植え込み・バンカーの目玉・深いラフに入れる。2打目のチョロ・ダフリで3打目の距離が残る。アプローチを2回打つ。グリーン周りのバンカーから出ない。長いホールで林に入れる・横に出して距離が残る……などだという。
4オンの主な原因
•2打目が難しい状況・ライにいく
•長いホールで林に入れる・池に入れる
•3打目の距離が残る
•アプローチ、バンカーで2打
ダボの原因を知ることこそ2打先を読むことにつながる。原因がわかっていれば避けることができる。打つ前に2打先を想像して「どうしたいか」「でも、どこがイヤか」「だから、どうするか」の「3Dの法則」で自問自答するようにしよう
「いわばダボになるパターンの8割以上は『4オン』と『3パット』で、これは事前に2打先を読んで警戒すれば避けられるミス、つまり“素ダボ”です。言い換えると、ダボを打たない方法は、OBを避けると同時に、素ダボをなくして“パーパットを打つ状況”を作ること。パーパット外しのボギーになるように持っていけば、ダボになることは絶対ありません」
とはいえ、プロやトップアマでもダボを叩くことはある。「ショートアイアンでグリーン手前のピンを狙ってバーディを取りにいき、手前のガードバンカーに入るケース。これは“目玉”になることが多いのでダボもあります」
ここで、ダボの原因を知っていれば打つ前に「どうしたいか」を考え、2打先を見据えた判断ができる。
スタート前にやっておくべき”先読み“
ラウンド前日は、訪れるコースの全体図を見て全長や東西南北の方角を確かめよう。当日は車の中から煙突の煙の流れなどを見てコースに着く。それだけで上空の風を予測した攻め方ができる。また、スタート前には”ピンポジ“を確認すること.
「予選カットのある試合や、マッチプレーで相手が先にバーディチャンスにつけているケースはダ
ボ覚悟で臨みますが、皆さんはまず前述した“素ダボ”を打たないようにすることが肝心です」
そのために佐久間プロは「3Dの法則」を実践するように勧める。
1D:どうしたいの?
2D:でも、どこがイヤ?
3D:だから、どうする?
打つ前に、この「3Dの法則」を、2打先の状況を想像して自問自答しよう。前述のバンカー越えを例にとると…
①どうしたい? 「バーディを取りたい」
②どこがイヤ? 「バンカーの目玉」
③どうする?「ピンより大きめに打つ」。
“素ダボ”の根絶を目標に、ダボを打たない術を徹底検証しよう。
4オンにならないための
3打目を考える
では「4オン」をなくす、言い換えると3オンして“パーパットを打つ状況”を作るには、どうするとよいだろうか。それには、ホールの全長と、自分の飛距離がわかっていることが大事だと佐久間プロ。
「3オンするには、ティーショットの飛距離は、ホール全長の40パーセントはほしい。また2打を打
った時点で、全長の80パーセント地点に届いていることが望ましい。400㍎のパー4なら1打目が160㍎、あるいは2打を打ち終わった時点で(1打と2打の合計が)320㍎地点に届いているように。それなら3打目はピンの“ショートサイド”や“アリーナ席”(後述)に乗せられ、“パーパットを狙える状況”が作れます」
400Y・パー4の場合
400㍎もあるパーもありうる――それに必要なドライバーの飛距離が160㍎でよいとは、皆さんの多くが目からウロコではないだろうか。これは飛距離が出る人がレイアップする場合や、途中ミスが出ても「3オン」が狙える基準だ。ただし、4オンにならないためのマネジメントでは条件がある。
「距離の長いホールほど、フェアウェイキープが必須条件です。理由は、2打目で長いクラブを使え
ないと80パーセントの距離に到達しないから。長いホールで距離を出そうとしてドライバーを振り回し、深いラフや林に入れるのは、限りなくダボに近づく行為です」
フェアウェイウッドやユーティリティーの精度を高めることも、4オンしないためには必要なこと
だが、2打先を読むマネジメントでは、忘れてならないことがある。
「たとえばスタートホール。多くのゴルファーが緊張するでしょうが、そんなときは『ボギーでもいい』ではなくて、『ボギーがいいんだ』と言い聞かせて臨む。ヘンに欲を出すとミスが出やすい。決
して自分の実力以上の飛距離や技術を求めない。それがダボを叩かないマネジメントでは大事です」
前述の“ダボになる原因”をしっかり頭に入れつつ、何が何でもパーを狙う攻撃的な気持ちと、で
きることを確実にやる守りの姿勢。メリハリのある使い分けが大切だ。
【飛ばない人は「マイ・パー」を設定しよう!】
たとえばドライバーが130Yしか飛ばない女性は、400Yのパー4ではドライバーを3回打ってもオンしない。そういう人は事前に「マイ・パー5」に設定しよう。マイ・パー5なら、3打目を全長の80%までに運べばいいのでラクになる。
逆に、2打目でオンできる距離にティーイングエリアを移してドライバーを打つ手も。ゴルフは「パーを取るのが当たり前」のゲーム。パーやボギーを取り慣れると、ダボを叩かないマネジメ
ントが自然に身につく。
「警戒の警戒」をして
外しどころを考える
「3パットするのは、オンしてもピンから遠いところに乗るか、パットの距離感を合わせにくい場所
に乗るから。逆に言えば、2オンしなくても、限りなく2オンに近い場所に運べば、3オンしてうま
くいけばパー、悪くてもパーパット外しのボギーで上がれます」
そのキーワードが、佐久間プロがいう“ショートサイド”と“アリーナ席”だ(上記参照)。
「グリーンを狙うマネジメントで大事なのは、ピンのショートサイドかアリーナ席を狙うこと。アリ
ーナ席はグリーンの外側4~5㍎幅のエリアで、グリーン同様にパターやランニングアプローチで寄せられるので、悪くてもボギー、が計算できます」
しかし、ピンそばにバンカーや傾斜の急なラフがあるときなどは、反対サイドでもいいと割り切る。
「たとえばガードバンカー越えでピンが手前にあるときは、『バンカーに入れない』よう警戒するよ
り、『グリーンに乗せよう』と考える。遠くにオンして3パットしても、確実にダボは避けられます」
〇 グリーンセンター
ピンがどこでも安全。たとえばピンが端に立っている砲台グリーンの場合などもココを狙う
〇 ショートサイド
ピンに近いエリア。ピンが右にあるなら、ピンより右側がショートサイド
〇 アリーナ席
劇場などで舞台のすぐそば(本来の観客席ではないところ)に設ける特別席。ピンに近く、ピンと同じ高さにあり、パターやランニングアプローチで寄せられるエリア
✖ グリーン奥の上り・下り
グリーンオーバーは基本避ける。とくにグリーン面より高い・低いところは難しい。バンカー、OBや1ペナ区域にも注意を
✖ カート側のラフ
カートに向かって人が歩いているのでグリーンをこぼれると順目で大きく転がっていき、逆目からのアプローチが残って難しい
とはいえ、人間のやることなので、当たりがズレることがある。
「2打先を読む際は、ズレたとき、どっちにズレたほうがよいのか、いわば警戒の警戒をする。これよりも左へいくとヤバイというマイナス部分を消し、ショートサイドやアリーナ席にいくよう、“外しどころ”を考える。それがダボを消すマネジメントでは重要です」
ダボを叩かないためのワンポイントレッスン
高い球を打つ
ダボを叩く人の球は低い傾向にある。高い球を打つとき、ボール位置は左足寄り。フェースを開いて構え、ストロークの最下点を過ぎてヘッドが上昇軌道に入ったところで当てる。インパクトの手前で思い切り両ひじを畳むとよい。
左足上がりのアプローチ
グリーン周りで多い左足上がりのライで出やすいミスがザックリ・トップ。これを避けるには、ボールは左足寄りで普通に立ち、ひじを曲げて構え、曲げた両ひじをパンダグラフのように曲げ伸ばしし、ソールを斜面に沿って滑らせながら打つ。
50Yのアプローチ
右足前にボールを置き、体も腰も回さずロフトなりに当てる。ボールを真ん中に置き、体を回して打とうとするとダフリ・トップになり、当たってもグリーンオーバーの可能性が。とくにピンが奥の場合は、ライがよくてもピンを狙わない。
基本のバンカーショット
ダボを避けるにはバンカーショットを2回しないように。構え方はアプローチと一緒。ただ、インパクトでボールの下2センチにヘッドを通す。それにはひじをゆるめて構え、インパクトの手前で伸ばしながら振り抜く。決して上から叩かない。
PHOTO/Yasuo Masuda
TEXT/Kenji Takahashi
週刊GD8月11日号より
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