球を押せる、力が伝わる!「手元の低いインパクト」を手に入れよう
「インパクトで手を浮かさず、低い位置をキープ!」。どんなレッスン書にも必ずといっていいほど書いてある“標語”のようなキーワードは、アマチュアだけでなくプロにとっても大きな、いわば永遠のテーマ。わかっちゃいるけど止まらない、“手の浮き問題”を解決すべく、最新機器を駆使したコーチングが定評の黒宮幹仁コーチに聞いてみた
PHOTO/Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos THANKS/鹿沼72CC
解説/黒宮幹仁コーチ
ジュニア時代、石川遼や松山英樹らとしのぎを削ってきた経験をもとに、現在は松田鈴英はじめ、多くのプロのコーチを務める。測定機器を駆使し、最先端理論にも精通
そもそも手は浮くもの
「インパクトの瞬間、手は上昇している」と言い切る黒宮。となると、手は浮いてもいい!?
黒宮 いえ、手元を低くしたいのは間違いないですが、多くの方が『手の最下点はインパクト地点』だと考えていることが一番の問題。動画などで自分のスウィングをチェックしたとき、インパクトで手が浮くから無理矢理下げようとすると、手の急降下を招き、その反動で最下点を境に急激に上がり、結果、インパクトで極端に手が浮くのです。
GD むやみに手元を低くするのではなく、まずは一番低い位置を理解することが大事というわけですか。
黒宮 そうです。スウィングを3Dで見ると、手が最下点を迎えた後にヘッドが最下点に到達するので、インパクト時、手は上昇しているのです。たとえばこれを、飛球線後方からだけで判断しようとすると、どの位置で最下点か判断できない。手とヘッドが異なる軌道を描くから最下点の位置も変わるのです。
手が上がるからヘッドが落ちる
手先の調整なしに(リストコックを維持した状態で)ヘッドを最下点まで落とすには、左側屈を伴う手の浮上が必須。「ボールに向かって手を下げ続けると、そのままでは当たらないから、手先で“当てに行く”ことになり、最下点は不安定になります」(黒宮)
手元は右足前が最下点
GD 手元の最下点は?
黒宮 右足前です。このとき、おおよそシャフトが地面と平行な位置にあるのが理想ですが、ここから手元が上昇していくことで、ヘッドはボール位置で最下点を迎えます。ただし、最下点をイメージできたとしても、手が鋭角に下りると、インパクトで手は極端に浮くため、“手の緩やかな軌道”は必須です。そのためには、切り返し以降の体が動く順番も大切になってきます。手が緩やかな軌道を描くことによってヘッド軌道も緩やかになり、インパクトポイントが安定します。
GD なるほど。
黒宮 「そうすべき」というより理解することが大事です。
体の動く順番は回る>沈む>側屈
“当てに”いくと手が極端に上がる
インパクトで左手甲は下
右手甲は上を向く
黒宮 手の自然な上昇を伴ったインパクトは、(手の)最下点からインパクトにかけ、左手がアンコックされた状態で手の甲が地面を向き、右手はリストコックを維持した状態で手の甲が上を向いた状態をキープすることが重要です。アマチュアの方は、むしろこの逆になっていることが多いですね。たとえばダウンスウィングでリストコックがほどける方や、極端にトップが大きい方は、インパクトで右手は掌屈、左手は背屈しがちです。また、手と体の距離が崩れたり、頭が左右に動くと、手先で調整しないと当たらないので、このカタチを作ることはできません。
GD スウィング改造に、時間がかかりそうですね。
黒宮 レッスン自体は、とてもシンプルですよ。では、実際にやってみましょうか。
インパクトでこの形を目指そう
理想の形をつくる3ステップ
「このカタチができていない人が、いきなり作るのは難しいので、まずは段階的にやってみて、理解することが大切」と黒宮。手が極端に浮く人は、いかに間違えたことをしていたかわかるはずだ
手元が浮く人はこうなっている
●左手=甲側に手首が折れる
●右手=コックがほどけて掌屈
切り返し以降、早いタイミングでリストコックが解ける、いわゆる“キャスト”する人に多いインパクト時の手の形。「こうなると、ヘッドの最下点の手前に手の最下点は来ず、手も極端に上がりやすいです」(黒宮)
週刊ゴルフダイジェスト2021年10月19日号より