【通勤GD】迷ったとき、ユハラに帰れ! Vol.28 ペナルティは罰じゃない、救済です! 湯原信光 ゴルフダイジェストWEB
ゴルフにトラブルはつきもの。そんなとき、ます何を考えるか?「何が何でもリカバリーの発想よりも無事に脱出することを真っ先に考えるべき」と湯原。いかにもベーシックらしい答えではあるが…。「迷ったとき、ユハラに帰れ!」のVol.28。
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
前回のお話し
最悪を想定した選択が大事
GD ゴルフをしていてトラブルに陥ることって誰にだってありますが、そんなとき、仮にパー狙いだったホール攻略のプランを、ボギー狙いとかに切り替えなければなりませんよね。
湯原 いやいや、攻略プランの練り直しはトラブルを無事に脱出できてからの話ですよ。まずは、いま置かれている状況のなかでベストな選択は何かということを考えなければなりません。
湯原 まだ脱出もしていないのに「なんとかパーで上がろう」とか「ボギーで切り抜けよう」などと考えると、かなり無理のある選択をしてしまいます。その判断ミスが大叩きを招くことは、多くのアマチュアが経験しているはずだし、プロだって挙げればキリがないほどありますよ。
GD ギネスものの大叩き記録を持っているのは、立山光広プロですね2006年のアコムインターナショナルの初日、8番のパー3で19打(17オン2パット)を打っています。
湯原 あれは、ブッシュのなかから2打目を打つ前に最悪の事態を想定していれば、防げた大叩きです。
GD 最悪を想定した場合、どんな選択肢があったのでしょうか?
湯原 アンプレヤブルです。ところが、第2打目を打った瞬間に、その手が使えなくなってしまった。そこから大叩きに至ったわけです。たぶん脱出できると思って2打目を打ったのでしょうが、それが上手くボールに当たらず、ボールさえ見えないようなさらに深いブッシュヘ入ってしまったので、そこでアンプレヤブルの手が使えなくなってしまったんです。
GD アンプレヤブルのルールは…
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ペナルティはある種の救済
湯原 ひとつ付け加えると、プレーヤーの意思ひとつで、例えフェアウェイの真んなかにあったとしても宣言できる“球済処置”なのです。立山君の場合、2打目を打った瞬間に、打ったところに戻るにしても、そこはブッシュの中になってしまったわけです。2クラブレングスもブッシュのなかにしかドロップする場所がない。後方線上もずっとブッシュが続いていたのでノーチャンスだったのです。結局、闇雲に打つしか方法がなくて19打も叩いてしまいました。
GD もし、2打目を打つ前に、アンブレヤブルを宣言して、ティに戻る処置をしていれば、OBと同じ扱いですかfら、プロならダブルボギーぐらいで納まっていたかもしれませんね。しかし、我々ゴルファーは、ペナルティというと、何かとっても損をしたような気持ちになってしまいます。
湯原 ゴルフのペナルティの多くは、罰というよりも救済の要素が大きいのです。だって、ウォーターハザード(現在はペナルティエリア)に打ち込んでプレーを続けられますか?
GD 基本的にはペナルティを払わずにプレーを続けるのは無理ですね。
湯原 OBもそうです。深い谷底のブッシュのなかとか、木が密生している山の斜面とか、そこからプレーしなくてはならないことになったら大叩きは必至です。そう考えると、そこがOBになっているのは、やはりある種の救済なんです。
湯原 本来は、あるがままの状態でプレーするのがゴルフの大前提であるところを、たった1打のペナルティで、トラブルに陥る前の状態に戻れるのですからね。
GD 確かにそのとおりですね。しかし一方で、OBゾーンにわずかに入っているけれど、明らかにボールが打てるのに……なんて思いをした人も、かなり多いと思いますよ。
湯原 プレーが可能な場所なのに、そこをOBゾーンにしているコースは、個人的には「ゴルフ文化としてどうなのかな」と疑問を感じます。進行を早めるとか、危険防止とか理由はコース側にいろいろあるのでしょうが、本来は「プレーに適しているか適していないかを判断するのはプレーヤー1個人であるべき」ですからね。
どんなプレースタイルでやるのか決める
GD 最終ホール、とくにいいスコアで終わりそうなときにトラブルに遭遇したら、やっぱりちょっと無理をしたくなるものではないでしょうか?
湯原 イチかバチかのギャンブルが成功すれば自己ベストという場面などですよね。人間には欲望があるので、そういう気持ちになるのは理解できます。しかし、所詮ギャンブルはギャンブルなんですよ。
湯原 1ラウンド18ホールあっても、すべては1打1打の積み重ねであって、トラブルはそのどこで起きても取り戻せない場面なのです。だから、それが1番で起きようが18番で起きようが、致し方のないことと割り切って、最善策を考えるべきです。
GD 中部銀次郎さんは「すべてのストロークは等価だ」といっていました。
湯原 結果を考えれば、中部さんのいうとおりで、どの場面でも“1打は1打”なのです。その重さに変わりはありません。ラウンドを振り返ってみれば、「もったいなかったな」「あれが入っていればな」などと思うことはたくさんあるはず。それを今後の経験値とすることが大切なんです。
GD トラブルからのリカバリーの上手さといえば、かつてのセベ・バレステロスを思い出しますね。
湯原 セベは、ドライバーを真っすぐ飛ばすのがあまり得意ではなかったので、トラブルになってしまうことが多かった。でも、それをきちんと経験値として蓄積できていたから上手かったのです。それは、タイガー・ウッズにも同じようなことがいえます。
GD 確かにタイガーはフェアウェィキープ率もトータルドライビングも米ツアーのなかであまりいい数字は出していませんね。
湯原 いくら強い選手であっても、何から何まで上手いというわけではないのです。しかし、トップクラスの選手は、その弱点を経験値でカバーしています。「トラブルをどう考えれば最小限のダメージで留めることができるのか」という観点から話してきましたが、実のところ、それはあくまで建て前論なのです。
GD 建て前論といいますと……?
湯原 成功する確率が五分五分という場面でも、あえて安全策を選ぶ人もいるでしょうし、1割程度の可能性しかなくてもギャンブルに打って出る人もいます。それは、人それぞれのプレースタイルだし、特にアマチュアは、ギャンブルに出たとしても、失うものといったら、その日のスコアだけです。だから、「どんなスタイルがゴルフをやっていて楽しいか」というところが肝心になってくるのです。
GD 成功したり、失敗したりを楽しみながら、それをいかに経験値として蓄積できるか、ですね。
湯原 例えば、SWでも50ヤードぐらいしか飛ばせないほど深いラフに入ってしまって、手にはセカンドを打ったときの5Wしか持っていない。キャディさんは遠くにいて呼ぶのも悪いので、5Wでフェースを開いて、短く持って打ってみたら、結果はSWと同じで50ヤード前進できた。そんな経験がある人は、きっと大勢いると思うのですが、その経験をどう評価するのかなのです。
GD 「これは次に似たような場面で使えるな」と思えば、今後の経験値にプラスされていくということですね。
湯原 「今日は一日徹底的に刻む」とか「今日は一日チャレンジし続ける」といったテーマを決めて遊ぶのも、コースマネジメントのバリエーションを増やす方法になります。そういうなかから自分のゴルフスタイルが生まれてくるはずです。
週刊GDより
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