【イザワの法則】Vol.9 「攻めにくいホールを乗り切る方法とは?」
世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第8回。誰にでも、ティーショットが打ちづらいホールや、何となく苦手なホールはある。プロは、苦手ホールにどう対処しているのだろうか?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
ティーショットをドライバーで
打たない明確な「理由」がある
ティーイングエリアに立ったときに、「打ちにくい」、「気持ち悪い」というホールはあります。気持ち悪さの原因が、ある程度わかっている場合もあれば、とくに具体的な理由もなく、ただ「何となく気持ち悪い」ということもあるかもしれません。
たとえば、自分がスライサーで、右サイドにOBゾーンがあれば、気持ち悪いのは当たり前です。この場合、十分に左サイドを狙っていくとか、少しでもスライスしない番手で打つとか、具体的で効果がありそうな対処法は、いくつか考えられます。ところがほとんど真っすぐで、ホール幅、フェアウェイとも、それほど狭くないホールなのに、人によっては「気持ち悪い」と感じることもある。この場合は有効な対処法が見当たらないので、気持ち悪くてもフェアウェイ目がけて、とにかく打っていくしかないんですね。そのときにできる、自分のベストで立ち向かうしかないということかもしれません。
プロがティーショットでドライバーを使わない場合、そういう「気持ち悪さ」が原因のときもありますが、大抵はもっと具体的な「理由」があります。たとえば、250ヤード地点を過ぎてから急にフェアウェイが狭くなるといったケース。平均飛距離が260ヤードくらいのプレーヤーは気になりませんが、平均280ヤードのプレーヤーだと、少し気になるので、3番ウッドで刻むという感じですね。
ティーショットだけのことを考えると、少しでも不安があったらドライバーをやめて、別のクラブで打つというのは、非常に有効な戦略と言えます。ただし、ドライバーを使わないということは、2打目以降の残り距離が長くなるということなので、その部分との兼ね合いも必要になってきます。私の場合、ドライバーで打って、2打目がエッジまで180ヤード残るというホールの場合、ティーショットを刻むのは少し悩みます。残りが200ヤード以上になっても、フェアウェイに打っておくほうがいいのか、それとも頑張ってドライバーを真っすぐ飛ばすほうがいいのか。これは、スコアとか、順位とか、そのときの状況によって答えが違ってくるような気がします。
スウィングレベルを底上げする
ことが苦手ホール対策になる
でも、米PGAツアーを観ていると、「そこで刻むの!?」ということが時々あります。刻むと200ヤード以上残るホールで、グリーンの手前がずっと池なのに、刻む人が多かったりします。DJ(ダスティン・ジョンソン)ならわかるんですが、(ジョーダン)スピースも刻んだりするから不思議です(笑)。実際にティーイングエリアに立ってみないとわからない、何かがあるんでしょうね。
私自身が、今まででいちばん「苦手だな」と感じたホールは、オーガスタ(オーガスタナショナルGC)の9番かもしれません。ティーショットは打ち下ろし、セカンドからは打ち上げの左ドッグレッグで、縦長の3段グリーンのホールですが、ティーショットをいい感じのフェードで打つと、ちょうど右のラフにかかるかどうかのところに落ちるんです。それなら、もう少し左から打てばいいと思うかもしれませんが、両サイドの木が高いので、ルートが狭いんですね。今、思い出してもちょっと難しい感じがします。
自分のホームコースに苦手ホールがあるとしても、おそらく18ホールの中の1、2ホールだと思います。ですから、そのホールの対策として何か特別なこと(持ち球と逆の球を打つ練習をするとか)をする必要はないと思います。それより、全体のスウィングレベルを上げる努力をするほうがいい。それと、ティーショットを刻む、刻まない、の判断は、「気持ち悪い」からではなく、具体的な理由に基づいて行うべきで、一度「このホールは刻む」と決めたら、あまり変えないほうがいいと思います。
「米PGAツアーのトップ選手は
ドライバーで打つ人もアイアンで刻む人も
確固たる信念をもってショットしている」
【イザワの対策】
目標に対してスクエアにセットする
「苦手意識」によってアライメントが狂うことはよくある。苦手ホールほど、ルーティンに従って、目標に対してスクエアにセットアップするということを徹底することが大事だ
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2021年8月号より