カットに打つからミスになる。スピンが効く! 距離が合う! ドロー回転アプローチ
PHOTO/Hiroaki Arihara
「アプローチはカットに打つ」皆さんそう思い込んでいませんか? もちろんプロはカットに打つこともありますが、実はドロー回転で打ったほうがピンに寄せやすいという。“ドロー回転アプローチ”を推奨する伊澤秀憲プロに、打ち方をじっくり教わった。
解説/伊澤秀憲
いざわ・ひでのり。1991年生まれ神奈川県出身。石川遼の相談役でもありよき理解者。アマチュアにもレッスンをおこなう。叔父は伊澤利光
GD アプローチはドロー回転で打ったほうが距離感が合うとのことですが、そもそも“ドロー回転”という発想がまったくないのですが……。
伊澤 カットでももちろん打ちますが、ドローのほうがミスが少なくなおかつピンに寄る。実はこれ、プロでも使う技術、しかも意外とカンタンなんです。ドロー回転のアプローチの特徴は、入射角が緩やかになりインパクトゾーンが長くなることです。上下の打点のミスが少なくなり、毎回同じ球が打てるんです。なので、とにかく距離感が合わせやすい。
GD なるほど。ただ、ドローだと球が強くなりそうです……。
伊澤 その心配は無用です。フェースにボールが乗る時間が長くなるので、しっかりスピンが入りますし、手首を返してドローをかけるわけではないので、飛びすぎてしまう心配はしなくていいんですよ。
ドロー回転アプローチがおすすめな理由
【理由1】入射角が緩やかになる
インサイドからヘッドを入れるので入射角が緩やかになる。上から打ち込まず、横から払うため、インパクト時のブレが小さくなる
【理由②】インパクトゾーンが長くなる
点ではなく線でボールをとらえられるので、インパクトゾーンが長くなり、打点が安定する。フェースにボールが乗る時間が長くなり、スピンもしっかり入る。
【理由③】当たり負けしない
カットにいれるアプローチと違い、切るように当てないのでラフからでも当たり負けしにくい。フェース面の向きが変わりにくく、一定のスピン量が保てる。
スピン量が一定だから距離感が合わせやすい!
まずはアドレスをチェック
「手元の位置は左わきの下が正解です!」
左手をだらんと下に垂らしたところが手元の位置。右手をそこに添えるように握る。ボール位置は真ん中にセットし、ハンドファーストになった分だけフェースは開く。スタンスをオープンにすることで、フォローでクラブをインに振り抜きやすくなる。
ポイント2. フェースは目標よりやや右に向ける
ポイント3. スタンスはオープンに
ヘッドが「おうぎ」を描くように振ろう
GD ではドロー回転をかけるには、具体的にはどうすればいいですか?
伊澤 まず、覚えてほしいのは、「ドロー回転はスウィング軌道で作る」ということ。上から見たときに“おうぎ形”になるように、イントゥインで振ります。弧を描くような軌道で振ることで、ドロー回転がかかります。
GD インサイドからクラブを入れるということですね。
伊澤 そのとおりです。クラブが体から離れないように、一定の距離を保って振るようにしましょう。体から離れると、おうぎを描けません。またフォローでは左手でクラブを引っ張る意識を持つと、スムーズにインに抜けていきます。
軌道でドロー回転をかけるために、上から見たときおうぎ形になるように振る。イントゥインを意識して、アドレスでセットした手元の位置(左わき下)を支点と考えて振るといい
伊澤 引っ張るといっても、体の正面からクラブが外れてはダメですよ。大事なのは、短い距離でも体の回転で打つこと。手先だけでも打ててしまいますが、それだと軌道が真っすぐになりやすい。背骨を意識して振ることで、軸のブレも防げますし回転するイメージも湧きます。体とクラブを同調させて回転することで、きれいなおうぎを描くことができるんです。
おうぎ状に振るためのポイント
【ポイント①】体の近くにクラブを通す意識を持つ
スウィング中、グリップが体の近いところを通るように振る。真っすぐ引くと、体から離れていきおうぎを描けない
【ポイント②】背骨を中心に体を回転させる
距離が短くても、体の回転は忘れない。体とクラブが同調するように振る。背骨に軸を意識すると、軸を中心に回転できる。軸自体をブラさないように注意したい
【ポイント③】左手でクラブを引っ張る
フォローでもインに振り抜くため、クラブを引っ張る意識を持つ。ピンに向かってボールを出したい気持ちが強いと真っすぐ動きやすくなるので注意
【ドリル】ヘッドの後ろに物を置いて打ってみよう!
おうぎ状の軌道を作るために、飛球線後方に物を置いて打つ。物に当てないように上げることで自然とインサイドに引くことができる
フォローで左手の甲を空に向ける
伊澤 ドロー回転で打つためには、スウィング軌道に合わせて、フェース面の意識も大切です。
GD フェース面の管理ということですね。
伊澤 フォローでフェース面が自分に向いていればOKです。手首を返して、フェース面が見えなくなるのは間違い。フェースを返してドローを打ちたくなりますが、それでは球足が強くなり、距離感が合いません。
GD では、具体的にどうするのですか?
伊澤 左手と右手に分けて考えてみましょう。まず左手の使い方ですが、インパクトからフォローで左手の甲を空に向けるように動かします。ロフトを立てるように使うのではなく、球を持ち上げていく感覚です。次に右手の感覚ですが、インパクトでボールを包み込むようなイメージで打ちましょう。横からやさしく包み込んでいくのがいいと思います。カット軌道になると上から切る動きになり、フェース面の向きがばらつきます。
【ポイント1】フォローでフェース面が自分を向く
フォローではフェース面が自分を向くのが正解。自分からフェース面が見えないのはNG。フォローでは球を上に上げるイメージを持つ
【ポイント②】ボールを包み込む意識で打つ
右手はボールをやさしく包み込むイメージで打つ。横から払っていく感覚。カット軌道になると、アウトからこする動きになりスピン量が不安定になる
クラブを上から入れないから柔らかくスピンのきいた球になる
ピンが近いときもドローでOK?
GD ピンが近かったらさすがにドロー回転のアプローチは使わないですよね?
伊澤 いえ、ピンが近いときでもドローは使えます。基本の打ち方にひと工夫するだけで、カットで止めるアプローチよりもカンタンに寄せられるんですよ。ポイントは2つです。1つめは、アドレスでソール全面を芝にくっつけること。2つめは、ヘッドが地面をするくらい低くテークバックすることです。フェースに乗る時間が長くなり、よりスピンが入ります。フェースを開いているぶん球も高く上がるのでピンが近くても問題ありません!
基本的なドロー回転アプローチより、さらに入射角を緩やかにするために、テークバックで地面を擦るくらい低く引く。フェースに乗る時間が通常よりも長くなりスピン量が増える
【構え方のポイント】ソール全体を芝につける
基本のアドレスを作ったら、そこからソール全体が地面につくくらい、フェースを開く。最大限バウンスを使えるので、カットよりもカンタンに打てる
【打ち方のポイント】地面すれすれにヘッドを通す
ヘッドの位置は低くを意識。入射角をより緩やかにしたいので、基本のスウィングよりも、イントゥインの度合いは強くなる
週刊GD2020年10月20日号より