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【イザワの法則】Vol.8 「曲がりに悩むより、曲げを極めるべし」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第8回。ボールを「真っすぐ」飛ばすのがいいと考えるアマチュアに対して、プロは「曲げる」ほうがいいという人が多い。その真意とは?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

フェードを選んだ理由は
圧倒的にケガが少ないから

アマチュアの人は、どういうわけかボールが「曲がる」ということに強いアレルギーがあって、初心者ほど完ぺきに「真っすぐ」な球じゃないと満足できないという傾向があるような気がするんですが、読者の皆さんはどうでしょうか。私からすると、ボールが一定方向に曲がっている分には、これほど安心なことはないですし、どんなホールも、基本はボールを「曲げて狙っていく」ものだと思っています。だから、「持ち球」を決めることは大事です。

「伊澤と言えば“フェード”」というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実は高校まではドローを打っていたんです。それを、大学に進学したくらいのタイミングでフェードに変えました。理由は、その頃の道具とボールだと、ミスになったときにドローのほうが「ケガ」が大きくなると感じていたからです。

ドローを打っていると、1試合に数回、どうしてもチーピンが出ちゃうのですが、試合のレベルが上がるほど、その「数回」が命取りになるんですね。その点、フェードなら、よほどの大ミスをしない限り、OBまで曲がることはないですから。「安定感」ということでいえば、もうフェードしか選択肢がないくらいの感じでした。幸い、飛距離は出るほうだったので、球筋を変更してもそれほど大きな問題はありませんでした。もちろん、状況に応じて、どちらも打てるようにしておくことも必要です。バッバ・ワトソンみたいに、どんな場面でも100%、フェードだけで何とかするという強い意志があれば別ですが(笑)。

曲げる動きをしてどのぐらい曲がるのか
練習場で見極めよう

どうやって持ち球を決めるかですが、これはダウンスウィングで、クラブがインから下りやすい人はドロー、反対にアウトから下りやすい人はフェードが合っていると言えます。アマチュアのおそらく8~9割の人はアウトから下りるので、フェードを持ち球にするほうがいいということです。もし、ドローを持ち球にしたいということであれば、まず、クラブがインから下りるように、スウィングを直すのが先決でしょう。

クラブがアウトから下りるタイプで、持ち球がフェードでも、18ホールのうち1~2回程度なら、ドローに対応できるとは思います。ただし、そういう人が練習もなしに、いきなりドローを打とうとすると、インに引っ張り込んで、「引っかけドロー」になりやすいので注意してください。反対に、持ち球がドローの人がフェードを打つ場合には、プッシュスライスになりやすいです。よく行くコースで、どうしてもドローのほうが攻めやすいホールがあるというフェード打ちの人は、練習のときにそのホールを想定して、ドローの動きを予習しておくといいでしょう。練習場で体に動きを覚えさせておくと、本番でも経験を積むことでコントロールできる球になっていきます。

ところで、最近のボールはめちゃくちゃ直進性が高いので、「曲げようと思っても曲がらない問題」というのがあります。とくに、強いフックを打つのはかなり難しいです。曲げる体の動き(スウィング)をして、実際はどのくらいボールが曲がるのか、それを見極める場所は、「練習場」以外にありません。これをやらずに、本番でいきなり「曲げる」のは、私なら怖くてとてもできません。アマチュアは「曲げる」練習をしないので、体の動きと球筋の関係について、理解できていないケースが多いように感じます。たとえば、スライスしか出ない人は、思い切りフックを打つ練習をしてみるといいかもしれません。結果、「こんなにやったのに(フックを打つ動きをしたのに)、真っすぐ飛んだ!」となるかもしれません。つまり、そのくらいスウィングを変えないと、スライスから脱却できないことがわかるというわけですね。

「アイアンも真っすぐ狙うのは9番から下だけ。
8番より上は必ず曲げて攻める」

インから入れすぎに注意
ドローを打つには、クラブをインから下ろすことが必須だが、ヘッドがインから入りすぎるとプッシュアウトしやすいので注意

伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2021年7月号より