【“曲打ち”から生まれる感性のゴルフ】<後編>奥田靖己「遊び球、ムダ球を打たんと上達しません」
週刊ゴルフダイジェスト
悩める2人のプロ、加藤龍太郎と木下彩に、奥田靖己がオフ合宿を敢行した。ゲストは「日本アーティスティックゴルフ協会」会長の小島謙太郎。前編に続き“曲打ち”を使って行うというこの合宿に密着。
PHOTO/Tadashi Anezaki TEXT/Masaaki Furuya THANKS/南紀白浜GC


奥田靖己
おくだ・せいき。1960年生まれ、大阪府出身。85年プロ入り。93年の日本オープンを含むツアー通算6勝。シニアでも1勝。本誌『ゴルフはつづくよどこまでも』も好評連載中

木下彩
きのした・あや。99年生まれ、山口県出身。18年プロ入りの“黄金世代”。ステップ・アップ・ツアー2勝。23年、ぺブルビーチでの全米女子オープンでは13位タイに!

加藤龍太郎
かとう・りゅうたろう。93年生まれ、岡山県出身。トップジュニアでナショナルチームにも在籍、13年プロ転向後、下部ツアーを主戦場として戦う。昨年、自己最高位の3位タイに
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- 悩める2人のプロ、加藤龍太郎と木下彩に、奥田靖己がオフ合宿を敢行した。ゲストは「日本アーティスティックゴルフ協会」会長の小島謙太郎。“曲打ち”を使って行うというこの合宿に密着。 PHOTO/Tadashi Anezaki TEXT/Masaaki Furuya THANKS/南紀白浜GC 奥田靖己 おくだ・せいき。1960年生まれ、大阪府出身。85……
奥田 龍太郎とは20年前からの付き合い。中学のときに初めて見た。当時からロブショットは自然に上手くできとったよね。
加藤 関東の大学に行って奥田さんとは疎遠になり、プロ転向後は次第に自分のゴルフがわけわからなくなって。それで昨年、奥田さんに相談していろいろ見てもらうようになりました。
奥田 龍太郎は彩プロとゴルフのスタイルが違う。彼女はドローヒッターやけど彼はフェードヒッターだから。やったほうがいい“曲打ち”も違うんです。
加藤 僕はスライス系で止めるのは得意なんですけど、フックで強く飛ばす練習もしたほうがいいといつも言われています。
奥田 彩プロはネリー・コルダと同じく“ねじ回し”の動きが入っていると言うたよね。ヘッドは勝手に動く(ターンする)というけれどそんなもんは回さんと動かない。この動きがアマチュアの人にはまったくない。ただクラブヘッドを下ろした、当たった、だけで話をしていて、この“ねじ回し”で球が飛ぶということを知らんわけです。プロは無意識にやっていて、龍太郎もそうなってはいるけど、この動きをもっと自然にできるようにするには、スライス、フックを連続で打ち分ける“2球連続打ち”がエエ。
加藤 難しい。僕、スピードもちょっと遅いですよね。
奥田 これは動きにムダがあったら遅くなる。一発打って、体を戻してまた、構えて打って、としているとものすごく時間がかかるんです。でも、ヘッドだけが回ってくると早く打てる。1発目が落ちるまでに11球打つ、小島くんなんかそのくらいできるな。
加藤 僕は5球でも無理かもしれません。
奥田 慌てて打たんでも、ポーン、ポーンでエエ。龍太郎は打ち方を細かく考えすぎている。すると固まってしまうから“反射的”に打つ練習になるようなものもエエと思う。小島くんが得意やけど、バックスウィングは普通に上げて行って、“切り返しのときに球筋を指定する”打ち方がある。
加藤 めっちゃ難しいじゃないですか。
小島 ドローとフェードだけならまだ簡単ですけど、ローとハイが入ると難しくなりますね。
奥田 これ、ボケ防止にもちょうどエエかもわからん。アイアンよりドライバーのほうが円が大きいから時間稼げるのでラクかな。龍太郎にもう1つやってほしいのが“駆け抜ける喜び”やな。これはアドレスで固まっている人にも有効で、スタンスの位置も決めずにただ駆け抜けて打つというもの。僕が最初にやったら志門さんから「駆けて来て止まって打つんやなく、駆け抜けながら打つんや」と。「そんなら先生やってください」言うたら、昭和の映画の『八つ墓村』のシーンのようやった。鉢巻きに蝋燭を立てて刀を抜いて村人を切って走っていく恐ろしいシーン(笑)。そのイメージでダダダダときてバシーンと打った。それ以来、僕は“八つ墓村”と言っている。
加藤 それ、本当に僕もやるんですか(笑)。なかなか当たらない……3回目で当たりました。
“八つ墓村打ち”
ティーイングエリアの外から駆けてきて、そのまま打って駆け抜ける。「当てようと思うと、走り方がぎこちなくなったり、合わせにいったり、脳がガチガチになったりします」(加藤)
奥田 まあまあやな。『八つ墓村』は龍太郎の地元、岡山の津山で実際にあった話やからね。
木下 実際に今、飛んでましたよ。
加藤 確かにアドレスで固まらないし何も考えないからいい。一回も止まらずに動き続けてクラブをスムーズに動かすという練習になります。ゴルフって動き続けて打つことも大事。普通に打つときも体のどこかを動かしているほうがいいから。動くことで思考を“バグらせる”ことができる。キッチリ、ガチガチといったゴルフのネガティブな部分が消えます。

「やわらかく球を上げるんがとにかく上手いんですわ」(奥田)
フェースを開いて使うことが得意だというフェードヒッターの加藤。「ボールを右目に置いて、右体重のまま開いて低いところからフワッと上げる感じです」
奥田 さて、このホールのティーショットは「ロードロー」でいこう。ティーマークに「当ててなん
ぼ」くらいでいい。実際に昔、当てたことあるし。
小島 では「青玉狙い」で。
奥田 ほら、「当てるぞ」いう感じがあるとやる気も出てくる
小島 完璧な球でした。
加藤 では僕も、当てます! 低い球を打つときに「青ティーに当てにいく」ことですごいひらめきがあった。これは試合でも使えます。
木下 私、持ち球はドローなんですけど、意識して打とうとすると打てないんですよね。
奥田 打とうとするんやなく、青玉を狙えばいい。あと、龍太郎は、ショットは全体的に70点くらいまできているけど、もう少しリズム感だけで打ちたい。まだスライスもドローも“作った”という丁寧さがある。もっと“思えばなる”という感じで打ったらエエわ。
加藤 “思えばなる”ですか。まだちょっと丁寧すぎるから動きも硬いんでしょうね。
奥田 そうやな。スライスを打つときは、左のOBゾーンに「入ってまえ!」と思って打つと、しっかりしたスライスになる。気持ちの保険が入るとスライスの厚みが変わってくる。これを試合でやらんとあかん。
加藤 左がOBのとき、左のOBを避けて大きく右に打つというのが普段の試合で98%くらいのパターン。それを「左のOBに行け」と思うことで結果的に軽めのフェードになる。これも試合に直結します。

「サンドウエッジ1本でいろいろ打てないとパーは拾えない」(小島)
「アマチュアの方は1ラウンドで4ホールでもパーオンすればいい。だからこそ、使える“曲打ち”を身に付けたほうがスコアはよくなります」
奥田 2人とも曲打ちから何かをつかんだんやないかな。リー・トレビノが81年にカシオワールドオープンで優勝したとき、僕はまだ学生で18ホール付いて見た。最終組の優勝争いで、彼は右ピンはスライス、左ピンはフックと、全ホール曲げて攻めて、それで断トツの優勝をした。あの人にとってはそれが普通なんやろな。そういうゴルフもあるんやと思った。
小島 今の選手は、真っすぐ系かどちらかの持ち球一辺倒というタイプ、多いですよね。
奥田 スコア至上主義、遊び心がないからキチキチなんやろね。もちろん、やり易い、やり難いということはあるから、偏りはあっていいんやけど、それはクルマが一方のタイヤに荷重かけて傾いて走っているようなもんで、たまに片方のタイヤも使わないと均衡が取れない。もちろんプロは成績も出さんといけない。でもせめて5パーセントでいいから普段の練習に“曲打ち”などの遊び球を入れて欲しいんです。それが試合でも使えると思ったら、使ってみて欲しいんです。
小島 僕がレッスンをするときは、まずは楽しくゴルフをしてほしいんです。“曲打ち”って楽しいものですよ。それに、なぜこういうボールになるのか、どうやったら打てるのか、など自分で考えるようになるんです。上達の一歩です。
奥田 スウィングチェックにもなるし、己を知ることにつながってるんやと思います。
加藤 たとえば“2球打ち”をすると考えると考える時間がない。そういうことを通して、自分のゴルフがすごく硬くなっていたことがよくわかりました。悩んでいた時期はスウィング面で細かいテーマはあったけれど、普段自分が考えていたことは、どっちでもいいんだなと。奥田さんのいろいろな言葉はすごい。奥田さんの頭の中をもっと知りたいです。
“2球連続打ち”でムダな動きなし
手前の球を少し左目、ティーは高めに置き、真ん中に構えて打つ。「フェード、ドローを同時着弾させるイメージ。一発目は遅い球、二発目は速い球で打つ。動きにムダがあったら打てないけど、2球目のトップの間は大事」(奥田)
木下 アプローチで“卍固め”や“カマキリ”にトライしたり、いろいろな技を増やしていただけた。アプローチは普通にやってもダメだから、あれくらい大げさにやらないとできないこともあります。フェアウェイを外すことが多いアマチュアの人こそやってみるべきだと思います。今まで左足下がりなんかが苦手だったんですけど、実際に打てるようになりましたし。遊び心を大事にしながら、これからは試合でもできたらいいなと思います。
小島 奥田さんの考え方、コースマネジメントなど、言葉にたくさんヒントがあるんですよね。
奥田 何でもエエから1回は扉を開けることが必要。「こんな世界があるんや!」いうことをやってみればいいんです。




遊びながら学ぶラウンドを終え、何より楽しそうな4人のプロたち。「皆さんも、真面目にルーティンをして、1球10円のボールを後生大事に打つだけでなく、遊び球、ムダ球を打たなあかんのです。まずはやってみなはれ!」(奥田)
週刊ゴルフダイジェスト2026年3月17日号より


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