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ミスの原因は“目”にあった!?<後編>「両眼視」をマスターするとスウィングが劇的に変わります

ボールを見る、ターゲットを見る、ラインを読む……プレー中のあらゆる場面で使っている「目」。しかし「見る」ことが当たり前で無意識であるがゆえにそこにエラーが生じていても、人はそれに気づけない。正しい「目の使い方」を学んでゴルフに生かせればあんなミスやこんなミスが解消できるかもしれない!

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Norimoto Asada、Shinji Osawa ILLUST/Shinichi Hoshi THANKS/エンジョイゴルフスタジオ&パッティングラボ福岡

解説/迎将徳

むかえ・まさのり。1998年生まれ、自衛隊出身の異色コーチで、福岡の「エンジョイゴルフスタジオ&パッティングラボ」で指導を行う。ビジョンアセスメントトレーナー

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両目を均等に使うトレーニングが必要

では利き目依存の状態を解消するにはどうすればいいのだろうか。

「利き目依存の状態は、利き目ではないほうの目の機能を自ら妨げている“抑制”状態といえます。この抑制を除去し、両目を5対5に近い状態で使う『両眼視』を身に付けるトレーニングをすることが有効です」 

迎コーチの指導するビジョンアセスメントでは、長さ50㎝前後のヒモの3カ所にビーズを付けた道具を使ってトレーニングを行うという。このヒモを持ってピンと伸ばし、両目の真ん中、眉間の前から真っすぐ水平に伸ばして両目で真ん中のビーズを見る。

「両眼視ができていないと、まずこれを顔の真ん中にセットできず、基本どちらかにズレます。ヒモとビーズの見え方としては、真ん中のビーズを交点とした『X』字状に見えればOK。利き目依存の状態だと『逆V』や『y』に見えますが、両眼視できるようになるとヒモを正しい位置にセットでき、ちゃんと『X』に見えるようになります」


このトレーニングは、ツアーで活躍する出水田大二郎プロや天本ハルカプロも実践しているという。 

紐を使ったトレーニングと並行し、利き目を閉じたままボールを打ったり利き目をふさいで散歩することも、利き目でないほうの眼から視覚情報を取り入れることに慣れるために有効だという。

「両眼視に慣れてくると、視野が広がってくれるので、いままで見えていなかった領域が見えるようになり、ものの見え方がガラッと変わります。平衡感覚や距離感がよくなるので、構えのバランスもよくなり傾斜などの察知力もアップするうえ、視機能の抑制によるスウィングの阻害もなくなります。あまりに劇的に変わるせいで体の運動機能と馴染むのに時間がかかるので、選手にはシーズンオフから始めるように指導するくらいです」

左右均等で見られるのが理想

ものを見るときに利き目に依存せず、左右5対5に近い「両眼視」を身に付けることが理想。一般的には8~9割を利き目に頼っているので、利き目でないほうの目を活性化させるトレーニングが必要だ

Step 1
紐を水平に持ち、真ん中のビーズを見る

紐の両端と真ん中に目立つ色のビーズを付けた器具を使う。紐の長さは、片端を顔の前に、もう片端を腕を伸ばして持ってピンと張れる長さ

Step 2
紐を水平に持ち真ん中のビーズを見る

紐を目の高さで水平にし、眉間の前から真っすぐ伸ばして持ち、真ん中のビーズを両目で見る。手前側を正しく両目の真ん中に置くことが重要

Step 3
紐がX状に見えれば両目を使えている証拠

真ん中のビーズを交点とした「X」字状に見えるように練習する。利き目に依存していたり紐を正しくセットできていないと「逆V」や「y」に見える

利き目をつぶって打ってみよう!

左目利き バックスウィング側の視界が広がりヘッドを目で追うスウェイが起きにくい
右目利き フォロー側の視界が広がりインパクト前後でのヘッドアップが防げる

「真っすぐな線」は
利き目に頼ろう

ゴルフに両眼視が重要なのはわかったが、それでも利き目の存在を消すことはできない。実際、利き目の存在自体は悪ではなく、プレーのなかでは利き目に頼ることが必要な場面もあると迎コーチは言う。それは「直線」を見るときだ。

「ゴルフは目標を狙うことが目的の『ターゲットスポーツ』なので、ターゲットに対する真っすぐなラインをイメージする場面は数多くあります。ボールの後ろから目標を見てターゲットラインをイメージしたり、パッティングの際にボールの線を合わせるときなどです。このときばかりは両眼視で立体的に見るよりも、片目で正確な直線をイメージすることが重要なんです」

両眼視は、前述のように1本の線を「X」字状に見る。これは明確なターゲットラインをイメージするうえでは弊害になる。ターゲットを見る際は、むしろ片目をつぶって利き目だけで見るほうがいいのだ。 しかしこのときも、多くのアマチュアは目の使い方がアバウトなせいで、方向にズレが出ているケースが多いという。

「重要なのは、イメージしている線の真後ろに利き目をセットすること。ターゲットラインが体の正面=顔の真ん中だと利き目は横にズレるので、ターゲットラインを横から見ている形になります。必ず利き目、シャフト、ボール、そしてターゲットが一直線上に並ぶようにセットしてください」 

パッティングでボールのラインをセットする場合も同じだが、これは実は難易度が高く、ある程度練習しないと真っすぐセットできるようにはならない。しかも利き目の影響でほぼ必ず左か右にズレるものなので、最初に置いた段階ではズレていることを前提に、パターのシャフトを使ってそのズレを正す練習をすることが重要だという。 

ボールの線を真っすぐセットする方法

①利き目だけでボールの線を合わせて置く。②一度ターゲットから視線を外し、ボールの線の上にシャフト縁(利き目側)を合わせる。③シャフトを持ち上げつつ視線を上げ、ターゲットを向いているかチェックする

こうやって目の機能について知ると、よく見るレッスンワードのなかには「見え方」を指摘したものも多く、利き目を考慮するとそのまま鵜呑みにできないものが多いことに気づく。次にいくつか例を挙げてもらったので、自分の利き目を考慮したうえで、「その見え方でいいのか」を再確認してみよう。

要注意レッスンワード①
ボールの右側を見ろ!

右目利きなら自然だが、左目利きの人の場合、体の右への傾きがキツくなりバランスを崩しかねない

要注意レッスンワード②
頭を動かすな!

右目利きの人はバックスウィングでボールが見えにくいので、無理に頭を固定するのは危険

要注意レッスンワード③
ボールの行方を追うな!

右目利きの人はフォロー側の視界が狭いので無理に見ないようにしすぎると可動域によっては体の回転を阻害することも

要注意レッスンワード④
ドライバーのボール位置は左かかと前

同じボール位置でも利き目で見え方が違う。左足かかと前に“見える”位置が正しいとは限らない

目から入る情報を増やす眼球トレーニングも有効

目から得られる情報量を増やすためには眼球運動のスムーズさも大事。以下のような眼球トレーニングで、とくに利き目でない側の動きを改善することが視機能アップに有効だ。

顔の前に腕を伸ばして親指を突き出して、腕を左右に動かす。その親指の先を顔を動かさずに目だけで追う

左右に突き出した両手の親指を、顔を動かさずに目だけでキョロキョロと交互に見る

月刊ゴルフダイジェスト2025年9月号より