【イザワの法則】Vol.57 “曲げる”練習をしたほうが間違いなく早く上達します
伊澤利光「イザワの法則」
プロが思った通りに球を曲げられるのは、経験則によるものか、それとも物理的な計算によるものなのだろうか。アマチュアの場合、プロのように球を曲げる技術は必要なのだろうか?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
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- ゴルファーなら、「素振りみたいに振れたらいいのに」と思ったことが一度はあるだろう。では仮に、練習を「素振りだけ」にしたら、ボールを打つより早く上達するのだろうか? TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM) >>前回のお話は……
現代のドライバーは
フェードは打てるがドローは難しい
昔は「ゴルフは曲げて覚えろ」なんて言われて、球を曲げる練習をよくしたものですが、最近はそういうやり方をしているゴルファーは少なくなっているのかもしれません。昔の道具はよく言えば「曲げやすい」、悪く言えば「真っすぐ飛ばしづらい」ものでしたから、どうせ曲がるなら最初から曲げて打てばいいというのは、案外、合理的な方法だったんだと思います。今の道具は昔よりはるかに「曲がりにくい」ですから、それをわざわざ曲げて打つのは、あまり意味がないと感じる人も多いでしょう。
確かに、アイアンはともかくとして、今のドライバーで昔のプレーヤーみたいな「でっかいドロー」を打つのはちょっと難しくなっています。なので、ドローヒッターでも「ほとんどストレートだけどちょっとつかまってる」という感じの球筋の人が多いですね。もちろん、(ローリー・)マキロイみたいな例外もいますが……。逆にフェードは割と打ちやすいので、PGAツアーでフェードヒッターの飛ばし屋が増えているのは、ある意味、当然のことと言えるでしょう。
アマチュアの方の中には、曲げたくたって自分の技術じゃ「曲げられない」と思っている人がいるかもしれません。ですが、そういう人でも、実は無意識に球を曲げて打っていることがあります。ただそれに自分では気づいていないということですね。
「雰囲気」で意外とボールは曲げられる
たとえば、普段はスライスしか出ないのに、右のOBが気になるホールで突然フックが出ることはないでしょうか。これは、「右に打ちたくない」という潜在意識に、体が勝手に反応して左に打ってしまう現象ですが、別の見方をすると、意図的に左に打つ体の動き自体はやろうと思えばできるということです。ある程度クラブが振れる人なら、何となくの「雰囲気」で、こんな感じに曲がったらいいなと思って打つと、意外とその通りに曲がったりします。むしろ、アマチュアはそういう「雰囲気」インテンショナルが大事。ただ、ひとつだけ確かなことは、曲げる練習をしたほうが、「早く上達する」ということです。
球が曲がるメカニズムを理解するということは、真っすぐ打つにはどうすればいいかもわかるということです。それに、コースをプレーしていると、ただ真っすぐ打つだけでは攻略できないシチュエーションが必ず出てきます。そういうときに、状況に合わせて球を曲げられれば、余計な打数をかけずに済みます。
プロは普段からコースで起こり得る様々な状況を想定して、練習場でシミュレーションをしています。もし30Y曲げなきゃいけない状況に遭遇したとして、実際にそれだけ曲げたら縦の飛距離はどれだけ落ちるのか、高さはどうなるかといったことを、番手ごとにやるわけです。ですから、「イチかバチか」に見えるショットでギャラリーが沸いても、打った本人は「何が?」ということも多いということですね。
「ウェッジで強めにフックをかけた場合、
キャリーのプラス分とバックスピンによるマイナス分の計算が難しい」


「曲がる」を理解すると「真っすぐ」もわかる
ドローもフェードも曲がりが大きくなれば、その分キャリーと飛距離は落ちてしまう。そこで、普段なら7番で届く距離だとしても、曲げ幅によっては6番や5番で打つ必要が出てくるということ(写真は6番アイアンの大きなフェード)

伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2025年8月号より


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