Myゴルフダイジェスト

会員登録
  • ホーム
  • レッスン
  • 【目澤秀憲の目からウロコ】アプローチは上から? 横から? 世界のトップコーチでも意見が分かれるスティープvsシャロー論争の解答は?

【目澤秀憲の目からウロコ】アプローチは上から? 横から? 世界のトップコーチでも意見が分かれるスティープvsシャロー論争の解答は?

目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。今回は番外編として、ショートゲームにフォーカス。「トラックマン」などの弾道解析機器は、ショットだけでなくショートゲームにも技術革新をもたらした。その進化を深掘りする。

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos

目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える
永井直樹 タイトリストボーケイウェッジコーチ。男女両ツアーでプロの悩みに応える。目澤秀憲コーチの弟子にあたる

ジョー・マヨが
起こした論争とは?

――今回は、数年前からゴルフ界でホットな話題になっていて、目澤コーチ自身も「目からウロコ」の体験をしたという、アプローチの技術を取り上げようと思います。特別に、目澤コーチと関係が深い、ウェッジコーチの永井直樹さんにも参加してもらいます。

目澤 日本ではあまりピンとこない人が多いかもしれないけど、とくにアメリカでは少し前から、アプローチに関して「スティープvsシャロー」の論争みたいなことが起こっていて、その決着はまだついていない感じだよね。

永井 ビクトール・ホブランがフェデックスカップチャンピオンになったときに、コーチをしていたジョー(ジョセフ)・マヨに注目が集まって、それがきっかけですね。

目澤 マヨは「スティープ派」の代表みたいな人物で、SNSや有料のチャンネルでとにかく「AoA」(アングル・オブ・アタック=入射角)はスティープにしたほうがいいと発信し続けてる。実際、試してみるとスピンはかかるし、ライを選ばないし、と基本的にはいいことしかない。


●アプローチを弾道計測器で徹底解析●
有名ショートゲームコーチであるジョー・マヨは、「トラックマン・マエストロ」とも呼ばれる人物。その名の通り、弾道計測器を使ったアプローチのインパクト条件の解析から、PGAツアーのグリーンにどうやってボールを止めるかを追求し、「ローポイントをボールの先に」、「入射角はスティープ」という結論を導き出した。コーチを務めたビクトール・ホブランの活躍で、一気に知名度が上がった

永井 「スティープ」というと、ヘッドを上からドカンと落とすみたいなイメージを持つ人が多いと思いますが、そうじゃなくて「ローポイント」(スウィングの最下点)を左にずらすというのがポイントですよね。そうすると、相対的に入射角が鋭角になるという。

目澤 それにマヨは「ロフトを立てろ」(シャフトを目標方向に倒す=ハンドファースト)とも言っているから、「それだと刃が刺さっちゃうんじゃないか」と思うけど、ローポイントをボールの先に持っていくことで刺さらないんだよね。ボールだけクリーンにヒットできる。60度のウェッジで10度くらいシャフトリーン(ハンドファーストの度合い)を入れて、12~13度スティープに打つと、低めに飛び出してギュッと止まる球になるのが、初めて試した人はみんなびっくりすると思う。

永井 インパクトロフトと入射角でできる「スピンロフト」の効果ですね。いわゆる「ツアーチップ」という打ち方。PGAツアーでよく見る技術になりましたが、もしかして上手い人は昔からやっていたんでしょうか。

目澤 多分そうだと思う。理屈がわかっていなくても、感性でできていたプレーヤーは多いと思うよ。

欧米のプロやコーチがよくやるこのポーズは「スピンロフト」を示している。上に向いているのは「ダイナミックロフト」(インパクト時のロフト)で、下に向いているのは「入射角」。両者の差(数値の合計)が大きいほど、スピンがかかる。理論上、スピンロフト「65度」がスピン量増加のピーク

永井 スピンロフトとローポイントの仕組みがわかってくると、「何であの球で止まるの!?」みたいな技術が、「ああ、そういうことか」って理解できますね。

目澤 アマチュアでも偶然に出ることがあるけど、低く出てめっちゃスピンがかかった球を、狙って打てるようになる。

永井 唯一の弱点は、ロフトを立てて打つから出球が強くなってしまうことでしょうか。

目澤 その点は、「シャロー派」がよく言うことだよね。シャロー派の代表は、「ショートゲームシェフ」の名前で活動している、パーカー・マクラクリンで、彼は「ローポイント=インパクトポイント」、「バウンスから接地させる」というやり方だから、マヨとはかなり違う。

永井 結局、どっちがいいんでしょうか?

目澤 この間、JJ(タイトリストのツアーレップ、JJヴァン・ウィーゼンビーク氏)に聞いてみたんだけど、彼は「どっちでもいい」って言ってたね。もっと大事なのは、「インパクトでクラブが手よりも前にあること」だとも言ってた。それさえできていれば、打ち方はいろいろあってよくて、どんな打ち方でもフィットするように、「ボクたちはたくさんのグラインド(ウェッジのソールの削り方)を用意しているんだ」って。

ツアーには「スティープ派」も「シャロー派」もいる

スコッティ・シェフラー(写真左)やジョーダン・スピースは入射角が鋭角な「スティープ派」、ウィル・ザラトリス(写真右)やキャメロン・スミスは入射角が緩やかな「シャロー派」。ただし、状況に応じて使い分ける。「パーカーのセミナーに参加した際、厳しいライではスティープに打っていた。マヨも有料チャンネルで、天性の『レベルチッパー』がいて、それもひとつのやり方と言っていました」(目澤)

月刊ゴルフダイジェスト2025年7月号より