「レベルブロー」を極めよう<後編>低く長いインパクトを身に付けるポイントと3つのおすすめドリル

ドライバーが曲がる、アイアンが飛ばない、ミスヒットが多い……ゴルファーのこうした悩みを解決するポイントが「レベルブロー」だと辻村明志コーチは言う。後編では、切り返し以降のポイントと、効果的な練習法について教えてもらった。
PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki THANKS/鎌ヶ谷CC


解説/辻村明志
1975年、福岡県生まれ。日大ゴルフ部出身。上田桃子ら多くのプロを指導してきたツアープロコーチ。プロ転向後、アジアンツアーを転戦。プロコーチの第一人者・江連忠にレッスンの基礎を教わる。王貞治氏を育てた故・荒川博氏を師と仰ぎ、その指導法を学ぶ。2023年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
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切り返しは脱力がカギ
イメージ通りのテークバックができたら、今度はトップからの切り返しだ。
「切り返しで大切なことは脱力のみです。力を抜くことでいいポジションにクラブが下りていくからです。逆に言えば、手でクラブを操作した時点でヘッド軌道はバラバラになります。ボクが見ている選手たちによくやらせるのが、クラブのネックに水の入ったペットボトルをぶら下げ、トップからの切り返しを意識させるドリルです。
ヘッドの重さを感じながらフッと力を抜くと手元は真下へ落下します。この動きを体に覚え込ませるんです。全身のエネルギーを使ってテークバックしたら、あとは切り返しで脱力するだけ。これでレベルブローインパクトの準備は完了です」
Drill
ネックにペットボトルをぶら下げヘッドの重さを体感
「500mlのペットボトルに水を半分くらい入れ、ひもを使ってネックにぶら下げます。ヘッドの重さが増すので手元を落とすイメージがつかめます」

Point 1
切り返しで脱力。手元をスッと落とす

「水の入ったペットボトルをクラブのネックにぶら下げるとヘッドの重さが増し、重力に合わせて手元を落下させる感覚がつかめます。切り返しでは力を抜くこと。この動きをイメージしましょう」
Point 2
前傾姿勢を維持し体を下に向ける意識

「ヘッド軌道を乱すのは、手の動きだけじゃありません。前傾姿勢も大きく影響します。体の面は常に下を向く意識を持ちましょう。前傾を保つことでレベルブローなインパクトが可能になります」
レベルなインパクトゾーンはお腹で作る
仕上げはインパクト。ここでどれだけ水平な時間を作れるかが最後のピースとなる。
「前述した通り、インパクトは一瞬ですからあれこれできるものではありません。ここで意識してほしいことはひとつ。それがお腹を回せです。ボクの指導では上半身(肩や胸)、下半身(ひざや股関節)は意識させません。体の中心であるお腹を回すだけです。基本的にヘッドが水平に動くレベルブローは、体の回転でしか作れません。
体重移動や手元をスライドさせる動きでも作れますが、それだと再現性は低いです。お腹を回す動きなら肩は開かないし、足を使わないので軸もブレません。お腹に意識があれば前傾は起きにくく、インパクトでボールを強く押し込めます。レベルブローならプロのような分厚いインパクトが可能です。これができればショートアイアンで15Yくらい一気に飛距離が伸びるはずです」

●インパクトのポイント1 左肩を開かない
「左肩が開いたり、上がったりするとヘッド軌道がブレます。ヘッドをレベルに動かすには、左肩が開かないことが絶対条件です。お腹を回せば、肩の開きは簡単に抑えられます」
●インパクトのポイント2 お腹を回す
「ハーフウェイダウンからインパクトで意識するのは、お腹を回すことだけです。お腹の回転でレベルブローを作るくらいのイメージです。グッとお腹を締めながら回しましょう」
●インパクトのポイント3 足で地面をつかむ
「インパクトで足を使うとひざが動き、軸がブレやすくなります。足は地面をつかむイメージがベストです。竹とんぼを回すみたいに瞬間的に左足を踏み(力を入れる)、あとはお腹を回すだけです」

●フォローのポイント1 体のアングルを変えない
「インパクトは点ではなくゾーンですから、インパクト後のヘッドの抜け方も重要です。体のアングル(前傾姿勢)が変わらなければ、レベルブローな時間も長く保てます」
●フォローのポイント2 クラブは体の正面に
「腰から腰の振り幅(ビジネスゾーン)では、クラブは体の正面に保ちます。テークバックで説明した腕の三角形をキープした状態です。手のムダな動きが抑えられます」
●フォローのポイント3 フェースはいつでもスクエア
「今のスウィングでは、フェース面の開閉はほぼ意識しません。いつでもスクエアの感覚が理想で、軌道に対して常にスクエアが保てる人ほど、上手い選手と言えます」
レベルブローを極める3つのドリル
最後に、レベルブローなインパクトを手に入れるための練習法を教えてもらおう。
「レベルに振るためのドリルはたくさんありますが、今回は3つ紹介します。一番のおすすめは、ウェッジで飛ばすことです。ロフトが寝たクラブで飛ばすには、低く長いインパクトが不可欠。どうすれば飛ばせるのか? 自分の体で見つけ出しましょう」
Drill 1
サンドウェッジで飛ばす

「女子プロの場合、サンドウェッジで80Yを目指します。芯で打つことが重要ですが、それだけでは飛ばせません。ボールを押す、エネルギーを伝える、その感覚を見つけ出します」
Drill 2
スプリットハンド打ち

「スプリットハンドの素振りや球打ちは、チーム辻村の定番ドリル。フェース面の管理や体の正面でクラブを扱う感覚が身につきます。ターゲットラインに合わせて棒を置けば、軌道も整います」
Drill 3
目をつぶってボールを打つ

「目をつぶってボールを打つドリルはアマチュアに最適。インパクトが消えるのでムダな力みがなくなり、軌道も軸も自然に整います。見えないからこそ、いろいろなものが感じられるはずです」
週刊ゴルフダイジェスト2025年6月3日号より