【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.27 薄芝でもザックリしない! バウンスが生きるアプローチの打ち方とは?

アイアンとドライバーの最下点を意識することでショットがみるみるレベルアップし、安定してきた谷繁。そして自ら「弱点」と言い切るアプローチのレッスンに突入。特にスコアメイクのカギを握るパー5の3打目の引き出しを増やしたいという谷繁。バーディーチャンスにつけられるか、一転ボギーのピンチとなるか……勝負の一打を徹底練習。
PHOTO/Tadashi Anezaki

青木翔 1983年福岡県生まれ。2017年渋野日向子を全英女子オープン優勝に導いたコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。ジュニアから一般アマチュアまで幅広く指導。「六甲国際ゴルフアカデミー」校長
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- ドライバーショットで上体を突っ込まないようにするためのドリルを伝授された谷繁。ドリル効果で下半身が使えるようになると、ショットに安定感が出てきた。“生き球”連発で「今の見た?」と調子に乗るレジェンドキャッチャーだが、落とし穴が……。 PHOTO/Tadashi Anezaki 谷繁元信 1970年広島県生まれ。88年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ入団。02年中日ドラゴンズに……
ダウンブローに入れて
ソールを滑らせるテク
谷繁 ついにアプローチレッスン。正直苦手なのは青木さんも知っているよね。で、まずは素振りをして、グリーン周りの薄芝から何球か打ってみました。
青木 素振りの時点で怪しい感じはしていましたが、いきなり立派なチャックリ。「よーし、これはやりがいがあるぞー」って思ってしまいました(笑)。
谷繁 だって芝生がないんだもん。
青木 そう言うのはバウンスが使えていない証拠ですね。バウンスってわかっています?
谷繁 もちろん。ウェッジのソールの丸い部分ですよね。
青木 そこを芝に当てて滑らせたいわけです。
谷繁 当てましたよ。
青木 当てた気になっているだけです。谷繁さん、まずボール位置が右過ぎました。それで、手ですくい上げていただけです。本来、バウンスはダウンブローに当てれば当てるほど利いてくるはずなんです。谷繁さんはボールを右に置いてシャフトを傾けたまま、バウンスを殺して打っている。そりゃあ、リーディングエッジが突き刺さりますよ。
谷繁 えー、そんな感じになってた? ロフト殺し谷繁!?
青木 まず即効レッスンです。ボールを先ほどより左寄りに置いて、クラブの最下点を意識してポンと下ろしてみてください。ウェッジの最下点はボールの前面辺り。
谷繁 すると、すぐにいい球が出だしてびっくり。バウンスの使い方を勘違いしていたよ。滑らせるっていうから、ダウンブローに入れるなんて思ってもみなかった。払い打ちするような感じがソールを滑らせることだと思っていたよ。
青木 夏場の深いラフで球が浮いている場合はそれが有効なときもありますけどね。でも、夏でも芝がぺシャンと平らになっている場合は違って、やっぱりボール位置を左にしてダウンブローに打つのが正解。
谷繁 これ、すごく簡単にできる。もう冬芝アプローチ、怖くないじゃん。ちょっと、こういうことはもう少し早く言ってほしいんだよなあ(笑)。
青木 小出し作戦です(笑)。
谷繁 ちょっと噛んでしまってもバウンスが生かせているから、大ミスにならないね。
青木 薄芝時のお助け機能としてひとつ引き出しに入れてください。

ボール位置をやや左寄りに意識し、ダウンブローに打つ。冬芝や夏でもぺちゃんこの芝などで有効なワザ
谷繁 じゃあ、このボール左寄せダウンブロー、砂が交じった薄芝ライでも使える?
青木 砂が入ってくると話が違ってきて、こういうケースではできればUTでアプローチしてほしいんですけど、今回はウェッジでの対応法を。以前教えた吊り打ちが有効なんです。
谷繁 そのワザは覚えています。クラブを吊り気味に打つんですが、ウェッジでもアリなんですね。
青木 そうです。吊り気味にするだけで、打ち方はダウンブローでOK。
谷繁 これもいい感じ。グリーン周りの引き出しが、今回のレッスンで2つも増えた。
青木 あとは実戦で、どううまく引き出しを開けるか、ですね。
谷繁 適切な引き出しを開けるのはまさにキャッチャーの仕事です。僕は基本的にはピッチャーの投げたい球を投げさせるスタンスでしたが、配球を組み立てていくなかで、その場その場で一番適切だと思う球種を要求します。
青木 でも要求に首を振られることもありますよね?
谷繁 あります。僕のサインに最も多く首を振ったピッチャーは多分、中日ドラゴンズ時代の浅尾拓也かな(笑)。浅尾の球は順位付けすると真っすぐ、フォーク、スライダーの順ですが、こちらが選択しない球種を選ぶことが多かったです。あいつの場合は、インスピレーション型というか野生の勘というか……。いや「不思議ちゃん」でしたね(笑)。
青木 ゴルフでは自分で選択した引き出しを自分の意思で開けるので、その点ではラクでは?
谷繁 首を振られないのは個人競技の醍醐味ではありますね、確かに。
週刊ゴルフダイジェスト2025年3月25日号より
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