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【飛ばし対談】奥田靖己×松本一誠<後編>「イチ」で構えて「ニー」で上げて「サン」で下ろす。これが結論です

“ワザ師”奥田靖巳と、“ドラコン王子”松本一誠。まったく別のスウィング理論かと思いきや共通点がたくさん! そこにゴルフの大事、魔法の「間」があるのです。

TEXT/Masaaki Furuya PHOTO/Yasuo Masuda

奥田靖己(右)……1960年大阪府出身。18歳でゴルフを始め85年プロ入り。93年の日本オープンを含むツアー通算6勝。シニア1勝。「ゴルフはつづくよどこまでも」連載中
松本一誠(左)……1992年神奈川県出身。小5でゴルフを始め杉並学院高卒業後、研修生を経てレッスンプロに。23歳でドラコン競技に出合い、すぐに頭角を現す。最長429Y

>>前編はこちら

「急」を生むためには
「緩」が大事

奥田 一誠くんと話していて、これもうちの流儀と通じるところがあると思ったんは「振り子」やね。

松本 僕が所属するJPDA(日本プロドラコン協会)の松谷伸二プロが「クラブはすべて振り子運動なんだ」と提唱していて、僕も本当にそうだと思うんです。振り子が頂点から戻る揺り戻しのときに、力をどれだけムダなく伝えて加速させるかが飛ばしのポイントです。このとき、自分で振り子を加速させてしまう人がほとんどです。

奥田 トップから打ちにいく、自己動作というやつね。うちの流儀の技も、振り子が入ってないとできないんです。スウィングのなかに緩急がないとあかんし、球自体にも緩急をつけないとあかん。それがないと距離感が出ない。

松本 ポイントは「緩急」。「緩んで」いるところから「急」に加速する。そのときに、受け止めているか受け止めていないかということが一番大事だと思います。

奥田 その受け止めることがないんが、さっき言ったトップからいきなり打ちにいくいうことやね。

松本 そうなんです。いい例がブランコです。こいで頂点に達して勢いがフッと抜ける「緩」のときに背中で「受け止めて」、そして押すと加速して「急」になる。スウィングもブランコのように「イチ、ニ」のタイミングで上げて下ろせばいいだけ。そして、その間にクラブを受け止める「間」がある。この「間」がない人は、ブランコをこいで頂点に届くか届かないかのときに背中を押してしまい鎖がガシャガシャとなってしまうように、ダウンスウィングの勢いがそがれ、軌道も乱れます。先ほど奥田さんがおっしゃった「打ち急ぎ」です。


奥田 その「間」なんやけど、僕のなかでは、「クラブを感じる」「クラブを探す」時間いう感覚です。クラブが来たな、重たいなーっていうんを感じます。

松本 「間」を感じたいなら、簡単な方法としてはトップで一度止めて、そこから振るという練習。松山(英樹)選手みたいに止まってから振るんですけど、思い切り打つのではなく、ピタッと止めてから、ゆっくり振って芯に当てて50ヤードくらいを打つ練習です。止めてからゆっくり振ることで「間」が感じられると思います。

奥田 うちの流儀の場合は上へ上げたときに、音を立てずに「棚の上にクラブをポンと乗せる」感じと言ってます。音立てたらあきませんよ。音を立てずに静かに乗せるというのが大事でっせ。

「野球でボールを投げるときも、ゆっくり振りかぶって『緩』から『急』で腕を振る。走るときもずっと力んで走る人はいない。スタート直後は『緩』から次第にスピードに乗って『急』でトップスピードになります」(松本)

松本 トップで止めた後、次にどこから振り始めるかというタイミングの話ですけど、皆、早くボールを打とうとするからテークバックでクラブが右腰くらいにきた辺りから打とうとする。僕の場合はトップで受け止めて、ダウンスウィングに入るところから、です。

奥田 一瞬やね。

松本 はい。ドラコン世界一になったドイツ人のマーティン・ボーグマイヤー選手に、「ダウンスウィングはグリップエンドを体に引き付けるように下ろしているのか」と聞くと、「全然違う」と。外側に向けて下ろすと。加速距離を稼ぐためにそうして振るんだと言う。「クラブにテンションがかかった状態を長くして下ろしてきて、最後に解くというのが一番飛ぶよ」と言われました。トップで「間」を作れたら、ダウンからボールを直接打ちにいくのではなくて、シャフトのしなっている時間を長くするようにクラブを下ろしてくる。するとエネルギーがヘッドに溜まって飛距離が出るというのが僕の考えです。さらに簡単に言うと、「イチ」で構えて、「ニー」でクラブを上げて、トップで受け止めて、「サン」で下ろす。これが結論です。

奥田 3拍子の1、2、3やないね。「イチ、ニー、サン」なんよね。「ニー」が少し長い。

松本 そこが奥田プロと共通しているところだと思います。奥田プロは1日500回素振りをしてツアーで勝たれた方なので、こういう話にすぐに反応してもらえます。

奥田 僕も研究するタイプなんですよ。ただ、うちの師匠に、ダウンスウィングはどうなるのか聞いたら、「フェラーリで時速300km出して走っているときに10円拾えるんか。知るかそんなもん」と。要は、やってるほうは知らんでもええいうことです。

松本 そう思います。僕は教える側だから全部理解しておかなければいけない。でも、細かいことをすべて伝えても難しいからアマチュアの人には簡単に「イチ、ニ―、サン」と言っているんです。

奥田 それはものすごくわかりやすいね。

トップで1秒止まる意識を
持つだけで飛距離が上がる?

松本 飛ばしには「タメ」も「間」も必要と言われますけど、「タメ」に比べて作るのが簡単だから、僕は「間」をおすすめします。軽くて軟らかいドライバーを振ってみると自動的に「間」を理解できる。

奥田 軟らかいクラブを振るんはいい練習になるからね。グニャングニャンのクラブを1本持っておくとええと思いますよ。

松本 実は僕がドラコン界で一番軟らかいシャフトを使っています。

「僕のドラコン用のクラブはロフト2.5度で、シャフトはレディス用より軟らかいフレックス『Z2』です」という松本。ちなみに普段のゴルフ用はロフト10度でシャフトは6X

奥田 タイミングで400ヤード飛ばすんやから、すごい技術です。僕なんかは「イチ」、「ニー」で、ココやと思ったら勝手にクラブは来ますけど、多くの人はトップで待つ前に、「スライスせんかな」「ダフらんかな」「あそこに飛ばす」と瞬間的に思うとる。それで「間」を感じる前に打ちにいくんです。

松本 今まで通りのトップで「間」がなく打つときと、トップで意識して「間」を作って振ったときの秒数の差を計るといいですよ。

奥田 感覚とデータで探っていくということやろね。

松本 それで秒数に差が出ないときは、だいたいの人が、「イチ」、「ニサン」と、「ニ」と「サン」の間がなくて止まっていない。その場合は、トップで1秒止まる意識を持つようにしてみてください。それだけで飛ぶようになる。それで飛距離が伸びない方は1~2割。「イチ、ニー、サン」のタイミングで振れてきたら自然とHSは上がってきます。

奥田 僕が一番効果が出たんは、並んで一緒にやる素振り。あれは体のなかに入りました。最初はHS40で振る、次は50、最後は60と徐々に上げていく。

松本 「シンクロリケーション(同期する)」といって、速い人と泳いだり走ったりすると自分も速くなる。飛距離アップレッスンではよくやるんですけど、レッスンを受けている方の目に焼き付けるため、大げさにその動作を見せます。それを同じようにやっていただくと自分のなかに落とし込める。

奥田 一緒に3回素振りして、「はい、そのまま打ってください!」と球を打つと本当に伸びる。素振りだけで十分。一誠くんの素振りの音が耳にこびりつくから。対面で向き合ってやると、リズムや速さがイメージで全部入ってくる。

松本 ドラコンプロをレッスンするときなどは、僕のほうが速いHSが出るように軽い練習器具を振る。それで、同じスピードで振ってもらうとHSは上がります。

「感じることが難しい『間』も、一緒に素振りをするとめちゃめちゃわかります。一誠くんがトップで待ってる間に、アマチュアの人やったらブン! と振り終わってるかもしれんね」(奥田)

奥田 限界を超える感じやろね。

松本 はい。でもそれをHS30くらいの人の前で振っても効果がない。だいたい僕が相手よりプラス10くらいの関係が一番効果が上がります。

奥田 脳が追い付こうとするんやろね。

松本 これは僕ではなくても、自分よりHSが速い人とやると効果はあります。

奥田 アマチュアの人でも飛ばし屋のなかで回ると飛ぶようになる。逆に80歳のおじいちゃんとばかり回ってると距離は落ちます。環境が人を育てます。あと、スウィングスピードを20%、40%、60%、80%と段階的に上げていく練習。あれもうちの基本の練習にあります。20ヤード、40ヤード、60ヤード……最後はフルスウィングに持っていく。それとまったく同じ。

松本 あの練習のポイントは、スウィングの幅的にはあまり大きさを変えずに、テークバックの力感や下ろすときの力感を意識し、体幹をブラさずに、スピード感を変えていくということです。

奥田 ゴルフって必ず155ヤードとか、間の距離が残るからね、こういう練習は大事です。

松本 はい。もう一つこの練習の目的があって、人間は、速い速度のもので物事を理解することは難しい。自分のMAXの50%でやってみて気付くことは多いんです。実際に僕は360ヤード飛ばすとき、40%の練習で気付いた要素を取り入れることもある。40%の力感でHSを今よりも1~2上げようとするとき、どう体を使うかは、100%のときよりわかりやすい。

奥田  例えば60%のときにいい感じで飛んでも、80%、100%では当たらんようになったら、6割くらいで振ったときが一番バランスがええいうことやからね。今日はいろいろ勉強になりました。

松本 僕ももっと勉強して多くの人に伝えられるように頑張ります。

数値にも表れる見事な打ち分け。「40%でこう動けばスムーズになると気付いたことを、60%、80%にしたときにできるか、徐々にステップアップしていく。一気に100%で動きを理解するよりも簡単で効果的です」(松本)

週刊ゴルフダイジェスト2025年2月11日号より