【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.17 コースの“罠”に打ち勝つには?
本番までついに1カ月を切り、本番モードに入ってきた谷繁。青木の教えをグングン吸収して、日に日にパワーアップしていく様子は夏の甲子園を控えた高校球児さながら。今回は、増やした引き出しを引っ下げてコースに。かなり暑い日だったが、カメラも回ってないうちから練習グリーンでのパタ練に余念のない谷繁だった。
PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/立野クラシックGC
“僕の真っすぐ”があるから
致命傷を負わずに済む
青木 さあ、コースにやって来ました。まずは、427ヤードのパー4。やや右に曲がっていて両サイドのフェアウェイバンカーが効いています。
谷繁 左バンカーは絶対に避けたくて、やや手前の右バンカーの奥辺りを狙いました。
青木 狙いを定めてから、ティーアップする位置を慎重に決めていましたし、決めたらサッと打ちました。結果、狙い通りのナイスショットでした。
谷繁 そう、このホールでの“僕の真っすぐ”がちゃんと見つかった。アライメントレッスンの効果です。
青木 見ていてわかりました。狙い所があって、さらに持ち球のフェードの曲がり幅を計算した位置を向いているのがわかりました。
谷繁 これまでなら、ティーアップをもっと右にして、やや左を向いて打っていたと思う。
青木 スライスすることが頭にあるからですね。
谷繁 で、実際に、これまでならやっていたであろう、やや左を向くアライメントで打ってみたら案の定のミスが出た。もはや思い通りのミスまで出せるようになってきました(笑)。
青木 ゴルフはスウィングだけじゃなく、打つ前にできることがすごくある。日頃からそのクセをつけることが大切です。
谷繁 アライメントが決まったら、いつもは頭をよぎる引っかけのミスが頭から消せた。怖さが消えて、自信を持って打てました。
青木 自信がないまま、何となくいやだなあと思って打つのは良くないですからね。
谷繁 そのあと、ティーアップの位置を右寄りに変えて打ってみて、打ってみたら、思った通りのミスが出て、さらに安心。最初のティーアップの位置、アライメントが正しかったと確認できました。
青木 自分のミスの幅というか、バリエーションを知っておくことも大事です。
谷繁 こんなミスが出たとして「アライメントが違っていたから」とわかれば、次に修正すればいい。
ムズムズする
ティーマークの向き
青木 競技のときは特にですが、あえて違和感のある向きにティーマークを設置したりするでしょ。
谷繁 あるある。なんか打つ前からムズムズしちゃって。そのまま打つとやっぱりミスになる。
青木 そうそう、トラップです。それにいちいち引っかかっていたら日本ミッドは遠いですよ。
谷繁 そんなときも“僕の真っすぐ”さえ意識できれば、自分のゴルフができますね。ティーマークが練習ラウンドと本番のときに違っていて「えー」とはならない。野球でも、打席に入ると、何かしっくりくる球場と、こない球場がありましたね。例えば、昔の広島市民球場は好きでした。見える景色が、何だかいいの。あと甲子園も立ちやすかった。ムズムズしたのは札幌ドーム。バッターボックスに入ったときもだけど、キャッチャーとして守っているときも、どうもしっくりこない。多分、背中からフェンスまでが広いからですね。もしボールが後ろに逸れたら、どう跳ねるか想像しづらいし……。
青木 野球選手の感覚の鋭さには驚かされます。
谷繁 あと、観察眼も磨かれていますね。特にキャッチャーは相手のクセを見抜くのが仕事でもありますし。これは僕じゃなくて古田(敦也)さんの話で、宮本慎也が言っていたんですけど「あの選手は、盗塁する前に顔にえくぼができるって。えくぼが見えたら、アイツは走る」って古田さんが話していたそうなんです。多分、走る前に顔に力が入るからだと思いますけど、試合中に「そこまで見てるの?」って話ですよ。
青木 すごいレベルの話ですね。
谷繁 それでも、ゴルフコースの罠には何度も引っかかっている僕です。
青木 でも、ゴルフでも野球でもそうでしょうが、許せるミスの範囲ってあるじゃないですか。
谷繁 そうですね。野球なら、9回裏3点差とかで勝っていたら、ソロホームランなら打たれてもOK。でも、先頭打者をフォアボールで出してランナーをためるのは絶対NG、とか。
青木 見ているほうは「ホームランを打たれちゃった、大変!」と思うでしょうが、それは許容範囲なんですね。
谷繁 許されるミスと許されないミスがあるのはゴルフも同じですね。右ラフに外してもOKだけど、左ラフだと次は出すだけになっちゃってリカバーできないからNGとか。アライメントの技術を身につけると、「これだけはNG」みたいな、致命傷を避けられる。本番も、どんな位置のティーマークでも“僕の真っすぐ”を信じます。
青木 おお、かなり仕上がってきている。楽しみです。
アライメント技術に自信があれば、打つ前のドキドキやムズムズから解放される。広島市民球場のように気持ちよく臨めるはず。
週刊ゴルフダイジェスト2024年8月13日号より
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