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【ゴルフ野性塾】Vol.1830「プレッシャーと欲がスウィングを変える」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

平成5年8月に
熊本塾を開いた。

平成5年11月の九州ジュニア選手権秋季大会後、塾生達のアドレス時の体と球の距離が変っていた。
初めての試合の後、ボールと体の距離が遠くなり過ぎていたのです。
練習場では私の指示通りの位置に立っていたが、試合の後、その距離が守られていなかった。
プレッシャーと欲が変えた距離だった。

飛ばしたいと思う。
いい球を打ちたいと思う。
その思いが利き腕の強さに頼るスウィングを生む。
近くに立ってたんじゃ利き腕は使い難い。
遠くから強く叩きたい本能が子供達の球と体の位置を変えていた。
子供達は試合でスウィングを変え、球より離れたスウィングをしていた。

私は驚いた。
これ程迄、試合の影響、強きものなのか、と。
近くに立たせた。
スウィングにぎこちなさが生じた。
トップで左腕が曲っていた。
伸ばせ、と命じた。
修正は遅れる程に癖を生む。

この時、練習場のスウィングを理想とするならば、試合のスウィングは理想の5分と思った。
練習場と試合のスウィング、同じであればスコアは伸びる。
異なれば行ったり来たりのスコアになる。
球と体との距離を近付ける戦いが始まった。
妥協はしなかった。
近付かなきゃ子供達のゴルフは終ると思った。

練習場より小さく低く構えよ。

練習場なら10発打って7~8発は納得できるドライバーショットが打てるのに、コースに行くと、その2~3発のミスショットばかりが出ます。練習場とコースではどうしてあんなにナイスショットの確率が違うのでしょうか。どうすれば、練習場のショットをコースでも打てるでしょうか。(千葉県・鈴木翔也・36歳・ゴルフ歴5年・平均スコア95)


練習場とコースの違いを考えれば結論は容易に導き出せる。
その日の練習場の風向きは同一方向。
強さも一定。
しかも同一の景色の中に打って行ける。

片やコースはホール毎に風向きも強さも景色も変る。
一期一会である。
となれば練習場の風や景色に知恵使う事はないが、コースの風や景色には知恵も使えば気も使う。
そして、神経質になって行く。
コースの一発のミスは己への不信を生む。
練習場のミスは不信を生む事はない。
ここが練習場とコースの違いだ。

気持ちも自信も揺さぶられるのがコースラウンドであり、単純な練習、続ける事の出来るのが練習場である。
コースでは思いも考えも頭の中を巡り回る。
ミスショット打つ毎にだ。
練習場では思考、一本道。
一発のミスショットで思考、片寄ったり剥離する事はない。
コースだとミスがミスを呼び、ミスの連鎖始まるが、練習場にミスの連鎖は生じない。
連鎖あるとすれば余程のスウィングの欠陥ある時だけだ。

練習場の床は硬い。
ダウンスウィング時の右足の動き、躊躇なくダウンスウィングへと向う事が出来る。
だが、コースは芝生。
ダウンスウィング時、踏み込んだ右足の動きが一瞬止まる。
下が軟らかいが故の沈み、滑りが止めを生む。
となれば下半身の動きに遅れが生じ、上体先行のスウィングとなる。
これでスウィングのバランスは崩れる。
手打ちの発生だ。

練習場では高いトップ、高いフィニッシュ取れる人がコースに行くと低いフィニッシュになる。
体の動き、手の動き、総てが練習場と異なって行く。
下の硬さが原因である。
だから練習場でスタンス幅70センチで打ってる方がコースに入った時、70センチで打ってはいけないのです。
一割減の63センチで打てばいい。
それで練習場と同じ右膝の動き生れると思う。

練習場では広く構え、コースでは一割減の狭さで構えれば練習場と同じスウィングが出来るのです。
練習場もコースも同じスタンス幅で打つのは芸がなさ過ぎる。
昔からスウィングが分っている、ゴルフが分っている、との表現言葉はあった。
その言葉、スタンスの広さへの配慮を指した言葉であったと思う。
一緒に回る人への配慮は要る。
それ以上の配慮が己のスタンス幅であろう。
乱れ、自滅し、嘆き、キャディさんに当り、責任転嫁し、ブスッとした表情でプレーする人との一緒は辛い。
いいスコアで回り、楽し気な表情の方と回るのは楽しい。

スタンス幅である。練習場の練習をスコアに直結させるのはスタンス幅だ。
練習場とコースの違いを比較すりゃ、コースラウンドでどうすりゃいいかは見えて来る。
コースラウンド時、両の膝を少しだけ曲げてやりゃいい。練習場の足の裏から頭のテッペン迄の高さ、170センチの方は167センチにしてやればいいのです。
この3センチの違いがコースラウンド時の右足の一瞬の遅れを阻止する。
右足の滑りも阻止する。
体全体の硬化の動きも阻止する。
練習の時は高く構え、戦いの時は低く構えよ、が基本である。
練習場もコースも同じ高さの構えをしてはいけないのです。

私は塾生達にゴルフを教えて来たが、塾生達は私に何を教わったのか、分らない者ばかりである。
私はゴルフの考え方、スウィングの基本を教えて来た。
私は小針春芳プロ、宮本留吉プロ、橘田規プロに教わった。
今、やっと3人の師から教わりし事、何であったかが分る様になって来た。

稽古事、鍛え事、一途事の寿命は長い。
私の述べて来た理論、一つを理解して貰えば次が姿を現わす筈だ。
終りはない。疲れた時は休めばよい。
ハンディゼロの方もハンディ40の方もだ。

練習場とコースの体・技・心は異なる。
練習場とコースのスウィング、二人三脚と思えばよい。
あるいは対の脚と考えればよい。
同じにしたい、同じ球を打ちたいとの願いは理解する。
なれど、違うのです。
練習場、球飛ぶ先にはネットがある。
コースにはない。あるのはOBか林だ。
練習場、智勇で打って行ける。
智勇だけでいい球、打ち続ける事は出来る。
蛮勇は要らぬ。
蛮勇の存在する打席はどこにもない。
コースには蛮勇が要る。智勇だけでスコア作るは難しい。
智勇と蛮勇、織り為すのがコースラウンドであり、良きスコアも生まれるであろう。

研修生時代の私、今日は智勇だけで打って行くコースラウンド、明日は蛮勇だけで打って行くコースラウンド、次の日は智勇と蛮勇、織り混ぜて打って行くコースラウンドと三日を一つとして練習ラウンドしていた。
ゴルフ始めて3年と11カ月でプロテストに通り、翌年からツアー参戦出来たのもこの三日を一つとした練習ラウンドにあったが為と思う。
貴兄の健闘を祈る。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号より

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