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【スウィング研究】息を止める? ゆっくり吐く?「つめて吐く」が正解! 軸ができるスウィング中の呼吸法

吸うべきか吐くべきか、あるいは止めるべきか。プロでもアマチュアでも、さまざまな意見に分かれるスウィング中の呼吸。セオリーのないこの呼吸法に果たして正解はあるのか? 体の動きに詳しい動作解析の専門家・池上信三さんに話を聞いた

“つめて”吐くが正解だった! 飛距離が伸びる「呼吸法」

往年の名手、中村寅吉は「吸って吐く」。青木功は「吸って止める」。スウィング中の呼吸について、それぞれ異なる表現で、ときに広まることがあった。動作解析が進んだ現代、スウィングと呼吸はどんな関係なのだろう。

そこでプロとアマに、スウィング中どのように呼吸しているのかを調査してみた。すると円グラフの通り、アマチュアは43%、プロは48%が「意識しない」と答えた。呼吸を意識して行うと答えたプロでも無意識に近いという回答が多かった。

「スウィング中は止めています。でも調子が悪いときは吐くことを意識。ムダな力が抜けやすくなります」深堀圭一郎プロ

この調査について「予想通りの結果」と分析するのは、動作解析の専門家である池上信三氏だ。

「歩くのと同じで呼吸も無意識に行うものです。呼吸を意識しすぎると、体の動きはギクシャクしてしまいます。無意識に体の理想的な動きができるのがプロですから、呼吸を意識しない割合がアマより多いのは当然でしょう」(池上)

「アドレスで吐きながら、重心を落として始動。意識としては止めるでも吸うでもないです」上田桃子プロ

アマチュアも意識しないと答えた割合が多かった。

「アマチュアは呼吸について間違った認識を持っている可能性があります。呼吸はスウィングと密接に関係しています。ですから正しい認識を持つことで上達の助けになるのです。息を吸う、吐くというタイミングひとつで、スウィングは大きく変わります。だからこそアマチュアは正しい呼吸を意識し、それを無意識に行えるように整えていくべき。スウィングの安定性が増し、飛距離を伸ばすことにもつながります」と池上氏。

呼吸は止めると「ブレない」。吐くと「スピードが出る」

「息を吐いてから始動。吸いながらはない」池村寛世プロ

「人間の体は”吸う”と力が入り、”吐く”と力が抜けるようにできています。その間に”止める”があるわけですが、こうした呼吸を自然にできることがスポーツに求められる正確性やスピード、パワーといったパフォーマンスに関係してくるのです」(池上氏)

たとえば針に糸を通すときは、自然と息を止めて針を通そうとしてるはず。少なくとも大きく吸ったり、吐いたりはしていないだろう。

「吸って上げて、吐いて下ろす。呼吸を止める意識はありません」岡山絵里プロ

「いわゆる息を止めた状態ですが、これは、肺に入った空気を一定量に保つと考えてください。そうすると肺の内圧が高まり、体に軸が生まれるのです。その結果、動きのブレがなくなり、正確な動きが可能にあります。アーチェリーや射撃などに求められる呼吸です。ゴルフで言えばパッティングや短いアプローチで必要とされる呼吸法でもあります」

では息を吐くのはどうか?

「脱力が生み出すのがリズムとスピードです。たとえばボクサーはパンチを出す時”シュッ”と息を出しています。息を止めてパンチを出そうとすればスピードは生まれず、リズムも悪くなります。ましてや息を吸いながらでは、スピードの遅い弱々しいパンチした出せません」

大きく吸った息を吐き出すのは、たとえば野球やテニスでボールを打つ、投げるとき、サッカーで蹴るとき、あるいはフィギュアスケートでジャンプするとき…など多くのスポーツで行われている。

「意識はしないけど、止めてはいない」稲森佑貴プロ

「ゴルフでスピードが必要なのはダウンスウィングです。だからダウンで息を吐くという意識が多いのは間違いではありません。ただ息を吐きながら打つと体に芯がなくなり、前傾角が崩れ、弱々しいスウィングになりやすいのです。そこで重要なのが吸う、吐くだけではなく”息をつめる”という発想なんです」

合言葉は「スー・ンッ・ハ」。

息を止めるのではなく”息を詰める”とはどういうことなのだろう。

「つめるを感じで書くと『詰める』になります。吸った息を止めるのではなく、体の中に一時蓄えるといったイメージでしょうか。体の中に息を詰め込み、それを一気に吐き出すことで、最大のスピードとパワーを生み出すことが可能になるのです」

言葉だけでは理解しにくいため、池上氏が提案するステップアップ法を教えてもらった。

まずは息を吸いながらバックスウィングし、吐きながらダウンスウィングする連続素振りだ。

バックで吸い、ダウンで吐くのは自然な呼吸そのもの。この動きで自分に合ったリズムとスピードを探しだすことができる。

次に同じ要領で、吸いながらバックスウィングをしたら、インパクトでボールの位置にあるローソクの火を消すように振ってみよう。火を消すためには狙った場所に細く強く吐くイメージが必要になる。この大きく吸った息を止め、強く吐き出す直前までが”息を詰める”動作になるという。

最後は「ンッ」「ハッ」と声を出し、実際にボールを打つ。

「ンッ」で息がつまり、「ハッ」で一気に吐き出す。

「”ンッ”のタイミングは下半身でダウンスウィングを始めるときで、スウィングのタメと同じなんです。”ハッ”はインパクト以降でねじれた肩と胸郭が真っすぐになるフォロースルーのタイミングが理想」と池上氏。

ちなみにアマチュアの多くは、この詰める動きがトップになりやすく、タイミングが早いという。

テニスの選手がボールを打つときに声を出すが、実際は声を出そうとしているのではなく、詰めた息を解放する段階でモレ出るのが正しいと池上氏は語る。

つまりインパクトの瞬間に大きな声を出すのではなく、詰めた息を一気に解放するイメージが大事だという。

「この”ンッ・ハッ”が身につくことで、自分の最大スピード&パワーを引き出すことができます。さらに息をつめた状態、つまり体の内圧を高めた状態で口先や鼻で呼吸することもできるのです。実際、プロのパッティングやアプローチはそうした呼吸法で打っているはずです」

小祝さくらプロと渋野日向子プロのインパクト

吸って吐くだけでなく、息をつめるという新感覚が加われば、さらなる飛距離アップやショットの精度アップにつながりそうだ。ぜひ一度、試してみてはいかがだろう。

週刊GDより