【浦ゼミナール】Vol.6「左ひじ引け」はひじを気にしたら直りません
身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。フォローでの「左ひじの引け」はアマチュアゴルファーの代表的な悩みのひとつ。今回は頑固な「ひじ引け」を直す方法を教わった。
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
フォローでひじが引けるのは
体の回転が足りないからだ
――プロのスウィングってキレイですよね。アマチュアはどうしてもスウィングが汚くて、フォローで左ひじが引けたりしちゃうんです。せめてそこだけでも直したいです。
浦 「ひじ引け問題」はよく相談されますね。本当のことを言うと、フォローで左ひじが曲がっていても、それはインパクト後のことなのでぶっちゃけどうでもいいんです。でもアマチュアの「ひじ引け」はスウィングに問題がある場合も多いので、直すに越したことはありませんね。なによりフォローで左ひじが縮こまっているスウィングはカッコ悪いですからね(笑)。
――そう、カッコ悪いんです。これはどうすれば直るんですか?
浦 ひじ引けは、ひじを意識しても絶対に直りませんよ。問題の根本は、体がちゃんと回っていないことにあります。言ってしまえば、体のターンがどんくさいからフォローで左ひじが引けるんです。
――どんくさい……?
浦 はい。インパクト以降で体が左に回転していかず、正面を向いたまま振り抜こうとする人。クラブが遠心力でフィニッシュに向かっていこうとするのに体がボールのあったところを向いたまま動かないから、クラブが行き所を失って、左ひじを曲けないとクラブが抜けていかないんです。
――そうか、ひじが引けてしまうという現象には、別のところに原因があるというわけですね。
浦 ひじが畳まれて下を向き、手のひらが上を向くような「蕎麦屋の出前」の「おかもち」のポジションが理想とか言われますが、クラブを最速で振っているなかで、こんな形を作ろうとしても無理。クラブを左手で持って体を正面に向けたままこの形を作ってみてください、メチャクチャ窮屈で、スウィング中に意識して作れる形じゃありませんよ。でも体を回して胸を目標方向に向けてやれば、自然とひじは下を向いていいポジションに収まる。結局はそこなんです。
――なるほど。ひじが引けている人は、回転が足りないんですね。
体が回らないからひじを引くしかない
ひじ引けの根本的な原因は回転不足。体の回転が不十分だとクラブが抜けていくスペースがなく、左ひじを引かないと振り抜けないが、胸が目標を向くように回っていけば、自然と左ひじが畳まれてクラブはスムーズに抜けていく
浦 ひじが引ける人には、インパクトは体の正面でするものだとか、インパクトはアドレスの再現だとか思っている人が多いんですが、大きな勘違い。インパクト時には腰も胸も大きく回って、かなり目標方向を向いているんです。体がここまで回っていれば、ひじが引けることなんてあり得ません。「ボ—ルをよく見る」とか「左のカベを意識する」とか、そんな言葉もひじ引けを誘引するので、気をつけてください。
インパクトは「体の右側」が正解
インパクトはアドレスの再現でも体の正面でもない。腰も胸もアドレス時よりも大きく回っており、相対的に体の右側でボールをとらえるのが正解。これは「振り遅れ」ではなく正しいレートヒットの状態なので、体を開くことを怖がってはいけない
体が開くことを
怖れずに回転しよう
――体を回せと言われても、なんだか体が開いてスライスしそうで怖いんです。
浦 たしかに切り返しの瞬間からガバッと上半身で引っぱるように体を回すとカット軌道になりやすいし振り遅れてスライスしますが、それは別のところに問題があるので、体が開くことが直接スライスにつながるわけではないんです。さっき説明したように、インパクトでは体は絶対に目標方向を向いていて、いわば「開いて」いるのが正解なんですから。
――なんだか難しいですね……。
浦 まぁこれはあれこれ考えるより、やってみるほうが早い。切り返しの瞬間に左足を踏み換えて、左つま先が目標方向に向くように90度回してスウィングしてみてください。
――トップで左足をガニ股にするように外に向けてしまうんですね?
浦 そうそう。こうやって振ると、ダウンスウィングで体が自然と左を向いていって、体が回った状態でインパクトできます。これなら絶対に左ひじは引けませんよ。
左つま先を目標に向けて振ってみよう
トップから切り返しの瞬間に、左つま先を90度左に回して、左つま先を目標に向けてダウンスウィングする。これによって体が自然と左に回っていくので、フォローで左ひじが引けることはない
――あ! 本当だ!
浦 タイミングが取りにくければ、最初から左つま先を目標に向けた状態でスウィングしても構いませんよ。
――なるほど! 体が回るってこういうことか。実際に球を打つときにこれをやってもいいんですか?
浦 もちろんOKですよ。でもこれだとちょっと力が逃げるので、飛ばすことを考えるなら左足は動かさずに下半身主導で体を回すことを覚えるほうがいいかもしれませんね。
――どうすれば下半身で体をちゃんと回せるんですか?
浦 簡単に言えば「右足の蹴り」がカギ。右足で地面を蹴れば体の回転が後押しされます。ただ「右足を蹴れ」って言うと、右足を突っ張って地面を押そうとする人がいるんですがそうじゃない。右足の蹴りは、右ひざ蹴りなんです。
――ひざ蹴り?!
浦 そうです。切り返しの瞬間に、右ひざが斜め前に出るように右のかかとを浮かせる動作。左足の前にあるキックミットに思い切りひざ蹴りする感じ。この動作が体の回転力を劇的に上げてくれるんです。このとき、右のわき腹にすごい負荷がかかりますし、右のふくらはぎの筋肉も使う。その筋力が強くて思い切り蹴れる人が飛ばせる人ってことなんですが、パワーがなくてもちゃんとここを使えていれば絶対に飛距離は伸びるので、意識してみてください。
「右足の蹴り」の正体は「ひざ蹴り」なんです
切り返しで右ひざが前に出るように右かかとを浮かせて地面を蹴る
フットワークのポイント
右ひざが前に出るように右足を蹴って体を回す
左ひざの前のキックミットに右ひざ蹴りを入れるイメージで右かかとを浮かせ、右つま先で地面を蹴る。内ももをくつつけるように右ひざを寄せる動きではないので注意
月刊ゴルフダイジェスト2020年7月号より