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【浦ゼミナール】Vol.4 飛ばない原因「アーリーリリース」どうすれば直る?

身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。今回は、アマチュアゴルファーに多い悩みのひとつ「アーリーリリース」の原因と対処法について聞いた。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Kazuo Iwamura THANKS/√dゴルフアカデミー

前回のお話はこちら

浦大輔

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

カッコ悪いし
飛ばないスウィング

――アマチュアのスウィングについての悩みの代表的なもののひとつにアーリーリリースがあります。浦プロはアーリーリリースについてどうお考えですか?

 本当のことを言うと、それほど致命的な問題だとは思っていません。アーリーリリースな人はヘッドがダウンブローに入りにくくてアイアンは苦手でしょうけど、フェアウェイウッドなんかはそこそこ上手く打てたりします。その意味ではいちばん大きいのは“カッコ”ですかね。

――カッコですか?

 はい。アーリーリリースのスウィングってやっぱりカッコ悪いですよね(笑)。

――たしかに……。

 実際は、エネルギー効率もあまりよくないので飛ばしには向きませんから、気になる人は直したほうがいいとは思います。

――カッコ悪いスウィングは嫌なので、直したいです。

 ですよね(笑)。アーリーリリースの原因は、「負けたくない」という意識なんです。具体的には、バックスウィングでクラブに引っ張られるエネルギーに負けたくなくて拮抗しようとしてしまうことと、インパクトでコスリたくないと思ってインパクトより前に「当たり勝つ」状態を作ろうとしてしまうこと。

――ちょっとわかりにくいですね。

 では順番に詳しく説明しましょう。まず前者の「バックスウィングのクラブの重さに抵抗してしまう」こと。バックスウィングでクラブが上がっていってトップに近くなると、バックスウィングの慣性でクラブは背中側に進んでいこうとしますよね。このときプレーヤーは、「クラブがそのまま行ってしまって戻ってこなさそう」という不安を感じるんです。オ—バースウィングになったり振り遅れたりしそうな不安。なので切り返しでそれに逆らおうとして、クラブのベクトルを変な方向に変えてしまうんです。本来、バックスウィングで進んだ軌道をそのまま戻ってきたいのに、手元を引っ張り込むようにして下方向に力を加えてしまう。すると手首の角度もほどけてしまうんです。


バックスウィングのエネルギーに拮抗しようとするからほどける

バックスウィングでクラブが背中側に進もうとするエネルギーに指先で拮抗しようとすると、クラブのベクトルが変わってしまい手首の角度がほどけてアーリーリリースになる。行った道を戻ってくれば、手首はほどけない

切り返しの瞬間は飛球線と反対方向にベクトルが向かうのが正しいが、下に向かうとアーリーリリースになる

――なるほど。2つめは?

 2つめも基本的には同じことなんですが、どちらかというと「フ工—スを開きたくない」「当たり負けたくない」という意識から生じる動き。その結果切り返しの瞬問にフェースを閉じるような操作を加えて「当たり勝つ」状態を早く作ろうとしてしまうんです。これもダウンスウィングでクラブが戻るべき方向を乱し、リリースを早めて手首がほどけることにつながる。これらの動作をトップにたどり着く直前にやろうとするとシャフトクロスになり、トップに達した直後にやろうとするとアーリーリリースになる。原因は同じなんです。

実はシャフトクロスと同じ原因で起きている

アーリーリリースと双璧をなすアマチュアの悪癖であるシャフトクロスも、原因は同じ。切り返しの直後に拮抗させようとするとアーリーリリースになるが、直前に拮抗させようとするとシャフトクロスになる

指先ではなく体全体で
クラブと拮抗する

――アーリーリリースを直すにはどうしたらいいですか?

 いくつか方法がありますが、まず前者のタイプの人は、バックスウィングでクラブを最大まで「行かせてしまう」のがいいでしょうね。

――行かせてしまう?

 背中にクラブが当たるまでバックスウィングしてしまうんです。途中で拮抗しようとするからアーリーリリースになる。拮抗しようとせずに行くところまで行かせてしまうくらい深い素振りをするんです。もしくは、レディス用などの超軽最クラブでスウィングするのも「負けそう」な感じがしないのですぐに直りますよ。後者タイプの人は、最初から45度くらいフェースをかぶせた状態で構え、トップまでそれをキープしてスウィングするといいと思います。最初から絶対にコスらない状態でスウイングすれば、切り返しでフェースをかぶせて「勝とう」とする必要がなくなります。

――なるほど。拮抗する必要をなくした素振りをしたりすることで、「負けまい」とする意識を消せるというわけですね。

 そうです。厳密に言うと、アーリーリリースでないグッドスウィングでも、トップではクラブのエネルギーに拮抗する力は生じています。実際のスウィングのなかでは、トップでクラブが背中に当たるところまで行かずに切り返せますよね。

――たしかに。拮抗していなければクラブは背中にぶつかってしまう。

 大事なのは、拮抗しないことではなく、その拮抗を指先で作らないことなんです。アーリーリリースの人は、指先の力でクラブと拮抗しようとしている。これに対して正しい拮抗は、体全体でクラブと拮抗している状態なんです。この状態は、お腹を締めるとか背中を意識するとか下半身を使うとか、どこか特定の場所を意識するのではないので説明するのは難しいんです。でも言えることは、指先で拮抗させないことができれば、人間は反射的に体全体を使って拮抗させます。あえて言うなら、体全部を使ってクラブと拮抗する意識を持つことが大事だと思います。

――難しいですね。

フェースを超かぶせて構える。
アーリーリリースは起こらない

思い切って極端にフェースをかぶせてみよう

フェースを45度くらい極端にかぶせたアドレスから、そのフェースをキープしてバックスウィングして打つと、「拮抗」が必要なくなりアーリーリリースは直る

 では、体全体でクラブと拮抗させるスウィングが身につく上級編のドリルをお教えしましょう。さっきの背中にクラブをぶつける素振りやフェースを超かぶせたスウィングで、手で拮抗させない感覚が少しわかってきたらやってみてください。

――どんなドリルですか?

 クロスハンドグリップで球を打つんです。クロスハンドグリップは右手が使えない握りなので、普段右手の指先を使ってアーリーリリースしてしまう人は、それができなくなるので当たりません。試しにやってみてください。

――あっ! トップしちゃう!

 典型的ですね(笑)。アーリーリリースの人は、クロスハンドではトップしか出ないんです。インパクトでは本来、右ひじが体に密着した状態で体の右サイドが下がりますが、クラブヘッドが早く下りてきてしまうアーリーリリースは、この形を作ったらダフってしまうので、普段ごまかして打っているんです。それが右手の動きを封じられると途端にボールにヘッドが届かなくなって、トップしかしなくなる。自分ではめちゃくちゃ思い切りダらせるつもりで右肩を下げてインパクトしてみてください。

――まだトップします。

 まだ全然足りません。もっと右肩を下げてインパクトしてください。これで打てるようになったら、アーリーリリースは直りますし、飛距離も出るようになりますよ。

Drill
クロスハンドでダフらせてみよう

クロスハンドグリップでボールを打つ。アーリーリリースの人は必ずトップする。これでヘッドがボールに届くようになればアーリーリリースは直る

大ダフリの覚悟で極端に右肩を下げてインパクトしよう

月刊ゴルフダイジェスト2020年5月号より