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【浦ゼミナール】Vol.3 スウェイは“悪”ではない! 正しい体重移動のポイントは「目線の高さ」

身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。「体重移動」はゴルファーの永遠の疑問であり、大きな謎。体重移動はそもそも必要なのか、どのくらいすればいいのか、その秘密について聞いてみた。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Kazuo Iwamura THANKS/√dゴルフアカデミー

前回のお話はこちら

浦大輔

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

真横へのスライドは
「いいスウェイ」

――浦プロは、スウィング中の体重移動について、どうお考えですか? 体重移動は、多くのアマチュアにとって、何が正解なのかよくわからない永遠の疑問のひとつです。

 体重移動とは、スウィング中に体の重心が動くこと。人間の体は、何十キロもの重さがありますが、これが移動するとすごいエネルギーが生まれるんですよ。ゴルフはほかのスポーツのように助走をつけることができないので、その代わりにバックスウィングで体を右にスライドさせ、それを左に戻すことでエネルギーを生む必要があります。その意味では飛ばしに不可欠な要素と言っていいと思います。

――なるほど。では体重移動って、どうやればいいんですか?

 率直に言えば、バックスウィングで右に水平移動し、ダウンスウィングで左に水平移動する。これに尽きます。でも僕はレッスンでは「こうしなさい」という細かな指導はあまりしませんね。

――それはどうしてですか?

 細かく説明すればいろいろあるんですが、「切り返しで踏み込め」とか「腰をスライドさせろ」とか具体的に言うと、どうしても体の特定の部位を意識しがちになり、結局スムーズな動きを損なうことが多いんです。体重移動は、スムーズなスウィングをしたときに結果的に起こるものなのが理想なんです。とくに初心者やアベレージゴルファーが体重移動を意識しすぎると、必要以上に体を左右に揺さぶって軸がぶれ、再現性が下がるケ—スが多いですからね。

――いわゆるスウエイだ。

 まぁゴルフ用語的にはそうなんですが、そうは言いたくない。僕は、アマチュアが飛ばせない原因のひとつに、スウェイを嫌がりすぎることがあると感じているんです。

――でも「スウェイはダメ」つていうのはコルフの鉄則ですよね?

 スウェイ=横方向のスライドがダメなんじゃありません。横のスライドに伴う上下のズレや軸の傾きがダメなんです。横方向の動きが大きすぎると上下動も軸ブレも起きやすい傾向はありますが、必ずしもセットではない。それさえなければ左右に動いても問題ないし、むしろ飛ばしに大きなスライドは不可欠。言葉の問題と言えばそれまでですが、上下のズレを伴う横移動を嫌うあまり、必要なスライドまで排除するのはナンセンスです。
 ポイントは目の高さ。体重移動の際に目の高さが変わらなければスウィングの再現性は担保できます。「スウェイ」や「突っ込み」は一般的に悪い意味で使われる言葉ですが、上下動や軸の傾きを伴った場合だけが悪なのであって、横移動自体を悪としてしまうと、飛ばしのエンジンを失うことになりかねません。

目線の高さを変えずにスライドするのが「体重移動」
正しい体重移動は、目線の高さが変わらない水平移動。トップで状態が90度回って目標に背中が向いているとしたら、その向きを変えないまま上体が真横に動けばOK。この動きさえできていれば下半身がどうなっていても問題ない

ひざから下が「垂直」までなら動いてOK

バックスウィングでの右への移動量の目安は、右のひざから下が地面と垂直になるところまでが限界。これよりも右に動くと、上下動や傾きが生じやすいし、左に戻すのも難しくなる

つま先立ちになって
そーっと動くイメージ

――つまるところ、目線の高さを変えないスライドが、正しい体重移動の本質だということですね。

 そのとおり。でも実はこれは超高等テクニックなんです。試しに、切り返しの際の右から左への体重移動をやってみてください。鏡を見ながら、切り返しの瞬間の体重移動の動作「だけ」をやる。クラブも持たなくていいし、腕も振らなくていい。目線の高さが変わらずに背中方向にスッと動ければOKです。

――あれっ? 全然できません!

 そうでしょう。ほとんどのアマチュアはできないと思います。クラブも持たずにこの動きだけに集中してもできないのに、スウィングのなかで正確にできると思いますか? 体重移動って、本来はそのくらい難しいんです。まして、飛ばすためには大きくスライドしたいのに、スライドの量が大きくなればなるほど難しくなる。ちなみに僕は、この動きをひたすら練習しましたよ(笑)。

――こんな難しい技術が必要じゃ、スウィングなんてできませんよ。

 だからレッスンの現場には、上下動を抑えるために体重移動も抑えてしまおうという指導が存在するんです。体重移動を極力せずにスウィングした結果、上下動や軸のブレが小さくなることはあります。すると全然芯に当たらなかった人がミート率が上がり、結果として飛距離が伸びることもある。でもこれは、ある種のごまかしだと思うんです。

――この動きを身につけなければ、真の飛ばし屋にはなれない?

 極論すればそうですが、まぁ上下動がゼロにならなくてもそこそこの当たりはしますし、なにも毎スウィング最大量のスウェイをする必要もないので、どうにも手が届かない技術ということもありませんよ。いずれにせよまずは、この目線の高さを変えずにスライドする感覚を知り、その行為に慣れてください。

――体重移動の練習をしろということですね。

 そうです。踏み込むとか腰を切るとか、下半身のことは一切考えなくていいです。目線の高さを保って背中をスライドさせることができればそれが正しい動き。最初は目線の高さを保って歩くところからスタートしてみてください。やってみるとわかりますが、この動きって「抜き足差し足」なんです。歌舞伎や武道などの「すり足」のような「そーっと動く」動作。やってみるとわかりますが、ベタ足ではこれはできなくて、自然とつま先立ちになる。これが正しい体重移動ができるフットワークなんです。つま先が使えるようになれば、足の筋肉をうまく使えるので、地面を「蹴る」とか「踏む」ことで回転力を高めることもできます。これはベタ足じゃできない動きですよ。

体重移動は「抜き足差し足」

「体重移動の練習」を僕は徹底的にやりました
浦プロは、鏡を見て目の高さを変えずに体重移動する練習を徹底的にやったという。まずは目線の高さを変えずに歩く練習、 慣れてきたら重いボールなどを持って体を左右に回してみよう

トップの姿勢のまま目線の高さを変えずに歩く。自然とつま先立ちになる

重いボールを持って左右に振りながら1歩ずつ前進。目線の高さはキープ

右足のかかとを浮かせて思い切って地面を踏もう

ダウンスウィングでは右足の蹴りで体の回転を促進。 このとき、かかとが浮いてつま先で地面を押すことが肝心。 つま先で踏めていないと右ひさが前に出て体が開きカット軌道やあおり打ちになりやすい

月刊ゴルフダイジェスト2020年4月号より