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【浦ゼミナール】Vol.42 おじさんでも真似できる! ジョン・ラームは究極の効率スウィンガー

身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。今年マスターズに勝ったジョン・ラームのスウィングは、アマチュアにも参考になるという。コンパクトで個性的だが、飛んで曲がらない効率のいいラームのスウィングを浦さん独自の視点で解説してもらった。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos、KJR THANKS/√dゴルフアカデミー

前回のお話はこちら

浦大輔

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

メチャクチャ効率の
いいスウィング

――浦さんが最近注目している選手、スウィングのいい選手っていますか?

 最近とくにというわけではないですが、やっぱりジョン・ラームはいいですね。今年はマスターズに勝ちましたが、「そりゃ勝つよね」っていうくらい安定していて、見ていて面白みがないくらい。

――面白みがないというのは?

 いわば全部ライン出しですもん。無理せず方向性重視で、余計なことをしないスウィング。とくに好調だったマスターズのときなんて、崩れる気配すらなかった。

――あれがライン出しなんですか? ドライバーは300ヤード以上飛んでいますよね?

浦 188センチ100キロっていう恵まれた体格ですから、持っているエネルギーが違う。効率よくスウィングすれば方向性重視でもあのくらい飛んじゃうんです。でもその効率は特筆すべき点だと思います。クラブのジャマをせずに仕事をさせるのが本当に上手い。そこはアマチュアも大いに参考にすべき部分だと思います。

――スウィングも個性的ですし、パワーヒッターという印象ですが、実はそうではないんですね。

浦 トップはコンパクトに見えますが必要十分。スウィングもクセが強く見えますが、よく見るとタテに上げてヨコに振るという王道的な動きなんです。サイズは大きいですが体形は「中年のオッサン」みたいですから(笑)、スケールダウン版であれば真似できるスウィングです。

――なるほど。どういうところを真似たらいいんでしょう?


 ラームは、クラブの動きをジャマせずに、ちょっとだけアシストして加速させる動きが抜群に上手い。ここを真似たいですね。ゴルフスウィングを振り子に例えると、ラームはクラブの振り子がいちばん右(トップ)まで上がって下りてくる瞬間に、ダウンスウィング方向にちょっとだけ押して手助けしているだけ。でも振り子そのものの動きをジャマしなければ、これだけで劇的にスピードが上がるんです。クラブがいちばん偉くて、自分はそのお手伝いをさせていただく立場だってことを理解している。
これに対して飛ばないアマチュアのスウィングは、実は振り子運動ですらなくて、クラブをギュッと握って振り子っぽく見えるように自分で動かしているようなもの。自分が出しゃばりすぎて、本来クラブの持っているエネルギーや重力を消してしまっているんです。

ラームがしているのは「振り子の手助け」だけ

グリップエンドを支点とした振り子運動が、もっとも自然なクラブの動き。これを妨げずに効率よく加速させるには、振り子がトップに達して方向転換した直後に、ポンと一瞬だけ押してやればいい。これに対してアマチュアはグリップを握って自分で動かしているようなものだ

切り返しの瞬間に、グリップあたりをちょっとだけ下に押してやれば、振り子の軌道を乱さず、小さな力で効率よく加速させられる

切り返しの一瞬だけ
クラブを押してやる

――どうすればクラブのジャマをせずに振れるんでしょう?

 まずは手の力を抜くことですね。

――浦さんは普段、「グリップは強く握れ!」って言っているじゃないですか。それと矛盾しませんか?

 それは飛ばすためです。ある程度方向性を犠牲にしてでも飛ばしたいなら、強く握ってブッ叩く必要がありますが、ラームの体格でこれをやれば400ヤード以上飛ばせます。でもそれじゃあ試合では勝てません。私だってスコアを出すときは400ヤード飛ばすスウィングはしませんよ。

――では、とりあえず飛ばしは諦めろっていうことですか?

 成人男性で、ドライバーをがんばって振って250ヤード未満という人なら、ラーム的なスウィングでも確実に飛距離は伸びますよ。何しろ効率がいいですからね。いま300ヤード飛んでいるなら別かもしれませんが、同じ距離をもっとラクに、高精度で飛ばせるようにはなると思います。

――なるほど……。では改めて、クラブの動きをジャマしないスウィングって、どんなスウィングですか?

 右手1本でクラブを持って、できるだけ少ない指の本数でスウィングする感じです。まずは親指と人さし指の2本だけでつまんで振る。これなら手は何もできないはずです。

――確かに。

 指2本だと、クラブの動きはジャマしませんが、加速させることもできない。そこで、限定的に指をプラスして使うんです。切り返しの瞬間だけ、中指にキュッと力を入れてみてください。ダウンスウィングでクラブがポンと加速しますよね。でもダウンスウィング以降も中指を握り続けてしまうとこのフィーリングは出ないので、切り返しの瞬間だけというのがポイントです。これを5本指でやったら、クラブはもっと加速する。ラームのスウィングって、こういう感じ。クラブをつまんで振っているようなものなんです。「これじゃ当たらない!」って言う人が多いんですが、それは練習が足りないんです(笑)。

グリップはほぼ右手の2本でつまんでいるだけ!

ラームのスウィングは、極論すれば右手の2本指でつまんで振っているようなもの。切り返しの瞬間だけ5本指を使ってクラブの動きをサポートするが、それ以外はクラブのジャマをしないことが最優先されているスウィングだ

だからフォローでこの形になる!

フォローで右手のひらがグリップから離れてビジェイ・シンのような「猫手」になるのも、他の指に力が入っていない証拠だ

右手だけの“振り子”をどれだけジャマしないか

右手の親指と人さし指の2本だけでクラブを持って、できるだけ自然な振り子に近いイメージでスウィング。切り返しの瞬間だけ使う指を増やしてクラブを押してやれば、振り子本来の軌道を乱さず効率よく加速させることができる

この瞬間だけ5本でサポート

最初は中指だけをプラス。実際のスウィングでは5本指を使えば、より効率的に大きなパワーを生み出せる

左手が力んでいないから「掌屈」できる

ラームのスウィングは左手はクラブを支えているだけで、余計な力は一切入っていない。(グリップの向きも関係あるが)左手首を掌屈できるのは、力が入っていない証拠だ。左手をギュッと握ったままの掌屈は、手首が痛くてできない

月刊ゴルフダイジェスト2023年9月号より