【陳さんとまわろう!】Vol.236「グリーン周りでのサンドウェッジ。意外と難しいと思いますよ」
日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回も、前回に続きアプローチについて。
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
バウンスがあるSWはクラブ自体が難しい
――陳さんはグリーン周りからのアプローチショットでサンドウェッジは使わないんですか?
陳さん ほとんど使ったことありませんよ。使ったときのことを思い出すと、たとえば砲台グリーンの下のラフから高いグリーンの上にボールを乗せて、止めなくちゃいけなかったときとかね。そういうとき以外に使ったことはたぶんないと思うんだねえ。
――へえ、そうなんですか。
陳さん だって、必要ないんだ。ピッチングウェッジ(PW)があるし、アプローチウェッジ(AW)とかピッチングサンド(PS)があるからね。こういうロフトのあるクラブがあればいろんな距離を打ち分けられるし、状況に対応できるでしょ。それがプロの技でもあるんだけど。だからサンドウェッジは必要ないのよ。ものすごく難しいクラブでもあるしね。
――難しい。ものすごく?
陳さん そうよ。ものすごくね。というのはお尻が出っ張っているから。これが邪魔してミスショットになることが多いわけ。
――お尻とはバウンスのことですね。
陳さん そう。サンドウェッジはソールが厚いでしょ。クラブヘッドをボールの下に上手く滑り込ませたとしても、ヘッドを抜くときにお尻が地面に跳ね返されて、そのためボールをしっかりこすってくれないんだね。フェースの上にくっ付いてくれないわけよ。だからスピンがかからないし、ボールが飛びすぎたりショートしたり。だいたいショートすることが多いと思います。
――それは陳さんでも?
陳さん そうなの。だからみなさんがサンドウェッジを使うことに賛成しないんだ。グリーン周りのアプローチでは使っちゃいけない(笑)。
――いま、60度以上もあるウェッジがプロの世界で使われていますが、これは陳さん、どう思います?
陳さん 私ね、打ってみたことあるんですよ。56度、58度、60度のものをね。でもぜんぜん上手く打てなかったの。だから使うのをやめて。もし使うんなら、あげますよ(笑)。でもね、こういうロフトのあるクラブはあなたたちにはとっても難しいはず。プロなら、1年に360日はゴルフをやっている人たちですから打ちこなせると思いますがね、月に1回とか2回しかゴルフに行かない人は打ちこなせませんよ。
――ボールを高く打ちあげて、ピンそばにピタリと止めたい。そういう欲望が私たちにはあるんです。
陳さん プロの試合の見過ぎだよ、それは。ロフトのあるクラブはハンドファーストでボールを打てる人じゃないと使えないんだ。インパクトでヘッドが手より先に行くような打ち方をしているあなたたちには、とてもじゃないけどね。だいたいがダフるか、トップするか。思い出してごらんなさいよ。成功してる? していないはずですよ。
――ん~ん。
陳さん アハハ……、していないんだ。これからは、サンドウェッジはバンカーショットで使うだけにして、グリーン周りからはボールを転がして寄せるとか、ボールを上げて寄せたいときはアプローチウェッジとか、バウンスの小さいクラブを使うようにしたほうがいいです。その場合の注意点は、ダウンブローにしっかりとヘッドを打ち込んでやることね。するとヘッドがボールの下に正確に入るし、スピンもかかるんだ。距離が近いからといって軽く打ちすぎると必ず失敗するよ。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2023年5月号より