【ヘッドデータは嘘つかない】HS40m/sでも高い弾道で飛ばせる! テーラーメイド「ステルスグローレ」ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はテーラーメイドの『ステルスグローレ』ドライバーを取り上げる。
『ステルス』の日本専用モデル
“カーボンフェース”というキャッチーなワードで市場を席巻した『ステルス』の日本専用モデル『ステルスグローレ』。
クラブとヘッドを計測していこう。ロフト角は計測用ヘッドが9.5度、試打・計測用クラブは10.5度、シャフトはメーカー純正の『フジクラ スピーダー NX for TM(フレックスS)』。いつもどおり数値はすべて実測値を表記している。クラブ重量は283.0gと軽いが、クラブの長さが45.5インチとやや長く、スウィングウェイトもD3.9と非常に大きいので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが289万g・㎠とやや大きくなっている。この数値であれば、本来はドライバーのヘッドスピードが44m/sくらいのゴルファーにとってタイミング良く振りやすい設計と言えるだろう。
前モデル『SIMグローレ』の雰囲気を継承したヘッド形状で、時計の文字盤でいう12時方向のトウ先が出ているため、全体としては縦長に見える。『SIMグローレ』はフェースアングルがプラス0.5度のフックフェースだったが、『ステルスグローレ』はマイナス1度のオープンフェースに変更。またヘッドのトウ側が高いので、60.0度という超アップライトなライ角がより強く見えるのが特徴的だ。同時発表された『ステルスグローレプラス』とは違い、ヘッドはカチャカチャがなくシンプルな構造というのも珍しい。
Point1 スウィングウェイトがD3.9と非常に大きい
Point2 クラブ全体慣性モーメントが289万ɡ・㎠とやや大きい
Point3 フェースアングルが1.0度オープン
HS35m/s前後でもキャリーを稼げる
実際に試打したところ、ヘッドの後方が高いハイバック形状で、インパクト付近をレベルにスウィングしやすいイメージが出ている。純正シャフトは『SIMグローレ』よりも少ししっかりした感があるが、トルクも感じられるのでヘッドスピードが40m/sまでのゴルファーに向いている。『SIMグローレ』よりも重心距離が長く(43.3ミリ>>45.1ミリ)、かつ重心深度も深くなっている(39.8ミリ>>41.0ミリ)ので左右方向のヘッド慣性モーメントも大きくなり(4409g・㎠>>4686g・㎠)、弾道の安定を狙っていることがわかる。同時にヘッドのネック軸周りの慣性モーメントも大きくなった(7934g・㎠>>8398g・㎠)ので、基本的にダウンスウィングでのヘッドの返りが緩やかになり、ストレート~フェード系弾道が打ちやすい。低重心率が65.4%と高重心設計なのでややスピンは入りやすいが、ヘッドスピードが35m/s前後のゴルファーでも球がドロップしにくく、キャリーが出るヘッドだ。『ステルス』同様にカーボンフェースのため、インパクト音は低めを好むゴルファーに向いている。キャリー180Y前後のゴルファーが最も効率良く飛距離が出るドライバーと言えるだろう。
【クラブ&ヘッドデータ実測値】
テーラーメイド
ステルスグローレ ドライバー
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2022年10月25日号より