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【ゴルフ初物語】Vol.91 ドライバーにも「ベントネック」が存在した【1992年 プロギア『ベント』発売】

ネックの曲がった「ベントネック」と聞けばパターを思い浮かべるだろうが、なんと「ベントネック」をつけたカーボンドライバーが30年前に発売されていた。

“遠重心”のスッポンと“近重心”のベント

1ヤードでも遠くへ飛ばしたい。ゴルファーなら、いつの時代も飛びへの欲求は尽きない。ヘッドスピードが上がれば飛距離は伸びるが、それをクラブで実現しようとしたのがマルマン「スッポン」。シャフトの延長線上から重心までの距離を表す「重心距離」が長ければヘッドスピードは上がる。だが当時の技術ではヘッドは大きくできない。そこでネックを曲げて重心距離を長くしたのだ。

一方、多くのゴルファーは芯を外していることに着目したのはプロギア。それなのにヘッドスピードを上げようと力んで打つと、さらにミート率が悪くなり飛距離も落ちてしまう。ヘッドスピードを少し落としてでも、芯に当ててミート率を上げ、さらにスライスしなければ飛距離は伸びる。そこで「スッポン」とは逆に重心距離を短くしたカーボンヘッドの「ベント」を92年に発売した。

鋼鉄よりも比強度が大きく、比重は3分の1しかない超々ジュラルミンを使用したネックを湾曲させることで重心距離を短くしたのだ。現代の最新ドライバーでは重心距離40ミリ前後のモデルがほとんどだが、なんと「ベント」は23ミリとほぼ半分。シャフトの延長線がヘッドの中心寄りになり、スイートスポットが近くなって、芯でボールをとらえやすくミート率が上がる。また重心角が大きいためヘッドが返りやすく、アップライトなため球がつかまりスライスしにくい。ヘッドスピードが42m/s以上だとつかまりすぎてしまうが、アイアンに近い感覚で打てると、ヘッドスピードが40m/s以下のゴルファーには好評だった。翌年「ベントメタル」を出したが、ドライバーはメタルからチタンへの過渡期。静かに姿を消した。

ネックが長く“遠重心”のマルマン「スッポン」と、曲がったネックで“近重心”のプロギア「ベント」。設計コンセプトは違うが、どちらもスライスしにくいという点では共通していた

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より