「1Wはいいのにアイアンがダメ」それ、クラブのせいかも…ウッドとアイアン、シャフトの整合性とれてますか?
「アイアンはいいけどドライバーがダメ」あるいは「ドライバーはいいけどアイアンが不調」。よくある話ではあるが、その状態が長く続いているのであれば、スウィングではなくクラブが原因かもしれないと小島慶太プロは言う。ドライバーとアイアンのシャフトの整合性をどのように考えればいいのか。詳しく話を聞いた。
TEXT/Tomohide Yasui PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/ゴルフ5プレステージ日本橋店
解説/小島慶太
トーナメントプロとしてツアーに参戦。トラックマンマスターやTPIレベル3など、日本人初の資格を取得したゴルフデータアナリストの第一人者。千葉を拠点に弾道解析器を使ったコーチングを展開。詳細はhttps://keithgolf.jp/
フィッター/中田慎一郎
日本最大規模の2500本以上の試打クラブを扱うゴルフ5プレステージ日本橋店でフィッターを務める
ウッドとアイアンの調子が揃わない人は要注意
ドライバーの調子がよくてもアイアンの調子が悪かったり、アイアンの調子がよくてもドライバーの調子が悪かったりして、スコアメイクに苦しんでいるアマチュアは多いはず。そのいちばんの原因は、スウィングが安定していないことだが、慢性的な症状になっているのであれば、クラブが合っていない可能性もあると、クラブフィッティングに精通する小島慶太プロは語る。
「アイアンはいいけど、ドライバーが悪いのはなんで、という話になったとき、ゴルファーの技術レベルで変わりますが、ドライバーとアイアンの振り心地が揃っていれば、そういう症状は少なくなるのではないかと思います」
ドライバーとアイアンの振り心地が揃うとは、具体的にどういうことなのだろうか?
「シャフトのしなり方が揃って感じるかどうかです。ドライバーのシャフトはカーボンで、アイアンのシャフトは男性であれば、スチールを使っている方が多いです。ヘッドの大きさも重さも全然違いますから、本来はまったくの別物です。ですが、たとえば米ツアーというハードなセッティングで戦っている選手のなかで、このシャフトとこのシャフトを組み合わせているケースが多いとか、実際のフィッティングの現場でもコレとコレを組み合わせて、合っているプレーヤーが多いという傾向はあります。あくまで傾向ですから、それが正解というわけではありませんが、振り心地が揃って感じる可能性が高いわけです。そうすると安心感が生まれます」
安心感が生まれると、どんなメリットがあるのか?
「安心感があれば、スウィングは安定します。スウィングが安定すれば、スコアアップにもつながる可能性が高いということはいえると思います」
Q. ドライバーとアイアン、どちらを基準にすればいい?
A. アイアンを基準にするのがオススメです
ドライバーよりもアイアンのほうが使用頻度が高く、かつ長く使用するケースが多いので、アイアンのシャフトを基準にウッドのシャフトを見直すのがおすすめ。アイアンとウッドの振り心地が揃えば、すべてのクラブでスウィングが安定する
あなたのアイアンに合うウッドシャフトは?
ここからは、アイアンを基準にしたウッドのシャフト選びについて、ゴルフ5プレステージ日本橋店のフィッター・中田慎一郎さんを交え、詳しく聞いていこう。
GD まずアイアンのシャフトで多く使われている定番モデルはどれですか?
中田 NSプロ「モーダス3ツアー105」が定番といえます。それと「(NSプロ)950GHネオ」「純正カーボン」という3つのシャフトが主流です。あとはアスリートモデルに「DG(ダイナミックゴールドS200)」が入っていたり、飛び系アイアンに「ゼロス7」が入ったりします。
GD では、モーダス105から教えてください。
小島 モーダス105を気に入って使っている人が「ドライバーをフィッティングしたい」となったとき、中田さんが経験している傾向があると思うんですけど、どういう傾向がありますか?
中田 アイアンのシャフト重量の約半分の重さが、ドライバーのシャフト重量というのが第一セオリーにあります。モーダス105だったら、ドライバーは50g台から試していきます。
小島 重量は大事ですよね。
中田 はい。たとえばドライバーが重いのにアイアンが軽かったりすると、ドライバーでナイスショットした後にアイアンが軽く感じるから振りづらくなります。逆にドライバーが軽くてアイアンが重いと、アイアンでダフリが多くなる傾向もあります。ですから重量の流れを合わせてあげると、振りやすくなると思います。
小島 ただ、米ツアーの選手で、ドライバーは50g台で、アイアンは130g台を使う選手もいます。ですから、合いやすい傾向はありますが、プレーヤーに合わせるのが原理原則です。
中田 それを踏まえたうえで、モーダス105が好きな方は、手元が粘るシャフトがけっこう好きなんです。ですから、最初に試してもらうシャフトは、三菱ケミカル「ディアマナ・PD」です。
小島 なるほど。僕は正直、PDのフィッティングをそんなにしていませんが、PDを選ぶ理由はわかります。私のおすすめは三菱ケミカルの「テンセイ・オレンジ」です。
GD モーダス105と同じような動きをするということですか?
小島 同じような動きではなく「プレーヤーの振り心地が合いやすく感じるんじゃないか」ということです。
中田 そもそもスチールとカーボンは素材が違いますし、比重も大きく異なるので、まったく同じになるわけがないんです。
小島 「同じように振ったとき、フィーリングが両方とも気持ちよく感じる」という表現が正しいかもしれない。それは他のシャフト選びにおいても同じです。
振り心地を整える2つの基準
●重量「アイアンの半分が1Wシャフトの重量の目安」(中田さん)
●クラブの動き「同じような動きをしてくれるかが大事」(小島プロ)
「NSプロ モーダス3ツアー105」に合う1Wシャフトは?
【小島’s Choice】
三菱ケミカル「テンセイCKプロ オレンジ」
【中田’s Choice】
三菱ケミカル「ディアマナPD」
「NSプロ950GHネオ」に合う1Wシャフトは?
【小島’ Choice】【中田’s Choice】
グラファイトデザイン「ツアーAD HD」
「ダイナミックゴールド」に合う1Wシャフトは?
【小島’s Choice】
三菱ケミカル「ディアマナDリミテッド」
USTマミヤ「ジ・アッタス」
【中田’s Choice】
三菱ケミカル「ディアマナDF」
超軽量スチール「ゼロス」に合うのは?
【中田’s Choice】
フジクラ「スピーダー エボリューション7」
では、1WとFW&UTは同じシャフトでいいの?
「統計上、同じシャフトでいい人は45%です」
GD アイアンのシャフトにドライバーのシャフトを合わせれば、フェアウェイウッド(FW)とユーティリティ(UT)も自然と決まりますか?
小島 難しいですね。
GD ドライバーとは違う?
小島 自分で統計を取ったんですけど、中田さんの感覚では何%くらい違いますか?
中田 ドライバーとまったく同じになるケースは4割です。
小島 統計では45%でした。
GD そうなるとFWやUTにドライバーのシャフトを合わせるのは正解ではない?
小島 ある意味では正解で、ある意味では不正解です。ヘッド体積460㏄と175㏄が同じかといえば違うし、ティーアップして打つのと地面から打つのも大きな違いですからね。
GD FWやUTにドライバーと同じシャフトを合わせる人は多いですよね?
小島 ただ、同じシリーズのシャフトでも違うスペックになるケースがあります。
中田 チップカット(シャフトの先端をカットすること)も絡んでくるんですよ。作るときにチップカットするメーカーもあれば、ノンカットでくるメーカーもあります。そこを合わせるためにフレックスを上げたり、重量を上げたりすることもあります。
小島 ドライバーが50グラム台だとして(FW)60、(UT)70という組み合わせの人もいるし、(FW)50、(UT)60の人や、(FW)60、(UT)60もいる。さらに同じ種類となると、もっと割合は低くなります。
中田 同じ種類、同じ重量ですと10%あるかないかです。
小島 でも、女性は5割を超えます。同じ種類、同じ重量のシャフトで相性がいいケースが多かったです。それは女子プロも含めて。
GD それを小島プロはどのように分析しているのですか?
小島 力がないことによって同じ動きになるのでしょう。
中田 たぶん、シャフトがそこまで動かないのだと思います。
小島 FWやUTはドライバーほど、選べるシャフトはないですから難しい側面はあります。
中田 最近は専用シャフトも増えているので、選択肢はこれから広がっていくと思います。
シャフトに関するQ&A
Q. アイアンがカーボンの場合は?
A.「同ブランドの純正シャフトは合う場合が多い」
「アイアンとウッドが同じブランドの場合、『このヘッドにこのシャフトの組み合わせが合う人が多い』というのを考えて作っているので純正シャフトなら振り心地も揃いやすいはず」(小島)
Q. 夏用と冬用で替えるべき?
A.「シャフトを替えるよりボールを替えるのがおすすめ」
中田さんによると、冬にボールを打つと硬く感じる人がいるという。そこでシャフトを替える選択肢もあるのかという相談を受けるそうだが、「シャフトを替えるよりも、ボールを軟らかくしたほうがいい」とのこと
Q. スチールとカーボンどっちが硬いの?
A.「カーボンのほうがめちゃめちゃ硬いです」
多くのゴルファーがスチールよりもカーボンのほうが軟らかいと思っているが、これは誤解。「カーボンは軽いシートをたくさん使って重くするので、スチールよりも断然硬いです」(中田)
Q. フィッティングすれば必ず合うの?
A.「プレーヤーの理解度や感性も不可欠です」
「フィッティングすれば合うシャフトが見つかる可能性は高いですが、フィッターに振り心地を伝える言葉、ギアに対する知識も不可欠です。フィッターと一緒に相性を探る意識が大事」(小島)
週刊ゴルフダイジェスト2022年2月22日号より