【ギアラボ】慣性モーメントの怪物、現る。ヤマハ・新「RMX」の“直進性能”が驚異的だった
7代目のヤマハ・新RMXは“尖っている”。ドライバーはなぜかトウ側にスライドウェイトが設置され、VD40というアイアンは、ネックに奇妙な出っ張りがある。これらはスクエアなインパクトを実現し、直進性を極限まで高めるための仕掛けなんだとか。“実戦で本当に役立つ”大慣性モーメントを身につけたという新RMX、その真実の性能を暴いていこう。
PHOTO/Takanori Miki THANKS/クールクラブス
RMX VDドライバー
最大級のMOIが
どのポジションでも変わらない!
ドライバーは2モデルをラインナップ
RMX VD
ドライバー
プロが求める飛距離、安定性、形状を実現。シャープに振れる重心設計に
RMX VD 59
ドライバー
ルール限界のMOIが生む圧倒的な直進安定性を幅広いゴルファーが味わえる
20gもの重いウェイトが“スライドする”こと自体、他のドライバーにはない技術だが、それをややトウ側に置いたことが、今回のドライバーのミソだ。
「VD59」はルール限界のMOI(5900g・㎠)を狙ったモデル。加えてウェイトを動かしてもそのMOIが変わらないことを目指したのだという。一般的にはフェースの真後ろがニュートラルで、そこからトウ、ヒールでつかまりを変えるものが多いが、それだとMOIも変化してしまう。それを解消するために、ヘッド重心の“同心円上”にレールを設置、ギリギリのMOIがどの位置でも維持されるのだ。様々なタイプのゴルファーが、スクエアなインパクトを迎えられ、直進安定性を味わえる可能性が大きく広がった。
「トウ側にウェイトがあると、つかまりの悪いヘッドになるのでは?」という疑問も湧くが、今回でいうノーマルポジションで最適なつかまり(重心アングル)になるよう設計されている。試打した平野さんも「VD59は球がつかまるのでスライサーが安心して使える」と言う。
【Technology 1】
重心位置の同心円上で
20gのウェイトが動く
重心の同心円上にウェイトを置くことで、重心角を調整してもMOIが不変。全ポジションで曲がりにくさを損なわずにスクエアなインパクトを味わえる。「VD」も同じ技術を搭載
「VD」も5003g・㎠と十分なMOIを確保しているが、こちらはいかにプロや上級者が使いやすいかを目指したモデル。
「VD59」も同様だが、VDはクラウン部分の頂点の盛り上がりがより顕著だ。人間は見た目の真ん中で打ちたくなる習性があることをヤマハの“感性”を研究するグループが解明、フェースとクラウンの高さの差を大きくすることで、“飛ぶ打点”であるフェース上めに当たりやすくしたのだ。実際プロで検証したところ、藤田寛之で約1㎝、平均でも5㎜程度上めで構え、ヒットすることが明らかになった。
カーボンクラウンを採用しているが、これはチタンで盛り上がったクラウン形状にすると重心が上がってしまうため、それを抑える意味でも軽いカーボンにする必要があったのだ。
【Technology 2】
クラウンを高くすることで
自然と「飛ぶ位置」に当たる
「RMX VD」はどんなゴルファーにも
即戦力になる可能性が高い
試打・解説●平野義裕
東京の「スイング碑文谷」内「クールクラブス」のカリスマフィッター。数多くのヘッドとシャフトの性能を知り尽くす
【ココがいい 1】
たしかに芯のやや上に当たる
「クラウンは高いんでしょうけど、構えるとまったく気にならないですし、不思議と“いいところ”に当たります。スピンが少なめで強い弾道で飛ばせます」(平野・以下同)
【ココがいい 2】
ウェイト位置の変化が手に取るように感じられる
「個人的には『VD59』はつかまりすぎましたが、フェード位置にしたらいい感じに。20gの重りの変化は、誰でも体感できると思います」(平野)
【ココがいい 3】
「VD59」の弾く打感はいかにも飛ぶ感じ
「『VD59』は打感と打音が弾く感じ、『VD』はピチッと締まった感触で球がフェースに乗るイメージ。『VD』は球の操作もしやすいですね」
【ココがいい 4】
大MOIのおかげで当たり負けが極めて少ない
「『VD59』は特に芯が広くて、センターを外しても打感の変化が少ない。つまり当たり負けが少ないので、平均的に飛距離が伸ばせます」
RMX VD アイアン
直進性をひたすら追求した
破天荒なアイアン
なんとも斬新な形状だが、この「VD40」アイアンは慣性モーメントを上げて直進性を高め、ミスによる飛距離ロスを軽減することを突き詰めたモデルだ。市販のアイアンの多くはMOIが2000g・㎠台、一番大きいものでも3400g・㎠ほどだが、そこを一気に4000g・㎠超えのところまで持ってきた(7番アイアンで4041g・㎠)。そのためには、既成概念のなかでは達成できず、結果として異形になった、ということだ。
しかし、「VD40」は奇をてらったものではなく、あくまで“コースで一番結果が出る”ことを目指したアイアン。前作の「220」アイアンは3000g・㎠弱のMOIだが、打ち比べるとその差は歴然。フェースセンターではほぼ同飛距離だが、芯を外した時には最大で12Y以上の飛距離差が生じた。
「いい意味で“どこに当たっているのかわからない”、それぐらい打感が変わらないし、飛距離や曲がりの差も少ない。実戦的だなと思うのは、7番のロフトが30度と標準的で、スピンもしっかり入って、落下角度も十分なところ。曲がらない、飛距離が落ちにくいだけではなく、止まる球が打てる。スコアになるアイアンだと思います」(平野)
ネックの出っ張りは
重心を下げるための策だった
キャビティがないもの、先が広がったラッパ状のネックなど、おびただしい数の形状出しを行い“使える”4000g・㎠のMOIを達成した
構えるとネックの出っ張りは姿を消す
左右のブレは半分以下の幅に収まった
【ココがいい 1】
フェース面を意識してスウィングできる
「ヘッドが大きいし、持った感じフェースの開閉を使おうと思わないので、打ち方的にも方向性が安定します」
【ココがいい 2】
ヘッドの抜けはソールの削りでカバー
「ヘッドが大きい分、ラフからの抜けは不利な部分があると思いますが、ソールの面取りを大きくしてカバーしています」
【ココがいい 3】
フェースの上下も広く安心感がすごい
「フェースは左右にも上下にも広く、安心感がとても大きい。ボールを“面”でとらえるイメージが強くなります」
RMX VD アイアン
やや小ぶりながら寛容性は非常に高い
反発性に優れた素材を使いながら、やや小ぶり形状で本格派も満足の顔と操作性。ポケットキャビティ構造で、やさしさも感じられる
●素材・製法/クロムモリブデン鋼・一体精密鋳造
●ロフト角/5I: 26度、6I: 29度、7I: 32度、8I: 36度、9I: 40度、PW: 45度(4I: 23度はオプション設定)
RMX VD TOUR MODEL アイアン
軟鉄鍛造ならではの形状と心地よい打感
12%軟らかくなるという独自の“焼きなまし”製法を用いた軟鉄鍛造モデル。プロが求める繊細な操作性、適度な寛容性も備える
●素材・製法/軟鉄(S20C)/鍛造(焼きなまし製法)
●ロフト角/5I: 27度、6I: 30度、7I: 34度、8I: 38度、9I: 42度、PW:46度(4I: 24度はオプション設定)
RMX VD フェアウェイウッド
ぶっ飛びFW戦線に
新RMXが名乗りを上げた!
飛距離の面で契約プロもなかなか使用しなかったというヤマハのFW。そこで“最高の飛距離”を目指して開発されたのが新しい「VD FW」だ。
そのためにコストは度外視、高性能な素材を集約して作り上げたモデルは、プロトタイプの段階でプロから引く手あまた。あまりの評判のよさにそのまま製品化されたほどだ。
有村智恵は、3Wの飛距離が20Y以上アップ、また気に入ったクラブはめったに替えない谷口徹にいたっては、「プロ人生で最高のFW」と言ってはばからない。ぶっ飛びFW戦線に注目の1本が登場した。
「プロ人生で一番いいスプーンです」(谷口徹)
谷口徹は、3Wの条件として“キャリー250Y”を挙げ、かつ球は上がりやすく、コントロール性の高さにもこだわる。それらすべてを網羅しているという
「まさか21Yも伸びるなんて!」(有村智恵)
自身のインスタグラムで3Wのキャリーの飛距離が「195.4Y」から「216.5Y」に伸びたことを発表。トータルでは240Yに迫る勢い
出ました! 250Y弾
「これはドライバー並みに飛ぶ」(平野)
「低重心ヘッドなので、高打ち出し、低スピンの弾道。キャリーがしっかり出るのもいい。ミート率は1.49、飛距離も250Y超とドライバー並みの飛距離データ。しかも1発ではなく、コンスタントに250Y行く感じがします」(平野)
RMX VD FW
“飛び”のための高機能素材を全部載せした。操作性も高く、プロ、上級者も満足できる仕上がりに。3W(15度)、5W(18度)、7W(21度)をラインナップ
月刊ゴルフダイジェスト2021年12月号より