【ヘッドデータは嘘つかない】上級者好みの見た目と寛容性を併せ持ったピン「i59」アイアン
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はピンゴルフの『i59』アイアンを取り上げる。
ブレード形状ながら寛容性も高い
ビクトール・ホブランが欧州男子ツアーで優勝するなど、発売前から話題になっていた『i59アイアン』。コンパクトなブレードアイアンで、7番のロフトは34度と上級者好みの顔つきだが、ボディ、インサート、フェースに異なる素材を採用することで、寛容性を持った仕上がりになっているという。
いつもどおり7番アイアンを計測していく。数値はすべて実測した値になる。クラブ長さが37.125インチとやや長く、クラブ重量は軽量スチール仕様で430.2gとやや重いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体慣性モーメントが273万g・㎠と大きくなり、この数値だとドライバーのヘッドスピードが46㎧~47㎧くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振れる設計になっている。
Point1 クラブ長は37.125インチとやや長い
Point2 クラブ全体慣性モーメントが273万g・㎠と大きい
Point3 クラブ重量が430.2gとやや重い
バウンスが大きめで
ダウンブローのスウィングに合う
それではヘッドを見ていこう。ピンのツアーモデル『iシリーズ』のブレードアイアンらしく、オーソドックスな形状、かつネックはストレートでターゲットに対してスクエアに構えやすくなっている。そして、先代とされる『iブレード』よりもフェース長が少し短く、スコアラインも短いので、アドレスでフェース中央に意識を集中しやすいのが特徴だろう。
実際に試打したところ、フェースのヒール側の高さが高いので、アドレスではヒール側打点に強そうなイメージが出ている。試打クラブのシャフトは『NSプロ モーダス3 ツアー115(S)』だったが、先側のしっかり感で強めのダウンブロースウィングにも堪えてくれた。米国のツアーモデルらしくロフト角34度と、ヘッドスピードの速いゴルファーを対象としたロフトセッティングだ。日本のシニア向けモデルのような25~28度の超ストロングロフトではないため球はもちろん上がりやすい。上級者が好む軟鉄よりも、硬いフェース材(17-4ステンレススチール)なので、打感よりも球の弾き感を意識したモデルだろう。
ヘッドは小ぶりで重心距離も35.4mmとやや短めなので、結果ネック軸周りの慣性モーメントも5257g・㎠とやや小さくなり、ヘッドの操作性が良く、インテンショナルにドローやフェードを打ち分けやすい。また、フェースが短いのでラフからのヘッドの抜けも抜群だ。ソールのバウンス角が10.6度と大きいので、明らかにダウンブロースウィングに適しているが、人工芝練習場ではこのバウンスの大きさによるソールの抜け感は体感できないので、コースで試してほしいところ。そして、ロフト角が34度と大きいので、最近の7番よりもバックスピン量がやや多く、欲しいスピンが入って安定して狙った距離をキャリーさせやすいだろう。
【クラブ&ヘッドデータ実測値】
ピンゴルフ
i59 アイアン
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より