【ヘッドデータは嘘つかない】振り切れて、自然につかまる。コブラ「キング ラッド スピード XD」ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はコブラの『キング ラッド スピード XD』ドライバーを取り上げる。
ヒール寄り重心でヘッドが返りやすい
より速く直進的な弾道とミスヒットに強い、高い安定性を実現した「キング ラッドスピードシリーズ」。低スピンモデルの「ラッドスピード」、低深重心モデルの「ラッドスピード XB」はすでに当連載で紹介済み。3兄弟モデルのトリを飾るのが、この「ラッドスピード XD」だ。
ほかの2機種との違いは、ヒールに配置した10gのウェート。ヒール寄り重心にすることで、ヘッドが返りやすくなっている。スライサーやアベレージゴルファーに向けた1本といっていいだろう。
さて、クラブ計測の結果に移ろう。数値はすべて実測値になる。クラブ長さは45.0インチと標準的で、クラブ重量も300.3gと標準的なので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが288万g・㎠に抑えられ、この数値だとドライバーのヘッドスピードが43㎧くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振れる設計といえる。しかし、試打クラブの純正シャフト「オリジナルスピーダーEVO for ラッドスピード」のSフレックス仕様だと、シャフトが軟らかめの設計なので、これならヘッドスピードが40㎧くらいのゴルファーでも十分扱えそうだ。
Point1 クラブ長さは45.0インチと長すぎない
Point2 クラブ慣性モーメントが288万g・㎠と大きすぎずアベレージゴルファーでも振りやすい
Point3 ヘッド重量は200.4gと重い
アベレージゴルファーでもしっかり振り切れる
では、ヘッドを見ていこう。コブラらしいやや三角形型の輪郭形状で、スタンダードモデルといえる「ラッドスピード」よりもヘッドの横幅が広い。これは「ラッドスピード XB」と同じイメージで、また投影面積も大きくなっている。そして、一般の米国モデル(1.5度オープンがほとんど)とは違い、強いオープンフェースではないので素直に構えやすくなっており、また、フェース面はバルジ(フェースの丸み)が少ない平らなフェースで、球をつかまえるイメージも出ている。
実際に試打してみたが、やはりアドレスでは投影面積が大きいので、いかにも打ちやすそうな感じがして、やさしいイメージがある。また、コブラらしい三角形型のヘッドでシャープに振り抜ける感じがしてスピードを感じられるのもいい。
純正シャフトは45.0インチと長すぎないのが良く、ミート率も高くなり、アベレージゴルファーでもしっかり振り切ることが可能だ。
他メーカー同様、基本的には大きなヘッド慣性モーメントを狙ったヘッドで、ネック軸周りの慣性モーメントも非常に大きく、ダウンスウィングでのヘッドの返りは緩やかだ。ただし、「XB」に比べ、ヒール寄りにウェートがあるぶん、「XB」よりも重心距離が短めなので、球をつかまえやすく、よりストレート系の中弾道を打ちやすくなっている。
コブラ
キング ラッド スピード XD
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/811チタン鋳造+カーボンファイバーラッピング(ボディ)、611チタン鍛造CNCミルドインフィニティフェース
●ロフト角/10.5度
●ライ角/58.5度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/オリジナルスピーダーEVO for RADSPEED(S)
●総重量/約303g(S)
●価格/7万1500円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.0インチ |
クラブ重量 | 300.3g |
スウィングウェート | D1.5 |
クラブ慣性モーメント | 288万g・㎠ |
ヘッド重量 | 200.4g |
ヘッド体積 | 457㏄ |
リアルロフト角 | 9.8度 |
ライ角 | 58.5度 |
フェース角 | オープン1.0度 |
重心距離 | 39.4㎜ |
重心深度 | 42.3㎜ |
フェース高さ | 55.7㎜ |
スイートスポット高さ | 35.1㎜ |
低重心率 | 63.0% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 5012g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 8061g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年月日号より