バンカーが出ない原因はバウンス角が大きいから? 日本の砂にはローバウンスが実は合う
PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/大宮GC
ウェッジのバウンス効果を勘違いしているアマチュアが多い、とギアに詳しい堀越良和プロは語る。人によってバウンスが大きいモデルはかえって難しくなる、とも。その真意とは?
解説/堀越良和プロ
小誌試打企画でお馴染み、キング・オブ・試打。ドライバーからパターまで、あらゆるクラブを試打するスペシャリスト。小誌で『ギア選びのウソホント』を連載中
バンカーが出ない原因は
ハイバウンスかもしれない
小誌で数々の試打企画を担当してきた「キング・オブ・試打」こと堀越良和プロはこう語る。
「ウェッジのバウンス角は、大きく3つに分類できます。8度前後の標準的なミッドバウンス、9度以上のハイバウンス、そして7度以下のローバウンスです。バウンスはソールの出っ張り具合を示すものですが、その効果を勘違いしているアマチュアが多いんです」
バウンス角が大きいほど、ミスを軽減してくれる、ソールが滑ってくれる、そう思っているゴルファーも多いが
「実はハイバウンスほど、ソールの滑る距離は短くなります。逆にバウンスが小さいほど滑る距離は長くなります。上級者がローバウンスを使うのは、ソールを滑らせることでインパクトを長くし、スピン量やコントロール性を高めたいからなんです」
アマチュアが勘違いしている、バウンスの本来の機能とは、どういうものなのか?
「バウンスの効果は2つあります。ひとつはリーディングエッジを刺さりづらくすること。バンカーであれば、砂に潜りづらくなる効果もあります。たとえば、バウンス角12度と6度では、ザックリのミスに対する許容範囲が倍異なります。ハイバウンスほど、ヘッドが鋭角に入っても刺さらずに助けてくれるわけです。これを理解しているゴルファーは多いのですが、もうひとつが重要です。それがインパクト後のヘッドの抜け方への影響です。ハイバウンスになるとヘッドが上に抜けやすくなる。跳ねるようなイメージに近いです。ローバウンスは逆に前に抜けていきます。つまり滑る感じに近いんです」
ソールが跳ねると、どんなデメリットが生まれるのか?
「そもそもウェッジを使うショット、たとえばアプローチやバンカーなどは、コントロールショットになります。フルショットではないため、クラブが生み出すエネルギーが小さいわけです。すると、とくに力がない人やヘッドスピードが遅い人は、ソールが跳ねてしまい、ミスしやすくなるんです。ちなみに力が強い人ならバウンスを無視して振り抜けるので、さほど問題にはなりません」
非力な人ほどハイバウンスは扱いづらくなるということだが、この現象がバンカーで出ない原因にもなると堀越プロは警告する。
ハイバウンスほど実はヘッドは滑らない
ハイバウンスのほうがソールが滑りやすそうなイメージがあるが、「木の板の上で打つと、ローバウンスのほうがソールが長く滑るのが分かるはず。この勘違いがグリーン周りのアプローチやバンカーにも大きく影響してくるのです」(堀越)
硬いバンカーでは、非力な人ほど
ローバウンスがおすすめ
リーディングエッジの刺さりにくさとソールの抜けやすさ。この2つがバウンスの効果というのはわかったが、バンカーが脱出できない原因もハイバウンスにあると堀越プロは語る。
「そもそも日本のバンカーは、表面に薄く砂があるだけで、下の地面は硬いことが多いんです。プロのトーナメントを見るとフワフワの軟らかい砂なので、多くのゴルファーが『バンカー=軟らかい』と思いがちですが、日本のゴルフ場でいえば、硬いバンカーのほうが多いといえるでしょう。この硬いバンカーは、エクスプロージョンしにくいわけです。パワーがある人なら砂ごと打ち抜くことができますが、非力な人・ヘッドスピードが遅い人は、砂に潜る前にソールが跳ねてしまい、トップしてしまう可能性が高いです。その結果、ボールは上がらず、アゴに当たったり、あるいはホームランになるなどのミスにつながります。バンカーはハイバウンスがいい、という定説も大きく影響していますが、硬いバンカーの場合、必ずしもハイバウンスがいいわけではないのです」
一方、砂の軟らかいバンカーの場合は「力のあるなしに関わらず、ハイバウンスが有効です。さきほども言ったとおり、バウンスはソールの抜けにも影響しています。下降していくヘッドを上昇させてくれる(上に抜ける)効果がありますから、ハイバウンスほど、砂に潜っても素早くヘッドが抜けてくれます」
では硬いバンカーの場合は逆にローバウンスがいい?
「ソールが跳ねてしまうわけですから、とくに非力な人はローバウンスが有効。そしてバンカーの表面を薄く削るようなイメージで打てば、簡単に脱出できるはずです。グリーンまで距離があるバンカーでもしっかり距離を出せるようになります。小さめのバウンス角を基準にして、そのなかでスムーズに抜けていくタイプを選ぶのがいいでしょう。ローバウンスは、春先の薄芝や花道などでも効果を発揮してくれるので、持っていて損はないと思います」
また雨で硬く締まったバンカーにも、ローバウンスがおすすめだという。
「水分を含むとバンカーはより硬くなります。梅雨時期こそ、ローバウンスがハマるかもしれませんね」
バンカーが出ない。そんなゴルファーはまず自分のウェッジのバウンスをチェック。バウンスが大きい場合は、一度ローバウンスタイプを試してみよう。
ローバウンス(6度)
硬いバンカーでは、非力な人ほどローバウンスがおすすめ。ローバウンスは前に滑ってくれるため、砂を前に押し出してくれる。結果ボールが上がりやすく、簡単に脱出できるのだ。「硬く締まった砂は、表面を薄く削るように打つと上手くいきます。その意味でもローバウンスのほうが打ちやすく、非力な人ほど効果も高いです」
ハイバウンス(12度)
硬いバンカーでは、9度以上のハイバウンスになるとソールが跳ねてしまいうやすい。アゴに当たる、ホームランが出るなどの人は、ハイバウンスが原因の可能性も。「砂は本来軟らかいものですが、多湿の日本では硬く締まったバンカーが多く、バウンス効果が出すぎてしまうことも多い。そんな人はバウンス角を見直すべきでしょう」(堀越)
バウンスの効果はソール幅とも関係する
ソール幅が広く平らな場合はハイバウンスと同じ効果が生まれ、ソール幅が狭く丸みを帯びているとローバウンスに近い効果となる。「ウェッジは打つと違いがよくわかります。試打する機会があれば、いろいろなバウンスを打ち比べてほしい。自分に合うモデルがすぐ分かりますから」(堀越)
ダフる人はハイバウンス
トップする人はローバウンス
ウェッジはバンカーだけではなく、アプローチでも使われるクラブ。では、バウンスはどう選べばいいのだろう?
「まずはミスの傾向から考えるのがいいです。ダフリが多いのか? トップが多いのか? これはヘッドの入射角とも関係します。ヘッドが上から入る(鋭角)タイプはダフりやすい傾向ですし、ヘッドが緩やかに入る(鈍角)タイプはトップしやすい傾向になります。そのうえで自分のパワーがどのくらいかで考えます。力があるかないかでバウンスの生き方が変わるからです。基本的にパワーがある人はバウンスに関係なく打ち抜けるので、ミッド~ハイバウンスが適しています。一方、非力な人は、あまりハイバウンスにするとソールが跳ねますからミッド~ローバウンスで考えるのがいいでしょう」
また「硬いバンカーと花道は状況的に似ています。ヘッドの入る隙間が狭いからですが、バウンスが跳ねると大きなミスの原因に。であれば、ソールが滑ってくれて抜けやすいローバウンスのほうがミスを減らせるはずです」
ミスの傾向や力の大小によって最適なバウンスは変わるということだ。
あなたの最適なバウンスは?
ダフリのミスが多い | トップのミスが多い | |
パワーがある | ハイバウンス(9度以上) | ミッドバウンス(8度前後) |
パワーがない | ミッドバウンス(8度前後) | ローバウンス(7度以下) |
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月1日号より