つかまる! 上がる! 振り切れる! タイトリスト『TSi1』ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はタイトリストの『TSi1』ドライバーを取り上げる。
ツアーモデルながら超軽量で振り切れる
タイトリスト『TSi1』は、“ウルトラ ライトウェイト設計”の軽量クラブとして発売された。ほかの『TSi』シリーズ同様に、“ATI425チタン”をフェース面に採用することで、ツアーモデルである『TSi』の飛びをヘッドスピードに関係なく享受することができるようになった。ちなみに、米LPGA「ゲインブリッジLPGA」ではネリー・コルダがこの『TSi1』を使用して勝利している。
さて、クラブを計測していこう。数値はすべて実測値になる。クラブ長さが45.5インチとやや長いが、クラブ重量が270.3gと非常に軽いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが282万g・㎠と小さく抑えられている。この数値だと、ドライバーのヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーがタイミングよく振れる設計といえる。また、標準シャフトである「TSP013-45」のSシャフトはタイトリストにしてはかなり軟らかめで、ヘッドスピードが37~38m/sくらいのゴルファーでも十分に扱えそうだ。
Point.1 クラブ重量が270.3gと非常に軽い
Point.2 クラブ慣性モーメントが282万g・㎠とやや小さくHS40m/sくらいが振りやすい
Point.3 リアルロフト角が11.2度とTSiシリーズではいちばん大きい
球をつかまえやすく、上げやすい
次にヘッドを見ていこう。全体にオーソドックスな形状ではあるが、横幅がやや広い。これは横幅が非常に広い「TSi2」と比較的オーソドックスな「TSi3」の中間的なイメージといえる。そして、「TSi2」「TSi3」「TSi4」は強いオープンフェースの設計だが、この「TSi1」は唯一フックフェースとなっているのが大きな特徴だろう。
実際に試打した印象だが、まずアドレスでは前述のとおり、他の「TSi」系ヘッドとは違い、フックフェースということと、フェースプログレッションが小さいので球をつかまえるイメージが出ている。
そして、重心距離が37.3mmと「TSi2」(39.8mm)や「TSi3」(41.0mm)よりもややヒール寄り重心になっているので、結果、ネック軸周り慣性モーメントも7774g・㎠と、「TSi2」(8734g・㎠)や「TSi3」(7872g・㎠)よりやや小さくなり、ヘッドの操作性は良くなっている。また、他の「TSi」系ヘッドよりも高重心設計で、リアルロフト角も11.2度と「TSi2」(9.4度)や「TSi3」(8.2度)より多め。ヘッドスピードがそれほど速くないゴルファーでも適度なスピンが入り、球が上がりやすく、弾道も安定しやすいはずだ。
「これぞタイトリスト」というツアーモデルのイメージではないが、クラブ重量が軽いのでアベレージやシニアゴルファーが振りやすいモデル。フックフェースと小さなフェースプログレッションにより、「TSi」系ドライバーの中ではもっとも球をつかまえられそうだ。
タイトリスト
TSi1
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/チタン(ボディ)、ATI 425チタン(フェース)
●ロフト角/10度
●ライ角/59度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/TSP01345(S)
●総重量/約273g(S)
●価格/8万2500円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.5インチ |
クラブ重量 | 270.3g |
スウィングウェート | D1.8 |
クラブ慣性モーメント | 282万g・㎠ |
ヘッド重量 | 193.0g |
ヘッド体積 | 455㏄ |
リアルロフト角 | 11.2度 |
ライ角 | 58.5度 |
フェース角 | フック1.0度 |
重心距離 | 37.3㎜ |
重心深度 | 43.6㎜ |
フェース高さ | 52.9㎜ |
スイートスポット高さ | 35.1㎜ |
低重心率 | 66.4% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 4889g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 7774g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年5月25日号より