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「L字パターの出番は一旦終了」石川遼が“センターシャフトのマレット”を手にした理由とは?

昨年、ツアー通算20勝を達成した石川遼。その中には記憶に残るパッティングも数多いが、スコアメイクの要であるパターに何を求めているのか。これまでのパター変遷を振り返りながら、こだわりを語ってもらった。

TEXT/Masaaki Furuya PHOTO/Hiroaki Arihara、Getty Images THANKS/パレスホテル東京

石川遼 1991年9月17日生まれ。昨年6月「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP」で19勝目。11月「三井住友VISA太平洋マスターズ」で節目となる20勝目を大会最多4勝目で飾った

フェース面が全て見える
ことがパターの条件

――デビュー以来、2010年までは『オデッセイ ブラックシリーズ iX #9 プロト』で優勝が続きましたが、12年以降は16~19年のPT-09 iX プロトを除くと、毎回違うパターでの優勝です。使用パターを決める基準みたいなものはあるのでしょうか。

石川 ジュニアの頃は性能面の知識もなかったので、クラシックでカッコ良いパターが好きで使っていただけでしたね。その後プロになって、パッティングのデータ(スタッツ)だったり成績も伸ばしていかなければという意識のなかで、僕はピンタイプというよりは、L字かセンターシャフトのマレットがイメージを出しやすかったんです。

ツアー20勝を支えたパターはアマチュア時代を含めると9本。その20勝のうち、9勝は「オデッセイ ブラックシリーズ iX #9 プロト」が貢献した

――トウバランスのL字とフェースバランスのマレットでは、タイプ的にかなり違うのでは?

石川 そう感じる人も多いと思うんですけど、僕の中で共通していることがあって、フェース面に対してネックやシャフトがあまり干渉してこないという点なんです。L字はネックにシャフトが挿さっているので、フェース面が全部見えるし、センターシャフトの場合も昨年に使用した#7(ホワイト・ホットXG #7)は、フェースのトップブレードの後ろ側にシャフトが挿さっているので、フェース面は構えた時に全部見えます。ピンタイプはクランクネックでシャフトが内側に入るので、構えた時にフェース面が自分からだと6割くらいしか見えないので、ピンタイプを選ぶ場合は、トライ・ホット(オデッセイTRI-HOT 5K THREE)みたいに、ショートスラントでL字っぽいネックのものを使ったりすることが多かったですね。アドレスした時にフェース全体がクッキリと見えると、打ちたいラインに対してスクエアに構えやすく打ち出しやすいので、そういったパター選びの条件が自分の中に知らない間にできていたんです。

オデッセイ
「ブラックシリーズ iX #9 プロト」

1ミリのフェース面の向きを察知する感性を磨いてくれたのがこのL字。だが「毎試合グリーンの速さと芝質によって感性をパターにマッチングさせる必要がある」

オデッセイ
「ホワイト・ホット XG #7 センターシャフト」

打ちたいラインに対してスクエアにフェースを向け、平行に動かす。「このシンプルなイメージに合致するのがセンターマレット。今年は出番が多くなりそう」


L字に比べオールマイティなのが
センターマレット

――クランクネックだとインパクトが微妙に遅れるといったことはありますか?

石川 確かにクランクネックはアイアンのグースネックと一緒で、フェースが遅れてくるので、シャフトでインパクトを合わせようとした時にフェースはまだ当たっていない。そうするとフェースが返り始めている時にボールをとらえられるのでつかまりは良くなります。このタイミングのズレが好きな人もいますけど、自分の場合はアドレスとインパクトのフェース面の向きに最も集中していて、そこのタイミングがズレるのは嫌なので。

――センターマレットだと、見た目とインパクトのタイミングが一致するわけですね。

石川 そうなんです。今は、僕の中ではこのセンターシャフトのタイミングで引っかけるとか押し出すということがないように自分のタイミングを鍛えて、『絶対に自分は真っすぐに打ち出せる』と確信が得られた状態にして試合に臨むというところに練習の目的を置いています。

石川遼20勝を支えた“相棒”遍歴

――ストローク中に意識していることはありますか?

石川 構えた時のライ角を崩さずに平行にストロークをすることくらいですね。L字のパターでも、自分の感覚がすごく良い時は、フェースの開閉をあまりしないで、そういったフェースコントロールができるんですよ。昨年のZOZOチャンピオンシップや三井住友VISA太平洋マスターズとか、とんでもない高速グリーンで、自分の感性と激ハマリするのがこのL字パターです。鋭く感性を研ぎ澄まされるというか。ただ、それって難しいパターをすごくコントロールしながら打っていくところにロマンはあるけれど、それにとてつもない集中力を注いでいくのはいいことなのかということなんです。

――なるほど。

石川 パットって打ち方は重要度の優先順位では低いほうなんですね。極論、結果的に入ればどんな打ち方でもいいし、完璧なストロークをしても最後にフェース面が1度左を向いていれば、打球は1度左に飛び出るわけで、つまり最後はフェース面の管理が優先順位では上回ってくる。この最後の1ミリ、2ミリをコントロールする能力は、自分はこのL字パターで鍛えられたというか、今までの僕のパッティングを作ってくれたパターだと思っています。ただ、自分がこれからどこを目指していくのかを考えた時に、ロマンのあるパターを使うことで満足するのか、それとも、自分の目標に対して最善のものを選ぶのかという2択で昨年はけっこう悩みましたね。

「フェースを1ミリ単位でコントロールしたい」

――結論は?

石川 オールマイティにいろんなグリーンに対応できたのがセンターマレットの#7でした。芝質だったりグリーンスピードに合わせていく時に、パターの感覚を研ぎ澄ますための練習に時間を費やすより、自分のルーティンを信じて練習で良い状態にして試合に臨むほうがシンプルですよね。

――今年は#7を使うことが多くなりますか?

石川 他のパターも試しているので、何とも言えない状況ですが、L字の出番は一旦終了ですね。

今季初戦となった「ニュージーランドオープン by Sky Sport」では、オデッセイ Ai-ONE Square 2 Square #7プロトを使用。使い続けるかは未定だ

月刊ゴルフダイジェスト2025年5月号より