【新春ワイド特集2025】米女子ツアー、ジェンダーポリシー“再変更”に至った経緯とは
ここ最近の国内外のゴルフ界には新しい流れが確実に起きているようだ。そしてその流れは、一時的なものではなく男子、女子にかかわらず、しっかりと根付いている。そんなゴルフ界の“ニューウェーブ”というテーマで国内・海外のツアーからゴア、ゴルフコースまで気になる話題をまとめてお届けする。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa、Takanori Miki、Yasuhiro JJ Tanabe、Blue Sky Photos、Getty Images
●CONTENTS●
1. 米女子ツアー、ジェンダーポリシー再変更
2. 米女子ツアー最終予選に過去最多5人合格
3. 2025年PGAツアーに5人の日本人が参戦
4. PGAとLIVの統合はどうなった?
5. ミニドラブームと軟鉄鍛造アイアン回帰
トランスジェンダーの規定の再変更を
米女子ツアーが発表!
2024年12月4日、米国のLPGAは競技参加資格に関するジェンダーポリシーの“アップデート”を発表したのだが、この発表に至るまでの経緯から説明しよう。
そもそもLPGAでは競技の参加資格として「出生時に女性であること」という条件があったが、2010年に一度はこれを撤廃し、性別適合手術を受けホルモン療法の要件を満たすことで、トランスジェンダー選手にもLPGAの競技への参加が認められていた。
実際、ヘイリー・デビッドソンはトランスジェンダー選手として、24年の全米女子オープンの予選会に出場し1打差で出場権を逃したが、来季のLPGAツアーの出場権をかけたQシリーズにも参戦。ファイナルには進めなかったものの、下部のエプソンツアーの限定的な出場権を獲得していた。
しかし、デビッドソンがLPGAのQシリーズ2次予選会に出場している最中に、トランスジェンダー選手の競技参加を認める方針の撤回を求めた書簡に275人の女子選手が署名し、LPGA、USGA(全米ゴルフ協会)、IGF(国際ゴルフ連盟)に提出した。
こうした経緯があったなかで、LPGAはジェンダーポリシーの“再変更”を発表したのだが、その中身は「思春期を男性として過ごした選手は女子主要ツアーに出場できない」というものだ。つまり、出生時の性別が男性である選手が出場するには思春期を迎える前に性別適合治療を受けたうえで、血清中のテストステロン濃度を一定以下に保つ必要があるのだ。
ではここでいう「思春期」とはどういった基準で決められるのだろうか。LPGAのジェンダーポリシーには「タナー段階ステージ2以降または12歳以降(いずれか早いほう)」という記述がある。タナー段階とは性的発育を医学的に判断する基準だが、ステージ2の平均は9.74±1.09歳とされている。つまり8歳から12歳になる前までに性別適合治療が必要になるということだ。しかし、米国では、そもそも未成年者の性別適合治療を認めていない州も多いので、トランスジェンダー選手の競技参加は、現実的にはかなり難しいと言わざるを得ない。
デビッドソン選手が性別適合手術を受けたのは2021年の31歳のときなので、LPGAが25年1月1日から適用を開始するという新たなジェンダーポリシーによれば、競技参加は不可能となるのだ。
LPGAでは今回の規定について、「医学、科学、スポーツ生理学、ゴルフパフォーマンス、性別ポリシー法の専門家のワーキンググループによって情報提供され、幅広い関係者からの意見を参考にして策定」としており、USGAでも同日に同様の内容を発表している。さらに12 月12日にはR&Aも追随し、LPGA、USGAと同様の新規定を25年から適用することを発表した。
トランスジェンダーの競技参加は多くのスポーツで課題となっているが、ゴルフでは25年から“統一ポリシー”がスタートする。
今回の決定でH・デービッドソンはエプソンツアーの出場権を失った
週刊ゴルフダイジェスト2025年1月7・14日合併号より