【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.838「スウィングイメージとヘッドの顔の好みはリンクしていますよね」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
ゴルフクラブを語るとき、上級者の方が「いい顔をしてる」と言っているのを耳にしますがヘッドのどの部分を指してどういいと言っているのかわかりません。岡本さんの好きな顔はどのような形なのでしょうか(匿名希望・45歳・HC18)
最近は耳にしなくなりましたが、スッとした男子の顔を「醤油顔」、濃いめの顔を「ソース顔」と言っていた時代がありましたね。
食べ物に好みがあるように、好き嫌いは分かれたとしても、良い悪いではありません。
クラブヘッドの形状に関しても同じことは言えそうです。
好みに優劣はつきませんし、どっちが正しいかもありません。
自分が信頼できる14本のクラブをかけがえのない相棒や仲間と表現する人もいますが、それにふさわしい“顔”があることはおかしいことではありません。
ここで顔と呼んでいるのは、フェースだけを指しているわけではありません。
ヘッド全体はもちろん、シャフトとつながっているネック部分まで、構えた時に見えるそれらすべてのことだと考えてください。
わたしが昔から好きな顔は、ドライバーはずんぐりな丸顔ではなく、どちらかというとシャープな感じでしたね。
アイアンはマッスルバックで、トップエッジが薄くキリッとしたシェイプの小顔系が好みで、手に取って試してみたくなるのは、そういうシャープでキレを感じさせる形状になりますね。
本当は細かいところまでいえば、ココだけではお伝えできないほどたくさんありますが、大まかにいえばこのような、いわゆるトラディショナルな顔が好みですね。
あと、キレよくシャープに振りたい自分のスウィングイメージと求めるヘッドの顔はつながっていると思います。
ただ、クラブヘッドの顔も時代とともに大きく変化してきました。
ドライバーにチタン素材が導入され、アイアンもキャビティアイアンが登場して以降、ヘッドの大型化が進み、それまでのヘッドとは見違えるほどバラエティ豊かになりました。
その影響か最近のクラブ談義では良い顔かどうかよりも、性能面の話題が中心になってきたような気もします。
クラブ開発は日進月歩。
メーカーの開発技術者は科学的なデータをもとに、より遠くへより正確にボールを飛ばすために効率的な形と構造のクラブを設計して製品化します。
ところが、ゴルファーには形に対する感覚的な好みがあります。
打感も球筋も安定しているのに、ヘッドの形状には拭い切れないほど大きな違和感がある。
自分としてはもっとシャープなヘッドのクラブで気持ちよく振りたいけど、確実な球筋を確保するためには、自分好みではないクラブを選ぶしかないのか……。
プロゴルファーは好みや趣味を最優先するわけにいきません。
いろいろな思いはあるとしても、自分のゴルフを最良の状態で引き出し実現するために、もっとも効率のいいクラブを使用するべきなのであって形状は後の話になります。
見た目は好みでいいのに機能がちょっと、というクラブは存在します。
何年も前のことですが、ある有名な車のデザイナーがドライバーを設計し、お気に入りの顔で大事なパートナーだったエースドライバーには深い愛着があるので、使えなくなっても大事にしまっておく――わたしにもそんな宝物はあります。
かと思うと、それほど気に入っているわけでもないのに、どういうわけか長いことバッグに収まっている腐れ縁のクラブなんかもあったりして。
クラブって人間みたいに複雑な存在なのかもしれませんね!?
「ヘッドの顔も人によって好みが分かれるのって面白いですよね!」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2024年11月19日号より