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【クラブ駆け込み寺】Vol.11「アイアンを今より20gも軽いカーボンシャフトに替えていいのか不安です」

“頑固オヤジ”が勇退し、あとを継いだのが練習場で小さな工房を営む通称“アニキ”。今回は「シャフトをスチールからカーボンに替えていいか分からない」という相談が寄せられた。

ILLUST/Kochi Hajime

前回のお話はこちら

Q. 軽量スチールからカーボンに替えるのが不安


練習場の試打会で、普段使っている軽量スチールのアイアンと、カーボンのものを打ち比べたら、カーボンのほうがすごく打ちやすかったんですが、替えるべきでしょうか?


シャフト選びはヘッドが基準

景気が回復してきている実感はあまりありませんが、夏のボーナスでアイアンを買い替えようとする相談が、ここ数年に比べて増えたような気がします。藤田寛之プロの全米シニアオープンでの優勝争いを見て、飛び系アイアンに替えたくなった、という常連のシニアさんは、シャフト選びで悩んでいました。

「この間、家の近くの練習場で新しいクラブの試打会があってさ。最近、飛び系アイアンに替えようかな、と思っていて試打したんだけど、メーカーの人が薦めてきたカーボンシャフトを打ってみたら、すごく良くて。同じモデルで、いつも使っている軽量スチールのも試したんだけど、全然違うんだよ」

この常連さん、メーカーの人に頼み込んで試打クラブを借り、ホームコースでも試打したそう。

「とにかく暑くて、フラフラだったんだけど、カーボンのほうはグリーンに乗ってくれて。曲がらないし、高さも出るんだよ」

「それなら、そのカーボンでいいじゃないですか」

「でも、今までより20g以上も軽いカーボンだと、スウィングが小さくなったり、調子が狂ったりしないかな。いいのは最初だけ、みたいな」

私の所に来る相談者にありがちな矛盾ですが、現状を変えたくてクラブを替えるのに、シャフトスペックだけそのままにしたい人が多くいます。クラブのパフォーマンスはほとんどヘッドが変えますが、シャフトはそのヘッドに応じて変更すべきものです。

「UTを選ぶときに、アイアンと同じ軽量スチールを選びませんよね。それはUTとアイアンに求めているものが違うから。同様に、買い替えるアイアンに求めているものが使用中のものと異なるのであれば、シャフトも替えるべきだと思います」


シャフトで寛容性も上がる

「ウーン……。試打したのは藤田寛之のヤマハのモデルなんだけどね、顔がプロモデルだから、シャフトもスチールが合いそうな気がしたんだけど。打ってみると、カーボンのほうがラクに上がるし、方向もブレないんだよ。どこに当たっても大きなミスにならない感じで。シャフトでこんなに違うのか、って驚いたんだけどね」

「シャフトの挙動で寛容性が上がる、ということもあるんです。たとえば、トルクやキックポイントでしなり戻りによるヘッドの入射角を緩やかにできたりします」

飛び系アイアンは、ストロングロフトながら低・深重心設計で弾道高さを意図しますが、鋭角な打ち込み軌道ではインパクトロフトが立ちすぎたり、重心位置より打点が上にズレてミスを誘発することもあります。だから、ダウンブローに打てる上級者とは相性が悪いケースもあります。

設計自由度が高いカーボンなら、入射角を緩やかにし、インパクトロフトや打点を適正にする挙動を作り出すことができます。飛び系アイアンの実績が豊富なメーカーなら、開発したヘッドに応じた挙動のシャフトを組み合わせてくるはずです。

「専用仕様のオリジナルカーボンシャフトは、どのメーカーも非常によくできています。重量やフレックスは数値で考えるのではなく、実際に振った時の“つかまり具合”だけを判断基準にするのが正解です。シャフトが軽すぎてフックする、ということはありませんから」

メーカー純正のオリジナルシャフトは大抵フレックスで分かれていますが、それもヘッドスピードとかではなく“つかまり具合”だけで判断。左右にブレず、高さが出るものを選べばОKです。シャフトが軽くなると、スウィングや調子が狂う、というのはナンセンスです。それならシニアプロは、今でも重量級シャフトのドライバーを振っているはずです(笑)。

月刊ゴルフダイジェスト2024年10月号より