大型ヘッドが苦手なゴルファーでもこれならつかまる! ミズノ『ST-X』ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はミズノの「ST-X」を取り上げる。
ドローが出やすい設計
欧米モデルとして発売してきた『STシリーズ』は20年3月に世界戦略モデルとして日本に逆輸入された。フェース素材に“フォージドβチタン合金”を採用することで、高い反発性能を発揮。また、クラウンに軽量素材のカーボン採用で低重心化を実現した。その最新版が今回紹介する『ST-X ドライバー』だ。
『STーX』はソールのトウ側に軽量カーボンパーツ、ヒール側にウェートビスを配置することで、重心距離を短くし、インパクト時にヘッドが返しやすくなり、ドローボールを打ちやすい設計を採用。ボールのつかまりやすさを追求したモデルとうたっている。
さて、クラブ計測をしていこう。数値はすべて実測値となっている。クラブ重量が290.7gと軽いが、クラブ長さが45.5インチとやや長く、スウィングウェートもD4.0と大きいので、クラブ慣性モーメントが290万g・㎠とやや大きくなり、ヘッドスピード44~45m/sくらいのゴルファーがタイミング良く振れる設計になっている。しかし、試打クラブに挿してある純正の20 MFUSION D カーボンシャフトはSフレックスでも、クラブを手にしただけでたわむくらい軟らかく、かつ素直なしなり方なので、ヘッドスピード35~38m/sくらいのシニアゴルファーでも十分扱える。
Point1.リアルロフト角が10.5度と前作よりロフトが小さい
Point2.スウィングウェートがD4.0と大きい
Point3.左右ヘッド慣性モーメントが4474g・㎠と前作より小さい
慣性モーメントが大きすぎず
操作性が高い
さて、細部を見ていこう。ヘッドは横幅が広い形状で、前作『ST 200X』よりもオープンフェース設定なので、よりスクエア感が出ている。そして、リアルロフト設定は10.5度と厳しめだが、前作よりもディープフェースなのでフェース面がよく見え、難しすぎる印象はない。
試打したところ、前述のとおり、ややオープンフェース設計のためアドレスでフェースがかぶらないスクエア感があり、ターゲットへの構えやすさを重視していることがわかる。ヘッドの横幅が広い形状だが、フェースプログレッションが大きく、出っ歯になっている分、その横幅の広さを感じにくくなっている。
最近のドライバーと比べ、スウィングウェートが大きいので、ヘッドの重みを感じながらスウィングしたいゴルファーに向いている。36mmと浅い重心深度によりネック軸周りの慣性モーメントが6639g・㎠と小さめに抑えられ、結果ヘッドの操作性が良く、球をつかまえやすくなっている。普段の飛距離が180Yくらいのシニアゴルファーにも打ってもらったが、総じて球がつかまり、ストレート系のきれいな弾道が出て、満足のいく結果が出ていた。
<試打クラブスペック>
●ロフト/10.5度 ●シャフト/20 MFUSION D カーボンシャフト(S)
ミズノ
ST-X
●ヘッド素材/Ti811精密鋳造(ボディ)、2041Ti鍛造(フェース)、AL6061(ウェート)、カーボン(クラウン&ソール)
●ロフト角/10.5度
●ライ角/59度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/20 MFUSION D カーボンシャフト(S)
●総重量/約291g(S)
●価格(税別)/6万5000円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.5インチ |
クラブ重量 | 290.7g |
スウィングウェート | D4.0 |
クラブ慣性モーメント | 290万g・㎠ |
ヘッド重量 | 198.2g |
ヘッド体積 | 458ml |
リアルロフト角 | 10.5度 |
ライ角 | 59.0度 |
フェース角 | オープン0.5度 |
重心距離 | 38.1mm |
重心深度 | 36.0mm |
フェース高さ | 58.0mm |
スイートスポット高さ | 35.0mm |
低重心率 | 60.3% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 4474g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 6639g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年3月2日号より